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世界を救った、よしどうしよう  作者:
日常と非日常について考えましょう。
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第22話 ピザを食べました。

届いたシーフードピザを囲んで、食事の準備を始める。まだ熱いピザを冷まさぬように、と急いでお皿などの準備を始めるが、ピザが届く前にしていれば良かった、と思った。

 案の定、お皿を準備して、テーブルを拭いて、としている間に少しピザは冷めてしまった。


「じゃぁ、いただきます」


 今まではゆあの役だった食事の前の挨拶を黎さんが言い始めるものだから、少し不思議な気分になる。


「いただきます、っと……」


 小さく呟いて、ピザをお皿によそう。エビやイカ、ホタテなんかがたっぷりとのっている、トマトベースのソースがかかったピザ。

 少し焦げたチーズの香りも良くて、食欲がわいてくる。


「んー……、うまい!!」


 壮さんは、蒸気で曇るメガネを外し、完全に食事モードへと突入している。

 雄吾さんは無言でピザを口へと運んでいた。

 黎さんは、片手にピザ、片手にコーラ持って、満面の笑みで食事をしている。


 10分も経たないうちにピザの箱は空になり、片づけも済んでしまった。

 そして、食事から今までの話へと中心を戻そうとしたとき、雄吾さんの携帯が鳴った。

 少し席を外して、俺たちのところに戻ってくると、


「すまない。本当は今日は仕事夕方ちょっと行くだけだったが、急に入っちまった。今日はこのへんで」


 と言って、俺たちに軽く頭を下げて帰って行ってしまった。

 俺も軽く、頭を下げて、みんなも同じように頭を下げる。


 別に帰ったことが悪いとか、そんなことを思っているわけではないが、みんなこの世界で生活しているのだ、と改めて感じさせられた。

 そうすると、仕事をしている壮さんや雄吾さんが、ただの高校生の俺なんかにくらべたら、ずっとずっと大人に感じられて、寂しくなった。


 そして、会話が再開する前に、今度は霧屋の電話が鳴る。


「ごめん、俺も今日行かなきゃいけないとこが出来たから。ここ、使うなら使ってもいいけど」


 しばらく電話で話した後、壮さんは申し訳なさそうにそう言った。

 一瞬、黎さんと顔を見合わせて、主のいない家にいるのは何だか申し訳ない、と出て行くことにした。


「ごめんね、突然で」


 何度も謝りながら身支度をする壮さんに、


「大丈夫です。お仕事ですから」


 と言って、黎さんと霧屋を後にした。




* * * * * *




「これからどうしよっか……」


 大都会のど真ん中、高層ビルによって作られた日陰にあるベンチに座り、黎さんとうなだれていた。


「誰か誘って、遊びます?」

「みんなまだ学校だろうね……。お前なんかと違って真面目だからさ」

「あ、それ軽く心に刺さりました」

「本当? おめでとう」

「あ、何かありがとうございます」


 下らない会話をして時間をつぶそうと試みるが、どうしてかこういうときほど時間が経つのが遅く感じられる。


「なんかうるさいよね、この世界」


 黎さんはそういって、耳をふさぐフリをする。

 俺も何度も感じていたことだが、忙しく歩く人たちの話し声、大きなモニターから流される広告、道路を走り去る車。

 向こうの世界では、隣のベンチにすわる人たちの会話なんて嫌でも聞こえてきたのに、この世界では、隣に座る人の話し声を聞くのがやっと。

 となりで携帯電話を使い通話するサラリーマンの声なんて、これっぽっちも聞こえないし、聞きたくもない。


「きっと耳がこのうるささに慣れていきますよ」


 慣れることは、少し怖いことでもあるような気もするが、慣れてくれなきゃこの世界で生きられない。

 選択肢は、1つだけなのだ。


「まぁ、なんでも慣れればいいんだよね」


 そう言って、笑う黎さんに言葉を返そうとしたとき、彼の携帯がそれを邪魔した。


「もしもし?―――うん、うん。でも今友達といるから……。え? 関係ない? 分かった、分かった。何か欲しいものは? 食べたいものは? 分かった。買ってく」


 彼は口ではどこか面倒くさそうに話しているが、実際はすごく笑顔だった。恐らく、彼女さんだろう。


「彼女さんですか?」

「うん」


 予想通りの返事をもらって、


「じゃあ、俺は邪魔ですね。今から行くんですよね?」


 と、これからどうするかなんて決めていなかったが、とりあえず黎さんとは別れようとした。

 しかし、


「いや、友達といる、っていったら彼女がさ、会いたい、っていうんだよ。悪いけど、一緒来てくれない?」


 と、少し申し訳なさそうに言ってきた。


「いえ、でも彼女さんの家に行くんじゃないですか? そしたら、俺とは入んない方がいいかなー、って」


 仲間の彼女とはいえ、女性の家だし、会ったこともない女性。そんな人の家にあがるのは流石に出来ない、と必死に断った。


「いや、俺の家だよ。マンションだけどね。同棲してるから」

「あぁ、そうなんですか……って、同棲!?」


 思わず大きな声を出してしまった。大人とはいえまだ二十歳。同棲するにしては若すぎるような気がした。

 相手がずっと大人で、その人の家だというなら話は少し違ってくるが、今までの感じでいくと、黎さんの家だし、相手は黎さんと同い年、また年下と考えるのが妥当だろう。

 

「とりあえず、それでも流石にお邪魔するのは……」


 黎さんの家に行くのなら大歓迎だが、女性が住んでいるとなると話は別。もちろん断る。


「いやいや、逆にお願い!! 来て!!」


 理由は分からないが、なぜか彼はどうしても俺に来てほしい様子。

 この後も何度もお願いしてきて、これで断るのは人間としてどうかとも思った。だから、


「分かりました。じゃぁ、お邪魔します」


 と、頷くことにした。


「本当!!? ありがとう!! じゃぁ、いまからゼリー買って帰るから、行こう!!」


 俺のその言葉で一気に表情を明るくした黎さんは、俺の手を引っ張って街の中を駆けだした。


更新が遅れてしまい、大変申し訳ありません。

そんな状況の中、このお話を読んで下さったすべての皆様に感謝いたします。


これからも、更新ができない状態が続くと思います。

ですが、精一杯執筆させて頂きます。


もしよろしければお付き合いください。


何かありましたら、コメント、メッセージ、Web拍手より

お気軽にお願いします。



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