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世界を救った、よしどうしよう  作者:
日常と非日常について考えましょう。
12/49

第11話 球技大会開幕しました【下】。

 第1試合が始まった。

 1年生と2年生では技術云々ではなく、まず体格が違う。

 我れらが誇りのキャプテン菊池は身長187cmと特に体が大きく見えた。

 もちろん、技術でも1年生チームを大きく上回り、無事、勝利を収めた。


「淳、見た? 勝った、勝った!!」


 この試合で1得点を決めた慎が、ハイテンションで俺に抱き着いてくる。


「分かった、分かったから、熱い!! 離せ!!」


 先ほどまで走り回っていた彼は、とりあえず暑くて、むさ苦しい。

 そんな彼を全力で振り払って、涼しさを求め、木陰へと歩き出した。




* * * * * *




 それから、俺のクラスも涼さんのクラスも順調に勝ち上がった。

 うちのクラスは体格で勝る3年生ちチームにも勝ってしまったのだから技術は高いのだろう。


 そして、何と決勝戦まで行ってしまった。

 しかも、対戦相手は涼さんのクラス。あぁ、怖い、怖い。


「ここまで来たんだ……。絶対優勝するぞ!!!」


 今までに増して気合の入ったキャプテン菊池と、メンバーたち。

 ベンチの番人としての地位を確立した俺も、円陣には参加させてもらえた。


「このクラスにはサッカー部キャプテン郷田(ごうだ)先輩がいる。

 今までの試合を見る限りでは、長身の高崎先輩もいい動きをされている。

 この2人をとくに注意していけば、優勝も夢じゃない……」


 さすがは菊池。しっかりを敵を観察していたようだった。

 それにしても、涼さんはスポーツまで出来るのか。最強だな。


「3組、いくぞ!!!!!」


 菊池の掛け声に、むさ苦しい男どもが熱い雄叫びで答え、円陣を解いた。


 ここまで勝ち上がれたんだからポイントは十分稼げているはずだ。

 ここは、3年生に勝ちを譲るのが後輩ってもんじゃないのだろうか?


 そんなことを考えながら、大きな欠伸をして、ポジションについた。

 ベンチに座って、ただ試合を観戦する何とも楽なポジション。


「では、これよりN高校球技大会、サッカー部門決勝戦を始める!!」


 主審の先生の合図で、並んだ選手が礼をする。

 こう並んでいるところを見ても、菊池と、郷田先輩と、涼さんは、頭がひょこんと飛び出している。

 両チーム全選手がポジションについたところで、試合開始のホイッスルが吹かれた。



 流石は決勝戦、どちらのチームも一歩も譲らない展開、かと思ったが、それも試合開始10分ほどの間だけで、残りの時間はなんとも呆気ないものだった。


3組には、2年生エース菊池をはじめ、4人のサッカー部がいたが、サッカー部キャプテンの郷田先輩をはじめ、サッカー部レギュラーが7人もいるチームに、体格でも技術でも劣る2年生チームが勝てるわけがなかった。


 次第に体力を削られたこちら側は動きが鈍り、呆気なく1点を取られてしまい、それからはボールをまわし、時間を潰され試合終了。

 1日に数試合を行い、疲れていたとはいえ、見ている側からしてもなんともつまらない試合だった。



「勝者、3年4組。では、互いに礼!!」


 やっと今日の勤務が終わった、とでもいうような気合の入った審判の先生の声に、合わせて礼をし、目の前にいた選手と握手を交わした。


「いやぁ……、思ったより体力落ちてるね……。まっ、君は試合に出ていないからどうせ分かんないだろうけど」


 目の前にいるのが誰か、なんて確認していなかったが、この言葉だけで容易に想像がつく。


「ポジションベンチは、試合を広い視野で見ることで的確に指令を下す、チームの頭ともいえるポジションですから」


 だから、そのイラつく言葉を送ってくれた彼……涼さんに、そう返して、握手の手を解いた。


「なんかムカつく……」


 そう呟く彼に、


「ありがとう」


 とだけ、飛びっきりの笑顔を添えて言ってあげた。

 涼さんは俺に何か言葉を返そうとしていたが、審判をしていた先生の、


「えーじゃぁ、全員教室に戻って最終結果を聞くように、以上解散!」


 という言葉に遮られ、結局俺に言葉を返すことはできなかった。

 先生の言葉の後に、俺に何か言うこともできただろうが、それは解散を待っていた女子が彼のもとにすぐさま集まってきたことで、不可能となってしまった。


「涼君、お疲れ様!!」

「先輩、カッコよかったです!!」

「カッコよくて、運動まで出来るなんて……」


 女子の甘い声に囲まれた先輩は、営業スマイルを彼女たちに向けた後、助けを求めるように俺の目を見てきた。

 そんな彼に、口パクで『お幸せに』とだけ言って、手を振り、慎と一緒に教室への道を歩き始めた。


「いいのか、先輩のこと」


 慎は、涼さんのことを気にしているようだったが、


「いいんだよ、あの人には。ちょっと冷たいくらいが丁度いい」


 とだけ言って、振り返ることなく教室へ戻った。


慎くーん。


読んで下さりありがとうございます。

球技大会、本当は5話くらいかけてやろうと思ってましたが、

なんか需要なさそうなので省きました。


誤字脱字等ありましたらご報告いただけると嬉しいです。

感想等もお待ちしています。

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