第一章:重なりゆく光
始まり
——無数の光が、音もなく交差する。
それは星の誕生ではなかった。
それは、「問い」の始まりだった。
あるとき、宇宙の果てのさらに外から、一筋の彗星が放たれた。
誰も知らぬ軌道を描き、何もない空間をすり抜けて、
それは、地球という名の星のひとつの空に、
静かに到達しようとしていた。
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Scene 01:覚醒
空の色が、ほんのわずかに揺らいだ。
静かな丘の上で、少女が目を覚ます。
ノア(心の声):
「また……この夢……。同じ光、同じ声。なのに、何も思い出せない……。」
草の匂い。夜明け前の風。
胸の奥がざわめく。
ノアは、なぜ自分がそこにいるのかを知らない。
けれど、頭上を通り過ぎていく光。
それだけは、ずっと見ていた気がした。
ノア:
「……あれは、彗星?」
天を裂くように流れる銀の軌跡。
それは、まるで彼女を見つけ出すために飛来したかのようだった。
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Scene 02:女神の訪れ
彗星の閃光が去ったあと、空に残されたのは、
柔らかな――けれど決して人のものではない声だった。
天の声:
「目覚めのときは来た。問いかけよ、ノア。
おまえの存在の意味を。」
ノア:
「誰……? 誰なの……今の声……?」
空間が震え、風が止まる。
ノアの目の前に、ひとつの影がゆらりと立ち現れた。
それは、白金の髪に包まれた存在。
時空の縫い目から染み出したような、
人とも神とも言えぬ美しさを纏っていた。
女神・フェルナ:
「はじめまして、ノア。あなたは選ばれた。
存在の奥に潜む”扉”を開く鍵として。」
ノア(驚きと戸惑いの中で):
「選ばれた? 私が……? どうして……?」
フェルナ:
「まだ答えは要らない。ただ、見ること。
この世界の裏側に、いくつもの次元が重なっていることを。」
そう言った瞬間、彼女の背後に広がる空が割れる。
光と闇が交錯する異次元のような空間が、ノアの前に姿を見せた。
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Scene 03:次元の狭間へ
ノアの身体が光に包まれる。
足元から、時間の概念がほどけていく。
フェルナ(静かに告げる):
「ノア。彗星がもたらすのは、ただの変化ではない。
――それは、宇宙そのものの意思。
あなたはその問いかけに、最初に答える者。」
ノア(心の声):
「答える……? 私が?」
目を閉じる。
意識が溶けていく。
その瞬間、ノアは初めて自分の名前を確信した。
ノア。
存在と無のあいだに在る者。
――そして、この世界の始まりに立つ者。
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