第2話 告白される妄想しました。
食事を終えて、食器などを城のメイドさんが片づけてくれた。
今までならば、下らない話を少しして部屋に戻るところだが、今回は違った。
「霧島様、霧島壮介様。お話が……」
リーダーである彼が、王女の執事に呼ばれたのだ。きっと、王女様から何か話があるのだろう。
「壮さん、何の話かな」
「王女様から告白とか!!」
「いやいやいやいや、壮さんより絶対涼介だろ……」
「俺も涼さんだと思います、絶対。ね、涼さん」
そう言って、俺は涼さんこと高崎涼介のほうを見た。
整った顔立ち、切れ長の目の中にあるブラウンの優しい瞳。身長は180センチはあるだろうし、細身だし、筋肉もついている。
それに加えて、爽やかな微笑み、という名の武器を持っているときた。
壮さんだってかっこいいが、あちらはどこかエリート、といった感じがする。黒縁のメガネをかけていることと、色々と弄っていない黒髪も関係しているだろう。
年齢的にも壮さんは20代半ばで、涼さんが18歳ほど。
まだ15歳~17歳ほどであろう王女様にとってみれば涼さんのほうが魅力的のはずだ。
「いやいやいやいや……、まずなんで愛の告白になってんですか……。そっから違いますって,うん。え? 誰が言い始めたんですか?」
明らかに動揺する涼さんを見て、告白だと言い始めた優華さんがニヤニヤ笑いながら手を挙げた。
「私だけど……。 どうすんの? 本当に告白だったら」
「仮に、俺か、壮さんが告白されたとしても元の世界に帰らないといけないですし……」
「だから、告白するんじゃないですか? この世界に残って欲しい、って」
突然耳に入ってきた透き通った声はメンバー最年少の三谷ゆあのものだ。
「そうだよ、うん!! ゆあ良いこと言う!!」
次に聞こえたのは、少し高めの男の声。
神田黎だ。俺よりも年上で、とっくに声変わりなんて過ぎてしまっているだろうが、小柄なこともあってか声は高い。
「あーもう!! うるっせぇな……!! 人様の色恋に口出すもんじゃねぇ!!」
きゃっきゃ騒ぐ女性陣と、涼さんをおちょくる男性陣の声を止めたのは、副リーダーで、メンバーで壮さんに次いで年齢の高い新川雄吾。
所謂ガテン系、といった感じの彼の声は低く、迫力があり、いつも全員がその勢いに押されてしまう。
「すんません……」
そう謝る黎さんの表情はまだ楽しそうだったが、ちょうど壮さんが帰ってきたこともあり、全員が席に座り直し口を閉じた。
「随分と盛り上がっていたようだけど、何の話?」
壮さんも席について、俺たちに聞いた。
「いえ、なんでもないです……。ね、淳?」
優華さんからの突然のパスをスルーして、
「で、どうしたんです? 王女様に呼ばれたんですよね?」
と壮さんに聞いた。
「なんだ気になるな……」
と彼は笑いながら、
「王女様と話してきた」
と続けた。全員の視線が一瞬だけ涼さんに向いた気がしたが、最終的には壮さんで落ち着いたようだ。
「えっと、注目してくれてるとこ悪いんだけど、話が長引きそうなんだ。だから詳しくは明日ね。疲れもあるだろうから、風呂入って、早く寝なよ」
壮さんはそういうと、また出て行ってしまった。
「1番疲れてるのは壮さんなのに……」
「うん、いつも夜中まで情報まとめて、手紙書いてたし」
「今日くらい休んでほしいです……」
「そうだな……」
そんなことを言っていると、なんだか少し空気が重たくなった。
壮さんは、いつだって疲れているはずなのに、それを少しも感じさせない。
その強さが、少しさみしくもある。
「俺、風呂入ってきます」
その空気を破ったのは涼さんだった。
「あ、俺も風呂入ろ!」
「じゃぁ、俺も」
それを機に、涼さんに続いて、黎さん、雄吾さんが食堂を出た。俺も、と後をついて行こうとすると、優華さんに肩をつかまれる。
「いい? ちゃんと涼介から話聞いてきてね」
そう笑う優華さんの周りには黒い何かが見えた気がした。いや、見えた。
「じゃぁ、ゆあ。お風呂行こ!!」
彼女はゆあの方を向き、さきほどまでの黒い何かを一気に振り払って、満面の笑みで言う。
「はい!!」
ゆあも、同じように満面の笑みでそれに答える。2人は、旅の中で2人だけの女子として仲を深め、今では本当の姉妹のように仲がいい。
そんな2人が食堂から出て行ったあと、俺もあとに続き着替えを取るため部屋に向かった。
誤字脱字ありましたらご報告お願いします。
まだ、元の世界には当分戻れそうにないですw
ちょっとこっちの世界で色々してから帰ることになります。