第27話 捜索作戦開始しました。
「もしもし、お電話ありがとうございます。霧屋です」
「あっ、お仕事中にすみません、淳です」
携帯にかけてもつながらないかもしれない、と確実な仕事場へと電話をした。
「淳か。どうしたの?」
「あの、今お時間大丈夫ですか?」
「うん、大丈夫」
彼の声の向こうでは、カタカタとパソコンのキーボードを打つ音が響いている。
恐らく、仕事をしながら電話をしているのだろう。その優しさに感謝した。
「ゆあと連絡がとれなくなったんです。優華さんとの待ち合わせに遅刻して、一切連絡も取れなくて、家にも行ったんですが、そこにもいなくて……」
「電話もメールもないの?」
「はい、優華さんが何度もしたそうなんですが、駄目でした」
「そっか……。心配だね……」
壮さんは電話の向こうで大きく、ため息をついた。
「俺の情報屋は、ある程度色んな所に回った情報しか集められないんだ。少しでも世に漏れた情報をかき集めて、必要な情報を探していくから、こうやってついさっき居なくなった人の居場所を探すのには向いてないんだよね」
いくら有名な情報屋だからといっても、無理なことはある。
分かっているはずだったが、やはり気持ちは下がる。
「ゆあからの連絡を待つしかないんですか……?」
「いや、俺の情報屋が向いていないだけだよ。こんなときは、雄吾に頼んだ方がいいんじゃないかな。ほら、ここらへんにたむろしている若者も使って、足で探せるから」
「分かりました、俺連絡してみます」
「うん、こっちはゆあの写真とか印刷して、配れるように準備しとくよ」
「写真持ってるんですか?」
「まぁー……、それは、ちょっと特殊な方法でなんとかするから……」
「分かりました……」
彼の反応からして、合法的なやり方ではないかもしれないが、こうなってしまったら仕方ない。
最後感謝の言葉を添え、電話を切り、すぐに雄吾さんにかける。
「もしもし、淳、どうした?」
「あ、お仕事中にすみません。実は……」
事情を話し、知り合いにも捜索を頼むようお願いすると、快く承諾してくれた。
「俺は仕事が終わり次第行く。すぐに行けなくて申し訳ねぇ……」
「いえ、十分助かってます……。ありがとうございます。あの、写真の準備の都合とかがあるんですが、何人くらいに手伝ってもらえますか?」
「多分平日だが、学校行ってないようなやつらも使うから、50弱くらいか? 少ないか?」
「いえいえ、十分です……」
50人という人数に驚きつつも、雄吾さんと壮さんの力の大きさに改めて感謝した。
同時に、何も出来ない自分が情けなくもあったが、今はそんなことを考えている暇はない。
とりあえず、40分後にゆあの家の近くの公園に来るよう指示してもらい、俺と優華さんは霧屋へ印刷してもらった写真を取りに行くことにした。
* * * * * *
「これ、一応人数が増えたときのことも考えて70枚用意してあるから」
「ありがとうございます」
頭を上げて、壮さんから封筒を受け取った。
中身を確認してみると、どこから入手したのか、中学校の卒業アルバムの写真であろうものの横に、身長などの特徴が書かれた紙が入っていた。
「あの、淳。私、もう一度待ち合わせ先に行ってくる」
「はい、分かりました」
優香さんは、暗い顔をしていたが、瞳だけはしっかりすわっていたから、その言葉にうなずいた。
俺は、自由に行動しやすいようにと、壮さんに原付を借りて、待ち合わせ先である公園へ向かった。
途中、すれ違う人の中にゆあの姿を探したが、見つることはできないまま、公園についてしまった。
そこには、待ち合わせ時間前だというのに、すでに20人近い人がいて、その多くは高校の制服を着ており、2人ほど同じ高校の生徒もいた。
「あの、皆さん、初めまして。N高校2年、仙崎淳です。雄吾さんから聞いてると思います。写真を配るので、捜索お願いします」
軽く自己紹介をして、封筒の中の紙を配った。
「しっかり探すわ。雄吾さんから、かなり信頼されてるみたいでまじ尊敬」
「俺ら、N高校の2年なんだけど、同じ学校の同い年に、そんなすごい人いるなんて思わなかった」
最後に紙を渡したのは同じ学校の制服を着た2人。どうやら学年も同じらしい。
雄吾さんと仲がいいだけで、こんなに羨ましがられるとは、彼のすごさが計り知れない。
ここらの不良たちにとって、雄吾さんは憧れの人なのだろうか。
「他にもN高校の人はくるの?」
「どうだろう。N高にも俺らみたいなのそれなりにいるけど、雄吾さんと知り合いなのは少ないんじゃね? 俺も、知り合いづたいでやっと知り合えたし」
「うん、俺らの知らないとこで仲良くなってるやつがいたとしても2人、3人。仙崎も、そのひとりだけどな」
「淳でいいよ。2人とも、お願いします」
茶髪に、ピアスという普段なら絶対にかかわることのないような人たちだが、こんなときに頼れるなんて思っていなかった。
深く頭を下げると、二人は、
「そんな頭を下げられることじゃない。雄吾さんが信頼している淳の頼みだ。何でも聞くよ」
「あ、俺が愁で、こっちが彰。ややこしいけど、覚えててくれたらまじ嬉しいから!」
と言って、近くに停めていた中型バイクに二人乗りをして走って行った。
それからも、来てくれた人に紙を配り、頭を下げてお願いした。
見つけたときの連絡先として、俺の携帯番号を書いてもらっていたが、しばらくたっても携帯はならない。
話を聞いた人は、ひととおり全員公園に来たようだったから、俺も原付に乗り、まずは優華さんのもとへ向かった。
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