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世界を救った、よしどうしよう  作者:
日常と非日常について考えましょう。
18/49

第17話 男の子に会いました。

 翌日。高校生である俺にとっては、ある意味で週の終わりである金曜日。

 しかし、午前9時現在、学校にはおらず、高層ビルが並ぶ街の中心部から少し離れた場所に居た。


 波のように押し寄せてくる人、排気ガスで濁った空気、自動車や街のモニターから流れる音。

 異世界にはなかったもので溢れるこの世界の街は、ほんの数十分そこらを歩くだけで、くたくたに疲れてしまう。

 自然に害を与えない魔法で発展した世界は、不便な点も多かったが、住み心地はこの世界のどの場所より良かったのかもしれない。


 それはそうと、なぜ俺がこんな時間にここに居るのかというと、だ。

 喧嘩のことを壮さんに話したところ、今日がたまたま休業日だったということもあり、会ってくれることになったからだ。

 もちろん今日、俺には学校があるわけだが、1日学校を休んだからと言って、下の上の成績がどうこうなるわけではないから、仮病で欠席した。

 そして、壮さんの仕事場兼自宅があるというこの街まで、8駅電車に揺さぶられ来たというわけだ。


 どうやら、目の前にある茶色いレンガ造りの9階建てのビルの4階が、彼の仕事場兼自宅のようだ。

 駅から20分ほど歩いただけだが、駅前の見上げるほど高いビルはこの辺りはなく、高くてもせいぜい十数階建てといったところ。

 メールで教えてもらったビルの名前と、目の前に立つビルの名前を何度も確認して、中に入った。


 エレベーターで4階まで行き、降りてすぐ見えたのは階段。それを無視して右を向くと、『霧屋』と書かれた古びた表札が下がるドアがあった。

 壮さんから聞いていた店の名前と一致し、安心してインターフォンを鳴らそうとしたが、見当たなかった。だから、仕方なく、


「すいませーん、仙崎ですが、霧島さんいますか?」


 と恐る恐るドア越しに言ってみると、


「あ!! ごめんごめん、今いく!!」


 と、壮さんの声が聞こえた。

 しばらく、ドンドンと足音がして、扉が開かれた。


「ごめん、気づかなくて。入って」


 ドアの向こうには、少し髪が短くなったようには感じるが、それ以外は何も変わらない壮さんの姿があった。

 ただ、俺の身長が縮んだせいで、旅の終わりには同じくらいになっていた身長が、少し俺の方が低くなってしまっていた。

 黒縁メガネと、清楚な黒髪と白いシャツにグレーのスラックスという服装。やはり、筋肉は落ち、細くなった印象があった。


「おじゃまします……」


 彼に案内され、その『霧屋』に入って、まず見えたのはテーブルと、それを挟んでおかれた白い2脚の2人掛けであろうソファー。

 その奥には、パソコンが置かれたデスクや、本棚、観葉植物なんかが置いてあった。

 フローリングの床は綺麗に磨かれ、薄いベージュの壁紙にはシミ1つない。

 彼の几帳面さが見える部屋だ。


「ほら、俺家で仕事してる、っていったでしょ? この部屋がお客さんがくるとこで、奥にあるドアの先が家。1人暮らしで、会社も1人でやってんだよね。今日は家の方で話しするから」


 彼は綺麗なフローリングの床を構わず土足で歩いて行く。俺はなんだか、汚してしまうのが嫌で、軽く入り口で靴のつま先をトントン、と床にぶつけて土を落とし、彼のあとについていった。


「ごめんね。俺がみんなに言ったのに、話し合いに参加できなくて……」


 彼は俺の少し前を歩きながら、ちいさく呟いた。


「いいんです。お仕事があるでしょうから……」


 本当のところは、昨日壮さんがいたら、喧嘩は起きてもここまでひどくはならなかったのではないか、などと思ってしまっていた。

 けれど、この世界に戻った今、みんな学校や仕事があって、異世界にいたときのように、今から話し合おうなどとは出来ないのだ。

 それぞれが、この世界で生活をしているのだから。


「涼介と優華のことも心配だったけど、同じくらい淳とゆあのことも心配だったんだよね……。特にゆあが。やっぱり、1番このメンバーのことを気にかけて、心配して、大切にしてるのは彼女だと思うし」

「そうですよね……。彼女が1番……」


 昨日の彼女の様子を思い出す。大切だから、不安になっていた。俺が、気づいてあげられなかったこと。

 だけど、壮さんはそのことにとっくに気が付いていたのだろう。自分が情けなくて仕方なかった。


「まぁ、みんな色々あって当然なんだからさ、そんなに重くなりすぎないようにね」


 壮さんの優しい声が俺を包んだ。同時に、どれほど自分が重く、暗い表情をしていたのかと気付かされ、そのことでも情けなくなった。


「こっちだよ」


 必死で、その表情を少しでもまともなものにして、そう言った壮さんの方を見た。

 霧屋の奥にあるドアを開けて俺を待っていた。


「ここからは土足じゃないんですか?」

「うん、そうそう」


 霧屋の入り口には玄関は無かったが、ここにはそれがある。そこで靴を脱いで、部屋の様子を確認した。

 まず見えたのは前に続く一本の廊下。右側には2つ扉があり、左側には1つ扉がある。

 霧屋と同じ様子の床、壁で、靴なんかも綺麗に棚に収納されているようだった。

 荷物はしまうと、どこにしまったか分からなくなるから、全部出しておいた方が逆に分かりやすい、なんて言っている俺と大違いの部屋だ。


「こっちがリビングね」


 壮さんは、『男の1人暮らしの部屋』の格差を見せつけられ、やるせない気持ちになっている俺をよそに、左側の扉へと入っていった。


 リビングも、彼の几帳面さがにじみ出ている場所だった。

 フローリングの床や、壁紙がきれいなことはもちろん、部屋の中央に敷かれた黒いカーペットには1つの埃もついていない。

 となりにあるのはキッチンだろうが、そこも含め机の上、椅子の上には一切の荷物はなく、全てしまわれているようだった。


 そして、そのリビングの中央のカーペットの上で寝転がる男が1人と、テーブルの傍に置かれたソファに座る男が1人。


「おぉ。淳来たか」

「久しぶり!! ……でもないか」


 心臓まで響くような迫力のある低い声の男と、少し男性にしては高めの声の男。

 雄吾さんと、黎さんだった。



やっとこさ壮さん、黎さん、雄吾さん出てきました。

物語進むの遅くてすみません。

読んで下さりありがとうございます。


数日振りの投稿ですね。

指摘された点を色々と見直し、改稿しました。

どの点もストーリーの変更はありません。


誤字脱字、アドバイス等ありましたらお気軽にどうぞ!!

Web拍手でのコメントは無記名で構いません。


ではでは!!



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