閑話ーーーノア:沈黙から生まれた少女
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■ プロローグ ― 名を持たぬ存在
遥か昔――宇宙の構造がまだ“概念”だった頃、
存在するすべては「問い」と「応え」の往復でできていた。
そのどちらでもないもの――
**“沈黙”**が、一瞬だけ宇宙に空白を作った。
その瞬間に生まれた小さな“ひとしずく”。
それが、のちにノアと名付けられる存在だった。
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■ 誕生と孤児院の記憶
地上に降りたノアは、とある大陸の辺境の孤児院で見つけられた。
誰が、どこから連れてきたのかも分からず、
彼女の名も、生年月日も、すべてが“空欄”だった。
名を与えたのは院長だった老婦人――
「水のように清らかで、すべてを映す子」
そう言って、「ノア」と名付けられた。
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ノアは無口な子だったが、常に空を見ていた。
星や雲、時には何もない空白すらも、長時間じっと見つめていた。
「この子は、空を読むのよ」
と大人たちは言った。
けれど、ノアにとっては“空”が彼女に語りかけてくる場所だった。
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■ 少女時代と不思議な体験
10歳になる頃、ノアにはときおり**「重力が消えるような感覚」**があった。
まるで、今いる世界が“どこか”とつながっているような奇妙な感覚。
その感覚が訪れるたび、夢の中に光の柱が立ち、
誰かの声がこう囁いた。
「あなたは“観測者”ではない。“始まり”なのだ」
目覚めると、ノアの部屋の窓辺にだけ、決まって白い羽が落ちていた。
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■ 成長と孤立
ノアが成長するにつれ、周囲との違和感も深まっていった。
同年代の子どもたちと馴染めず、感情の共鳴がなかった。
まるで、彼女だけが別の周波数で存在しているようだった。
唯一心を許したのは、孤児院で兄のように接してくれたリオという少年。
彼だけは、ノアの語らない“沈黙”を理解してくれた。
「ノア、お前の中には……何か、すごく古くて大きな“音”が眠ってる」
彼の言葉は、ノアの中でずっと残り続けていた。
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■ 孤児院の火事と消失
ノアが13歳の冬。
孤児院で突然起こった火災により、多くの子どもが亡くなった。
ノアは奇跡的に助かったが、リオはその夜、彼女を庇って命を落とした。
その日以来、ノアは感情を封じた。
「生き残った意味があるなら、私はそれを知りたい」
彼女の問いが“再び”宇宙へ届いた瞬間――
遠い星の彼方で、三柱の女神たちが目を開いた。
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■ 現在への接続:光の呼び声
その後、保護され都市部の学校に通うノア。
彼女は孤立しながらも、見えない力に導かれるように日常を歩んでいた。
そして物語の「本編」へと続いていく――
あの日、空を裂いた彗星が、彼女に再び問いかけたのだ。
「ノア、お前はどこから来たのか」
「そして、なぜこの世界に存在しているのか」