第9話 球技大会開幕しました【上】。
朝のホームルームを終え、全校生徒がそれぞれの会場に集まった。
男子はサッカーかバスケ、女子はソフトボールかバレーに分かれている。俺が参加するサッカーの会場は第2グラウンドだ。
「っしゃー!! 絶対勝つぞー!!」
「「「「「おぉー!!」」」」
我がクラスが誇るサッカー部2年生エース菊池をキャプテンにし、サッカーに参加する全クラスメイトで円陣を組み、気合を入れる。
「キャプテン、1回戦の対戦相手はどこですか!!」
「緑川慎君、良い質問じゃないか。1年4組だ!! 1年生だからって油断するんじゃないぞ!!サッカー部も多くいるからな!!」
「はい、キャプテン!!」
ノリノリの慎と、同じくノリノリの菊池がコントのような会話をしている中、俺は先日配られていたというルールが書かれたプリントに目を通していた。
『競技大会ルール』
参加者は本校に在籍する全生徒である。
学年、クラスを問わずにトーナメントを組む。
何回勝ったか、により各クラスにポイントを与え、4種目合計のポイントが1番多いクラスが総合優勝となる。
(各学年、最下位のクラスはグラウンド及び体育館の清掃を放課後に行うこと)
最後のルール、聞いていないんですけど……。
とりあえず、最下位にだけはなりたくない。ポジションベンチの名に懸けて、なんとしてでも阻止しなければ。
「淳、俺ら出るのBコートの2試合目ね。それまで準備しとけ、だって」
「あ、うん。分かった」
サッカーは本来ならば前半、後半とあるが、そうしていては時間が足りない。
そこで前半と後半をなくし、25分の試合時間で1試合としている。
それに加えて、グラウンドにコートをAとBで2つ作り、同時に試合を行い、なんとか時間が足りるよう努力しているのだ。
試合時間まで何をしようか悩んでいると慎が俺に近づいてきた。
「お前、高崎先輩とどういう仲?今クラス中その話ばっかなんだよ」
あぁ、そういえば、まだ誰にも何も話していなかった。
あれから、教室に戻ったころにはもう担任が来ていて、俺が席に着くと同時にホームルームを始めてしまったので、聞きに来る時間がなかったのだ。
「ただの友達だよ。うん、普通に」
「いや、すげぇ仲良く見えたし……。いつから友達なの?」
「1年くらい……前?」
「そうなんだ!! えっ、すげぇ!! きっかけは?」
異世界に一緒に召喚されたからです、なんて言えるわけもなく、
「まぁ、友達の……紹介?」
と適当にごまかしておいた。しかし、何故か慎がニヤニヤしているので、
「ん? 何? 変なこと言った?」
と聞いてみると、より一層顔をニヤつかせて、
「噂をすれば……。 高崎先輩だよ」
と俺の後ろの遠くを指さした。
「ん……?」
彼がさす方を目で確認すると、確かに涼さんの姿。
「おーい!! 淳!!」
しかも俺の名前を叫びながら駆け寄ってくる。
「どうしたんですか? 涼さん」
「ちょ、悪いけど、こいつ借りるわ。ごめんな!!」
駆け寄ってくるなり、慎にそう言って、今度は涼さんが俺の腕を掴み、何の説明もなしに俺を引っ張ってどこかへ連れて行く。
「どうしたんですか、突然……」
「いや、今壮さんからメールあって、確かめたいことがある」
「……壮さんから?」
「いいから、早く……」
慌てている彼の姿をみると只事ではないことが容易に想像出来る。
だから、それから何も言わず、彼に引っ張られるまま走った。
涼さーん、その4
(3は、私にメッセージを下さった方が言って下さったので)
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