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世界を救った、よしどうしよう  作者:
日常と非日常について考えましょう。
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第16話 話を聞きました。

「淳……、さん?」


 突然のことに驚き、彼女はそっと後ろを振り向く。

 きっと、彼女の眼には、不安や、もどかしさ、情けなさでいっぱいのなんとも不細工な俺の顔が映っただろう。

 しかし、今はそんなことを気にしていられない。


「ごめん、何も気づけなくて……」


 まとまらない単語を、なんとか1つの文に繋げる。

 焦りを全く隠せていない自分が情けないが、それでも構わなかった。


「そんなんじゃ、ないんです……。私も忘れてた気持ちなんです。1年間、つらくて、厳しい旅でしたけど、でも楽しかった……。そんな生活から、いきなり嫌な事とかでいっぱいの、キツキツの世界に放り出されて、一気に全部思い出して、押し寄せて……。だから、その、なんていうか……」」


 必死で、俺やメンバーを庇おうとしているのだろう。

 彼女の腕を掴んでいる方の俺の腕を、掴まれていない方の手で、必死に握りしめていた。

 その優しささえもが、今の俺にとっては苦しみだ。


「話したくないならそれでもいいから……。だから、せめて、そんな苦しそうに笑わないでよ……」

「ごめんなさい……。こんな……」


 彼女は、それから大粒の涙を零しながら、謝り続けた。

 もう、彼女は限界なのだ。それは、俺も同じで。

 ただ、安心させたくて、泣き止んでほしくて、開いている腕で彼女の背中に手を回して、身体を引き寄せた。

 彼女の腕を掴んでいた腕は、そっと頭の後ろに回す。

 そして、泣きじゃくる彼女の顎が俺の肩にのるように、少し屈んで、そして、抱きしめた。


「ごめん、突然こんなこと……。でもさ、そんなに悲しそうなゆあ見てたらさ、その……。何ていうか……」

 

 突然、抱きしめられて驚いているのか、彼女は何も言わない。嫌われてしまったのだろうか……。

 付き合っているだとか、幼馴染だとか、特別な関係でない異性に突然こんなことをされたのだ。

 俺の事を嫌いになっても不思議ではないし、仕方のないことなのかもしれない。

 

「あの……、淳さん?」

「何……?」


 俺の顔の横で呟くゆあに、心の内が悟られないよう、必死に平然を装い答える。


「ごめんなさい……。迷惑かけて……」

「いいから、気にしないで……」


 まだ謝り続ける彼女にそう言うと、


「一度出来た繋がりが消えることが、私にとって1番悲しいことなんです……。脆い繋がりなら最初からない方がいいんです……」


 と、俺の体操服の上着を強く握りしめながら言う。


「大丈夫、脆くないから、大丈夫……」

「分かってます……。でも信じれないんです……。昨日、今日で、家族がいない寂しさとか、一度失敗してからずっと避けて、今でも避けてる友人関係とか、全部一気に押し寄せてきて……。だけど、この7人の繋がりがあるから、もう1人じゃないって思ったのに、今日、こんなにボロボロになって……」


 嗚咽交じりに、彼女は俺に自分の中のことを、必死に伝えてくれた。

 だから、俺も、一言一句聞き逃さぬよう、必死で言葉を追いかける。


「全部全部、思い出したから……。学校に行くのが辛かったこととか、家にいることも辛かったこととか、ずっと1人で寂しかったこととか……。1年間が楽しかったから、その分、今が苦しいんです。そうしたら、不安だらけになって、今までもあったただの喧嘩なのに、必要以上に不安になって……」


 泣きじゃくる彼女の言葉を全て受け止める。

 そして、なんとしてでも彼女を安心させたいと思った。



* * * * * *


 


「淳さん、今日はありがとうございました……」


 しばらくして、落ち着いたゆあは、俺にそう言って頭を下げた。


「いいから、気にしないで?」

「もうちょっと、家族とも友達とも上手くいくように頑張ってみます」


 まだ赤い目で笑う彼女のその言葉が、何故かすごく嬉しかった。


 彼女の話によれば、両親とも大きな会社の重役で、家に帰らないことも多く、帰ってきても夜中で、次の日の朝早くに出て行ってしまうそうだ。

 友人関係の失敗、というのも俺が聞く限りでは、中学時代に、一方的に裏切られて、苛められただけで、彼女は何も悪くなかった。

 その2つの大きな荷物を背負った彼女は、人付き合いが上手にできなくなったという。

 

 異世界に召喚されたとき、それをチャンスに新たな繋がりを作った。それが俺たち。

 今の彼女には、それが1番強い繋がりだったはずなのに、それが崩壊してしまいそうになった。

 みんなが持っているこの世界での繋がり、つまり逃げ道は、彼女にはなかったのだ。

 だから、それが辛くて、その辛さを吐き出す場所もなくて、溢れだしてしまったのだろう。


 そんな彼女が言った言葉は、失った繋がりを修復すること、または新たな繋がりを築くということで、それは大きな進歩だ。


「俺でいいなら、いつでも話聞くから」

「ありがとうございます」


 彼女に手を振って、さきほど来た道をたどり、駅に向かう。

 その間考えたのは、どうすれば涼さんと優華さんの意見の食い違いを止められるかということで、出した結論は、壮さんに相談する、という何とも情けないものだった。


 

どういう展開w


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