裏技2 最初の”裏技”
思ったよりも時間が掛かった第3話です。
「これが神霊樹ピュアツリーか・・・。」
俺達は標識に従って左の道を進み、暫く歩くと、とても巨大な樹の下まで来た。
ゲームの設定ではこの世界が想像されてから、ずっとこの地に存在しているとても神聖な樹木で、ゲーム画面で見た通り、常に薄く輝いており、小さな粒子を放出している。
「・・・凄く大きな樹・・・。それに何だか神々しい雰囲気がする・・・。」
「・・・まぁ、この世界ではもっとも尊い霊樹だからな・・・。」
樹の霊気に当てられてか、呆けた表情で樹を見上げながら呟く有紗に答えると、
「この樹にお兄さんの言う”裏技”があるの?」
「ああ、後はその”裏技”が、この世界でも使えるかどうか何だが・・・。」
「そうなんだ・・・。」
まぁ、使えるかどうかだなんてやってみないと分からないのだから、早速試してみようとしたところで、マンデーがひょこっと歩き出し、そのまま樹の裏側へと向かって行った。
「お、おい、マンデー!?」
「マンデー、え、どこ行くの?」
俺と有紗も、またもやマンデーの後を追いかけたのだが、あれ、マンデー、ひょっとして俺がこれからしようとしている”裏技”を知っているのか?
そんな事を思いながら、後を追いかけると、丁度、樹の完全な反対側になる位置に設置されている小さな社の前でマンデーは一旦座り、俺達が近くまで来ると、社に歩き出し社を触った。
次の瞬間、樹から11個の赤い果実が落ちてきた。
「わぁ、木の実がこんなに落ちてきたって、お兄さんどうしたの?凄く興奮しているみたいだけど?」
「有紗・・・この世界は”裏技”が反映されている事が証明されたぞ!!」
「え?どういう事なの?」
不思議そうに首を傾げる有紗に俺は説明した。
落ちてきた木の実は”ピュアツリーの果実”と言うアイテムで、”アドベンチャーロード”においてこれを使用する事で、HP、MPを含む全てのステータスが+5アップさせてくれるステータスアップアイテムである。
ゲーム本来の設定ではこれはピュアツリーの裏側にある社を調べる事により、1度だけ1つ入手出来ると言うものなのだが、ここがバグにより、入手出来るのは1度だけなのは変わりないのだが、手に入れる事が出来るのは1つではなく11個手に入れる事が出来る様になっている。
しかも使用すると上がるのも+5ではなく、+55となっており、ゲームプレイにおいて入手し11個全てを使う事で、一気に全てのステータスを+605上げる事が出来、レベルを上げなくても、これだけでゲームをクリアする事も出来るぐらいだった。
裏技が通用する事を確認できた俺は、何度もプレイして記憶にしっかり残っている”バグによる裏技”を使って、この世界で優位に立てる事を確信したので、これからの未来を想ってハイテンションになりながら、目の前の11個の”ピュアツリーの果実”を振り分けるか思案した。
とは言え、普通に考えたらマンデーには悪いが、俺と有紗が4つずつ食べて、マンデーは3つで我慢してもらうしかないだろう・・・。
その事を有紗に提案すると、
「・・・うん、それで良いと思うよ。マンデーには悪いけど・・・。」
有紗もマンデーを見ながら同意してくれたので、”ピュアツリーの果実”を分けようとしたところで、マンデーが鳴いた。
何事かと有紗と揃ってマンデーを見ると、マンデーは俺達をジッと少しの間見つめた後、社をペチペチと叩いた。
その動作を何度も繰り返すので、
「おいおい、マンデー、”ピュアツリーの果実”は一度しか出てこないので、もう触っても出てこないぞ。」
「そうらしいよ。マンデーこっちに来て、この果実を食べよう。」
俺達がそう言ってマンデーは、動作を続けるので、有紗がマンデーの元に行き、抱きかかえようとしたところで、マンデーがより激しく社を叩くので、有紗が思わず社に触れた瞬間、俺にとって想定外の事が起きた。
何と再び”ピュアツリーの果実”が11個落ちてきたのである。
え?”ピュアツリーの果実”が手に入るのって1度だけじゃないのか?1人1回って事?
思わず、俺も社に触れると、再び”ピュアツリーの果実”が11個落ちてきた。
『・・・』
思いもよらぬ展開に俺も有紗もしばし無言だったが、そんな俺達などお構いなしにマンデーは美味しそうに”ピュアツリーの果実”を食べ始めた。
そんなマンデーをしばし見続けた後、
「有紗、取り合えずこの”ピュアツリーの果実”11個食べるぞ。これらを11個食べるだけで、これから先がとてもやりやすくなる。」
「あ、うん」
俺と有紗もマンデーに続いて、”ピュアツリーの果実”を食べる事にし、腹も減っていた事もあって、さほど時間を掛ける事もなく、俺は”ピュアツリーの果実”を食べ終えた。
それから、しばらくしてから有紗も完食し終え、マンデーもいつの間にか全て食べ終えていた。
ステータスを確認してみると全てのステータスが605上がっているのが確認出来る。これで俺も有紗もマンデーも、この世界では強者の部類に入るので大抵の敵が出てきても返り討ちに出来る。
取り敢えずは、俺も含めて有紗とマンデーの安全も確保できたと言えるので内心、安堵の息を吐いた。
後は、この世界でどう生きるかだが、記憶している”裏技”はまだまだあるので、ゲーム通り冒険者としてやっていこうと思ったら、十分に大成できるし、普通に生きても、このステータスならば問題なくやっていけるだろう。
その辺は有紗と相談して決めていくとして、まずは北の王都へと向かう事にしよう・・・。
ちなみに食した”ピュアツリーの果実”、大きなサクランボみたいな見た目なのに、食べてみたらバナナに似た味だったので、これはこれでびっくりした。
流石はゲーム世界とは言え異世界ファンタジーだぜ・・・。
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