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灰の魔導士   作者: toronton
18/71

作戦開始

朝日が村を照らし始める頃、俺たちは順番に目を覚ました。


村には相変わらず静寂が漂っている。


「ふぁぁ……まだ眠い……」

ティナが欠伸をしながら寝袋を畳んでいる。


「今のうちにしっかり食べておけよ。次いつ食べれるかわからないからな」

ガルフがパンをかじりながら言う。


「今頃主力は巣に入ったところか」

俺がそう呟くとスープを冷ましているエリスが反応する

「そうね、早ければ午前中にでも来るかもしれないわ」

エリスは状況を整理する。


俺たちはいつもより多めの朝食を済ませ、それぞれ装備を確認した。




「いつ襲ってくるか分からない以上、事前に配置を決めておこう」

俺は周囲を見回しながら提案した。


この村には柵があるが、そこまで背の高いものではなく時間をかければ乗り越えられてしまうだろう。


「まずは村の入り口で迎撃しつつ、突破されたら村の中心に誘導して戦いましょう」

エリスが今日の動きを提案する


「出来れば入る前に抑えたいところだな、中に入られたら奇襲される可能性が高くなりそうだ」


「じゃあ、俺とリアンで入り口を抑えるか?」

ガルフが剣を軽く振りながら言う。


「いや、ガルフとエリスに入り口は任せる、ゴブリンが他の場所から来ないとも限らないから、俺はある程度動きやすい方がいい」


「オーケー。じゃあ俺とエリスで最前線だな」


「私は?」

ティナが顎に手をやりながら聞く


「ティナは昨日の集会所の屋根から村の周りを確認してくれ、あそこなら村を一望できそうだ」

「もし可能だったら魔法でフォローしてほしい」


「りょうかい!」

ティナが手を上げて答える



「とにかく、敵の数がどれくらいになるか分からない以上、柔軟に動くことが大事だ」

俺たちはそれぞれの役割を確認し、あとは待つだけとなった。


時間が経つにつれ、じわじわと緊張感が増していく。

「……正面!ゴブリン1匹来るよ!!」


ティナの大きな声が響く。


現れたのは1匹のゴブリン。警戒する様子もなく、ただ村へと向かってきている。


「じゃあ、始めようか」

ガルフが剣を抜きながら、ゆっくりと前に出る。


「ガルフ、エリス。ここは任せたぞ」


「リアン、あなたも気をつけてね」

エリスが短く返しながら、魔法の準備を整えている。


俺は入り口の様子を一瞥し、反対方向へと駆け出した。


すると——


「リアン!そっち来てる!!」


「……っ!どこだ!」


「北!2匹いる!」


ティナの指示に従い、村の北側へと走る。


視線の先、粗末な柵の向こうに2匹のゴブリンがいた。1匹はすでに柵をよじ登りかけ、もう1匹はその後を追っている。


(まずは、登ってるやつから——)


俺は素早く呪文を唱え、闇の魔法を発動する。影のような黒い膜がゴブリンを覆い、その視界を奪った。


「ギィィ……ッ!」


突然の暗闇にパニックになったゴブリンが、手を滑らせて柵の外へと落ちる。


(次——!)


もう1匹のゴブリンが柵を乗り越えようとした瞬間、俺は剣を振り上げ、柵越しにその喉元を切り裂いた。


「大丈夫!?」

上から様子を見ていたティナが、杖を構えながら声をかける。


「ああ!!」


ゴブリンが地面にもがき倒れるのを確認し、次の行動に移ろうとしたその時——


「リアン!そこから入り口寄りの所、もう1体来るから気をつけて!」


「くっそ!結構しんどいな!!」


俺は次のゴブリンへ向かいながら、息を整える。


(このペースで戦ってたら、すぐ魔力が尽きる……)


ティナに向かって叫ぶ。


「ティナ!!ガルフ達はどうなってる!!」


「数は多いけど今のところ大丈夫そう!!」


しかし、ティナの声色が次第に焦りを帯びる。


「……待って!ガルフの方、やばいかも!!後ろから集団で来てる!!」


(……やっぱりか)


予想より早い。


時間が経つにつれて、ゴブリンの動きがまとまり始めたんだ。


「わかった!!そっちに援護行く!!ティナは後ろの集団に魔法いけるか!!」


「りょーかい!!」


ティナが急いで呪文を唱え始めるのを確認しつつ、俺は入り口へ向かって走る。


正面では、ガルフとエリスが奮闘していた。


「リアン、左の2匹足止め頼む!!」


ガルフが叫ぶのと同時に、俺は魔法の構築に入る。


(密度を上げて、一気に動きを止める!)


両手をかざし、闇を広げる。


影のような黒が地面に広がり、ゴブリンの足を絡め取った。


「ギギ……!?」


足を取られたゴブリンがもがく。


(よし、これで——)


しかし、ほんの一瞬、視界が揺らいだ。


(……思ったより負担がデカい!)


戦闘の緊張感のせいか、魔力の消費が早くじわじわと疲労が溜まってきている。


ここからが本番だというのに——。


(……もたねぇぞ、こんなペースじゃ)


闇魔法で足を止めたゴブリンのうち、倒れている片方にそのまま剣を突き立てた。

喉を裂かれ、絶命したゴブリンがぐったりと地面に沈む。


だが、もう一匹の方は闇から必死に抜け出そうとしている。


「……しぶといな」


魔法を維持するだけでも、少しずつ魔力が削られていくのがわかる。


(ここで無駄に消耗するわけにはいかない——)


俺は剣を構え直し、一気にゴブリンの首を狙った。


——が、その瞬間。


「ギィィィ!!」

獣じみた叫び声が背後から響いた。


(しまっ——)

振り向くよりも早く、俺の背中へ衝撃が走る。


「っぐ……!!」


背後から跳びかかってきたゴブリンに、まともに体当たりを食らった。

衝撃でバランスを崩し、そのまま地面に転がる。


(くそっ、後ろにいたのか……!!)

倒れたまま剣を構え直す。すぐに追撃が来ると覚悟したが——


「リアン!伏せて!!」

ティナの叫び声とともに、上空から火球が降り注いだ。


「……っ!」

咄嗟に体を伏せると、俺の真上を熱風が通り抜ける。


「ギギィィ!!」

ゴブリンの断末魔が響いた。


(助かった……!)

顔を上げると、ティナが集会所の屋根からこちらを見下ろしていた。


「危なかったねぇ、リアン!」


「助かった……!」

すぐに立ち上がり、体勢を立て直す。


「リアン大丈夫!?」

エリスがこちらに顔を向けながら言う。


「まだ大丈夫だ!ガルフの援護を頼む!!」

ガルフも傷が目立ってきている、こちらに割く余力はないだろう


「チッ、さっきより増えてきやがった……!!」


視線を入り口に向けると、ガルフとエリスが何体ものゴブリンを相手に奮闘している。


(時間が経つにつれて、ゴブリンがまとまり始めたな……!)


今まではバラバラに逃げてきたやつらだったが、次第に数匹ずつ固まって動くようになってきている。


「ティナ!魔法でまだ打てそうか!?」


「任せて!」


ティナが詠唱を始めるのを見て、俺は素早くガルフ達に向かって走った。



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