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灰の魔導士   作者: toronton
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静寂

目を覚ますと、外はまだ薄暗かった。

窓から吹き込む冷たい風が、寝ぼけた頭を一気に覚ましてくれる。


「……よし」


布団を跳ねのけて起き上がると、部屋の隅に置いてある荷物を確認する。

昨日のうちに準備は済ませておいたから、特に問題はない。


軽く伸びをして宿の共有スペースへ向かうと、すでにエリスとガルフがいた。

ガルフがこんなに早く起きてるとは珍しい。


ガルフはパンをちぎりながら、ぼんやりと外を眺めている。


「おはよう、珍しく早いな」


「ん……あぁ」

ガルフは軽く欠伸をしながら、俺を一瞥した。


「おはよう」

エリスが俺の分の朝食を用意しながら、ふと顔を上げる。


「ありがとう」

俺も軽く朝食を取ることにする。

パンとスープ、それに干し肉。簡素なものだけど、これで十分だ。


そうしているうちに、ティナもやってきた。


「おはよう……」


「ん……おはよう」

ティナはまだ少し眠そうで、椅子に座るなりテーブルに突っ伏した。


「ティナ、昨日遅くまで何かしてたのか?」


「ううん、普通に寝たけど……最近ちょっと疲れが溜まってるのかも」


「大丈夫か?」


「大丈夫だよー……」

ティナは舟を漕ぎながらぼんやりと頷く。


見かねた俺は

「この依頼が終わったらしばらく休みにしようか」

と提案した。


「休み?!……え、いいの?!やったー!!!」

さっきまでとは打って変わって、ティナが勢いよく立ち上がる。


「さっきまでの眠そうな顔はどこ行ったんだよ」


「だって!休みだよ!?嬉しいに決まってるじゃん!」


俺はティナのはしゃぐ姿に少し呆れながら、朝食を食べ進めた。




朝食を終えた俺たちは、それぞれ装備を整え、準備を確認する。

目的地までは半日ほどの行程だ。今日のうちに到着し、明日から本格的に討伐を開始する予定になっている。


「よし、出発するか」


俺が声をかけると、全員が頷き、宿を後にする。


外に出ると、ひんやりとした朝の空気が頬を撫でた。

まだ陽は昇りきらず、町の通りには人影もまばらだ。


「寒い……」

ティナが身震いしながら、マントをぎゅっと抱え込む。


「歩いてればすぐ暖かくなるわよ」


「うぅ、エリスってば冷たい…」


「甘やかすとつけ上がるでしょ」


「ひどーい!」


そんな他愛ないやり取りを交わしながら、俺たちは目的へ向かった。


しばらく歩き続け日が傾きかけてきたところで目的地の村に辿り着いた。


「……静かだな」

ガルフがぽつりと呟く。


「今回の作戦に合わせて、避難済みみたいだしな」

俺も辺りを見渡しながら答える。


本来ならそこに住むはずの人々の気配がまるで感じられないせいか、どこか物寂しさを感じる。


「こういう場所って、なんか妙に落ち着かないよね」

ティナが軽く肩をすくめる。


「不用意に喋らないの。もうゴブリンが潜んでるかもしれないんだから」

エリスが周囲を警戒しながら注意を促す。


確かに、既にゴブリンがいるかもしれない。

今のところ目立った気配はないが、油断は禁物だ。


「まずは村の状況を確認するのが先決だな」

そう言いながら、俺たちは村の中を慎重に散策した。


村を一通り確認したが、今のところゴブリンの姿はない。

ひとまず安全が確保できたことに安堵しつつ、俺たちは今夜の宿を決めることにした。


「広さを考えたら、村の集会所を使うのが良さそうだな」

「そうね。多少壊れてはいるけど、壁も屋根もしっかりしてるわ」


俺たちは集会所へと足を運び、中の様子を確認する。内部は綺麗で一晩過ごすには十分な環境だった。


「よし、ここを拠点にしよう。寝床を作る前に、簡単にでも防衛の準備をしておくか」

「何か仕掛けを作るの?」

ティナが興味深げに俺を見る。


「とりあえず、村の守りを固めるか」


そう俺が言うと、ガルフが頷いた。


「明日になれば、主力部隊がゴブリンの巣を襲撃する。今のうちに出来ることはしておきたいな」


俺たちは手分けして、村の防衛準備を進めた。壊れた柵の補強、見通しの良い場所の確認、そして簡単な罠の設置。夜のうちにゴブリンが来る可能性もあるため、交代で見張りをすることにした。


すべての準備が整った頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。


「よし、これで大体の準備は終わったな」

「お腹すいた……」

ティナがぐったりと座り込む。


「じゃあ、飯にするか」


俺たちは持参した食料を簡単に調理し、明日に備えて英気を養う。

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