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世界を救った、よしどうしよう  作者:
日常と非日常について考えましょう。
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第13話 話し合いをしました。

 お世辞にも広いとは言えない部屋に入って、それぞれが席に着いた。

 そして、俺が話を切り出す。


「俺の召喚術なんですけど……」


 今日、少しだけ涼さんと話した召喚についてだ。

 正直、もうテストとしてでも、召喚しないほうがいい気がしていた。

 どんなに隠れて召喚しても、きっと見つかってしまう可能性が高いと思ったからだ。

 その考えを伝えようとしたとき、優華さんが俺の言葉を遮った。


「それなんだけど、場所は私の実家がここから車で2時間ほどの場所にあるから、そこを使って?」

「え、いや、あの……。俺はもう見つかったらアレだし、召喚しないでおこうと思ったんですけど……」


 突然の言葉に驚いて、慌ててそう言うと、


「大丈夫だよ、うちの家の中にある森とか、グラウンドとか、体育館とか使えば大丈夫だから」


 次元が違いすぎて理解できない。

 森の中に家があるんじゃないのか?

 家の傍にグラウンドがあるんじゃないのか?体育館があるんじゃないのか?


「だって、みんなに会いたいでしょ? 1年間一緒に戦ったんだし……」


 彼女は何も変わらず話を続けるが、みんなはその前の言葉を未だに理解できていない。


「あの……さ、家どんだけ広いの……」


 みんなの気持ちを涼さんが代弁してくれた。


「そんなに広くないって!!」


 優華さんはそう否定したが、きっと彼女にとっての広いは、俺たちとは桁が違うだろう。

 きっと、彼女は所謂お金持ち、に分類される人種だ。


「正直、そんな実家が重たくて、家を出て大学に行ったんだけどね……」


 彼女は最後に小さくそう添えて、一瞬暗い顔をしたが、次の瞬間には、



「なんでさ、魔法使えたのかな……。だって、魔法使える体質になってただけなら、もう戻ってるはずでしょ?」


 と、いつもの明るい表情で言った。

 最後の言葉はすごく気になったが、あまり触れない方が良いだろう。

 そう思って、何も聞かないでおいた。

 そして、優華さんの素朴な疑問の答えを知っている人なんていない。だから、憶測だけで会話は進む。


「多分、記憶というか、脳というか、そういうものなんじゃないんですかね? ほら、記憶の保護はされてるんで……。ってことは脳の保護ってことで……みたいな?」


 俺がそう言うと、 


「でも、それじゃ魔法の使い方覚えれば誰でも魔法が使えることになるんじゃない? 詠唱が分かれば……」


 と、涼さんが反論する。


「もともと、脳内には魔法を使う、っていう部分があって、それは普段は使えないけど、異世界に行ったことで、それが覚醒した、とか」


 新たな意見を述べたのはゆあ。


「うーん、それあるかもね……。魔法が当たり前の世界に行ったから、私たちも魔法が使えると思って、脳が覚醒した、みたいな……? 簡単に言えばただの勘違いだけど」


 これは、優華さんの意見。


「でも、それなら魔法が使えなくて当たり前の世界に戻ったんですから、魔法は使えなくなりませんか?」

「なんか、魔法を使う感覚が脳にしみついて、みたいな」


 俺の言葉に続いたのは涼さん。それに優華さんが同意する。


「あー、分かるかも。魔法って感覚論でしょ? 結果」

「そうです! なんか、光がともるイメージをして……、ハッッ!! みたいな」

「うんうん、やっぱそのイメージなんだよ!!」


 何だか2人で盛り上がっているようだが、その感覚は分からなくもなかった。


「うーん……。考えても分からないんですよ、やっぱり。使えるものは使える、でありがたく利用させてもらえばいいんじゃないですか?」


 盛り上がる優華さんと涼さんを止めたのはゆあの言葉。彼女の言う通り、結局考えたところで答えが出る問題ではないのだ。

 色々と頭を悩ませるより、単純に使えるものは使える、とだけ考えていた方が楽なのかもしれない。


「そうだね。ありがたく使わせてもらおっか」

「うん、そうですね」


 ゆあの言葉にうなずいた優華さんに続いて、俺も頷く。

 問題は、これだけでは片付かない。


「で、魔法はどうするんですか、これから?」


 ゆあが、そう尋ねると、


「そりゃ、使わない方がいいよ……」


 と、当たり前の様に、涼さんが答えた。


「でも、もし街で誰かに襲われたりしたときにとっさに使ちゃったり、ついついあっちの世界の癖で使ちゃったりしたら……」

「まぁ、当然誰かしらにバレたらとんでもないニュースになるね」


 ゆあの言葉に、俺が出来る限り冷静に意見を述べる。


「だけど、この力は隠しておくには大きすぎると思う……。だって、この力があれば、世界中で色んなことが出来るんだよ? 治せなかった病気も治せるようになるかもしれない。だったら、少しでも役に立てるように……」


 そう言ったのは、優華さん。

 彼女は異世界でも、医療魔術師としてたくさんの人の命を救ってきた。

 だから、この世界でも同じようにしたいと考えているのだろう。


「でも、それはこの世界の道理から大きく外れるんじゃないですか? 技術のように、誰かに教えることも、伝えることもできないんですよ?」


 涼さんが、それに反論する。


「それでも、1人でも多くの命が助かるんなら……」


 優香さんの言葉に、さらに涼さんが反論する。


「優華さんは、1人で世界に何万人も、何十万人もいる難病の人たちを救えるんですか?」

「それは……」

「魔法、なんていうこの世界にはないものを使うんですよ? あっちの世界では、同じようにすべての国の人が、医療魔法による治療を受けられてましたけど、こっちじゃ違うんです……。 目の前にいる患者だけを救って、あとは知らないフリなんて出来ないんですよ?」

「じゃぁ、涼介はさ、目の前にいる患者を救うな、って言うの? すでにこの世界には医療にも、生活にも格差があるんだから、仕方のないことじゃないの? 多くの助けられない命の中に少しでもある、助けられる命を救うべきじゃないの?」

「それとこれとは話が違います!! 科学はどの国も必然的にこれから発展します。 だけど、魔法は違う……。俺たちが死ねば、それで終わりなんです。だから、魔法なんて夢のようなものを使って、命を救ったら、俺たちが死んだあとの絶望が大きくなるんじゃないですか?」


 2人は、それぞれの意見をぶつけ合う。

 俺もゆあも、そんな2人に取り残されていた。



個人的には、涼さんの意見がいいでする。


読んで下さりありがとうございました。

アドバイス等ありましたら、ぜひぜひお願いします。



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