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世界を救った、よしどうしよう  作者:
元の世界へ帰りましょう。
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第1話 魔王倒しました。

「炎の獣イフリートよ!! 我らの敵を打ちたまえ!!」


 俺の詠唱により召喚された炎に包まれた巨人イフリートが、目の前に居る黒いマントを纏った鬼に喰らいつく。

 そして、次の瞬間炎が一気に広がり、鬼の姿を隠した。


 しばらく経ち、イフリートと炎が同時に俺が持っていた杖に吸い込まれていった。

 それから見えたのは、倒れている鬼の姿。


「負けた……だと。この私が、人間ごときに……」


 その言葉を最後に、鬼は動かなかくなった。


「これで、終わったんですね……。魔王、倒したんですね……」

 

 自分の言葉で改めて実感する。目の前で倒れている鬼は魔王。

 こいつを倒すために旅を続けてきた。そして、今、終わったのだと。


「あぁ、長いようで、短かったね」

「そうでうすね、ここに来たときはどうなるかと思ってました」

「さぁ、帰ろう、帰ろう!!」

「うー、戦い終わった途端腹減った……」

「私もお腹空きました……」


 魔王との戦闘のすぐ後、とは思えないほどゆったりした空気が俺を包んだ。

 

「じゃぁ、みんな回復は大丈夫だね? 帰るよ、城へ」




* * * * * *




 城門を通り、城内へ入ると、玄関ホールで王女様が迎えてくれた。


「皆様、お帰りさないませ!! 皆様が帰ってこられたということは……」

「そうです、王女様。魔王は無事倒しました。安心してください」


 王女と会話しているのはうちのリーダーの壮さんこと、霧島(きりしま)壮介(そうすけ)


「本当に、何とお礼を申せば良いのか……」


 王女様は俺たちへどういう顔を向ければいいのか分からない様子だった。


「うちのメンバーが腹を空かせてますので、食事を用意して頂ければ……」


 壮さんは、そんな彼女に優しくそう言う。


「すでに、お食事、お風呂などは準備できております。また、王や大臣、他国の王などもぜひみなさんとお食事したいと……」

「いえ、今日は……」


 壮さんはメンバー全員の顔を確認した。全員壮さんと目を合わせて頷く。


「疲れもありますし、申し訳ありませんがメンバーとだけで食事を」


 壮さんが少し申し訳なさそうにそう言うと、


「そうですよね、失礼致しました……!」


 と王女様は焦って謝り、


 「城の者には私から言っておきます。お食事は食堂にお持ちいたしますので、少しお待ちください」

 

 と続けた。


「すみません、ありがとうございます」


 壮さんは王女様に会釈して、俺たちのほうを向く。


「そういうことだから、まずそれぞれの部屋に戻って荷物置いて、出来るだけ早めに食堂に集合ね。さぁ、部屋に戻ろう」


 彼のその言葉を合図に、全員が自分の部屋へと向かい始めた。




* * * * * *




 キリグリーマ王国。それがこの国の名前。緑と水に溢れたこの国は、他国からの観光客も多かった。

 しかし、1年前、この国にある洞窟に封じられていた魔族が復活してしまった。

 それから、国は荒れ、被害は他国にも広がってしまった。


 そんな中、キリグリーマ王国が選んだ道は、異世界から7人の勇者を召喚し、彼らに魔族を封じてもらうことだった。

 この王国には異世界から世界を救う者たちを呼び寄せる、という魔法が古くから伝わっていたからだ。

 

 そして、召喚されたのが俺たち7人。

 突然、全くの赤の他人が魔法や召喚獣が当たり前に存在し、その代わり科学がほとんど進歩していない世界に召喚された、ということだ。


 それから1年間共に旅をし、ついに今日魔王を倒した。再び魔族は封じられ、この世界に平和が蘇ったのだ。




* * * * * *




 部屋に着いて荷物を置き、クローゼットを開けた。

 俺がここに召喚されたのは本当に突然のことで、学校からの帰り道だった。

 その時にきていた学校の制服がハンガーにかかっている。ポケットには財布と、電池が切れた携帯と、学生手帳が入っていた。


『N高校 第2学年3組 仙崎(せんざき) (じゅん)


 学生手帳を取り出して開いた。写真の中の俺は、今より少し顔だちが幼い。

 身長も今よりも5センチは低かったはずだ。こげ茶色の髪と、やる気のなさそうな目は相変わらずだが。 懐かしさに浸っていると、コンコン、と部屋のドアを誰かがノックした。


「淳、急いで、みんなもう食堂にいるよ!」


 この声は、魔術師の阿南優華(あなんゆうか)だ。彼女は医療魔術を得意とし何度も俺や仲間を助けてくれた。


 この世界に召喚された時から、7人はそれぞれ何か1つ、大きな力を持ち召喚された。

 基本的な魔法はみんな使える。つまり、それ以外に特殊な術が使えたり、攻撃魔法が得意だったり、ということ。

 俺の場合は火、水、雷、風、地、氷、闇、光の8種族の召喚獣をもつ召喚術士。

 それが、この彼女の場合は瀕死状態までもを回復させてしまうほどの医療魔術だった、という訳だ。


「こんなこと考えてる場合じゃなかった……」


 小さくつぶやいて、部屋を出た。


「淳っていっつも遅いよね。自分の世界にこもったまま時間忘れちゃってる、っていうか」

「そうかもしれないです。俺も気付いたら、って感じですから」

「だよねだよね!! みんなそう言ってるよ。召喚獣と話してる、って言ってる人もいるけど」

「部屋なんかで召喚したら部屋壊しちゃいますよ。みんな暴れん坊だから」


 彼女と笑いながら話していると、食堂についた。


「ささっ、中入ろう?待ってるよ、みんな!!」

「はい」


 彼女が少しドアを開けると、なんとも言えない良い香りが漂ってきた。


記念すべき第1話です!


誤字脱字等ありましたら、ご報告お願いします。

また、アドバイスなどいただけると嬉しいです。


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