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世界を救った、よしどうしよう  作者:
日常と非日常について考えましょう。
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第19話 召喚獣について考えました。

 結局、黎さんに角砂糖を大量に投入され、甘ったるくなってしまったコーヒーを飲み干して、本題に入る。


「魔法について、なんですけど、俺まだ召喚術使えるか試せてないんです」


 理由として大きいのは、やはり召喚獣の『姿』と、場所がないこと。

 室内で召喚すれば、部屋や周りにある物をめちゃくちゃにしてしまうのは目に見えていることだし、中には体格的に部屋に入りきらないものも居る。

 屋外で召喚するのは、他人に見られてしまうリスクを考えると難しい。

 やはり、室内で召喚する方法が無難なのだろうが、どの召喚獣においても、隣人や上下の階の人に影響が出るのは目に見えていた。


 一瞬だけ召喚する、という方法も考えたが、召喚獣と召喚者である俺の双方が『戻る』をいうことを考えなければだめなのだ。

 珍しいもので埋めつくされたこの世界をみたみんなが、戻りたい、と思う訳がない。不可能だ。


「誰かしら召喚すればいいんでしょ? 実験みたいなものだし。シルフとかは? ほら、風の召喚獣の男の子。小っちゃいしいいんじゃない?」


 相変わらずコーラを飲みながら、黎さんは尋ねる。


「ダメです、黎さんも見たことあるでしょ? あいつ、何だかんだいっても子供ですから、周りに珍しいものがあると、なんでも近づいて吹き飛ばしたり、切り裂いたり、投げたり……。子供でも、召喚獣ですから力は強くて、壁なんか簡単に突き破っちゃいます」


 シルフは外見は可愛らしい男の子だが、じっさいはただの悪戯小僧。俺の言うことを聞いてもらえるようになるまでは、誰よりも時間がかかった。


「じゃぁ……、シャドウ!! 大人しいし、周りに危害加えないんじゃない?」

「シャドウもダメです。あいつはただの影ですから物質をすり抜けられます。隣の部屋なんかに行かれたら即アウトです」


 俺も、8体の召喚獣を思い出すが、どれもこの世界で、誰にも気づかれず召喚するのは難しかった。


「あっ……」


 俺も黎さんもあきらめかけたその時、壮さんが何かに気付いたようだ。


「ウンディーネは? 水の召喚獣!!」

「あの人は、実体を保っている間はいいですけど、液体の姿になったら、家から染み出して、外でまた実体を形成します。だから、アウトです」


 俺も彼女が1番に出てきたのだが、液体になることが出来る、という彼女の大きな特徴を思い出し、あきらめていた。


「だから、要は染み出さなきゃいいんでしょ?」

「まぁ、そうですね」

「だったら大丈夫だよ」


 壮さんの言葉の意味を追う。そして、気づいた。


「お風呂……」

「そうそう」


 なんでこんなことに今まで気付かなかったのだろう。馬鹿だ、俺は。

 風呂場のような撥水をする場所ならば、彼女は液体化して染み出して行くことができない。

 つまり、そこでなら彼女を召喚できるということ。簡単なことなのに、気づかなかった。


「まずは、召喚術が使えるか確認ね。それから、これからについて話し合おっか」

「そっすね……。やっぱ、現状を把握することが第一ですね」


 壮さんの意見に雄吾さんが賛同し、俺と黎さんも頷いた。


「杖は? 今日、持ってる?」

「あぁ、あります」


 もしも、に備えて杖を持ってきていて良かった。もちろん、あの長いまま持ってきたわけではない。

 この杖は、1メートルほどの白い杖のうえに、直径8センチほどの白いガラス玉のようなものがのったものだ。

 そして、その杖は魔法により、白いガラス玉のみの姿へすることが出来る。

 杖を持ち帰るときは、その姿にしリュックサックに詰め込んだのだ。そして、そのままの姿の杖が、鞄の中に入っている。


「そういや、旅のなかじゃほとんどガラス玉にしなかったよね」


 壮さんは、俺が取り出したガラス玉をまじまじと見つめながら言った。


「はい。これをもとの姿に戻すのには時間がかかります。召喚術を行うには、縮めた形じゃ使えないので……。突然の襲撃に対応できませんからね」

「そっかそっか、それで防御したり、殴ったりしてたもんね」


 彼は、小さな疑問が解けて嬉しそうに呟いた。


「あれはひどかったな。ガラス玉の部分で魔族殴り倒したり、どついたり。俺が肉体強化かけた素手で殴るよりひどかった」


 そう、嫌味ったらしく、懐かしい思い出を雄吾さんが語った。



 彼の特殊魔法、肉体強化とはその名の通り、腕を鋼鉄のように固くしたり、移動速度を上げるため、足の筋肉に働きかけたりする魔法だ。

 ゆあの天使術もそうなのだが、『特殊魔法』と呼ばれるそれらは、修行をすれば誰でも使えるわけではない。

 生まれつき、その素質を持った者だけが発動できる魔法だ。召喚術もそれに入る。

 それは、異世界に住む人も同じで、特にゆあの天使術なんかは10年に数人しか発動できない極めて珍しい魔法だ。

 天使術のすべては、光に満ちた術で、その美しさから、まるで天使が下りてきたようだ、とその名がつけられたらしい。

 旅の中で、ゆあが天使術を使える魔道士だと分かった瞬間、手を合わせて拝む人がいたりもした。



「いや、あれは魔法使うほどの敵でもないかな、って……。俺って、一応魔道士じゃなくて、召喚術士なんで、魔法あんまり得意じゃないんです。疲れるし。それに、ガラス玉で殴ってて見た目はひどいかもしれませんけど、威力はそんなにないですよ」


 魔道士にとっては、上級魔法を連続で使うことなど当たり前のことなのかもしれない。

 しかし、俺は上級魔法なんていくつかしか扱えないし、1回使うだけで大きく体力を消耗してしまう。


「とりあえず、壮さん風呂場貸してください!! 今から、召喚できるかやってみましょう!!」


 黎さんが、2本目のコーラを空にして、3本目のコーラを手に立ち上がった。


「そうだな。淳、杖準備して?」

「はい」


 この世界に帰ってきてから、魔法は一度も使っていなかった。しかし、みんなが使える、というのだから大丈夫なのだろう。

 右の手のひらに乗せたガラス玉に、左手をそっと重ねた。


 詠唱をし、軽く力を込める。すると、何とも懐かしい感覚に襲われる。自分のものじゃないような力が、心臓の奥から込み上げて、そして腕に伝わる感覚。

 そして、その力はガラス玉へと流れ込む。


 一瞬、ガラス玉が光り、何も見えなくなった。そして、次の瞬間にはしっかりと右手に杖が握られていた。

 

「とりあえず、俺もふつうの魔法は使えるみたいですね」


 その杖を持ち、立ち上がり、1つ大きな背伸びをした。


「じゃぁ、行こうか」

「はい」


 壮さんの合図で、リビングを出て、風呂場へと向かった。


調子に乗って1日2話投稿してみた。


読んで下さりありがとうございました。

誤字脱字等ありましたら、ご指摘いただけると嬉しいです。

また、アドバイス大歓迎です。


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