表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/15

第8話 ファンタジー世界の建築様式



 このエントリーでは、建築物を描写する際にヒントになりそうな事を書いていきます。

 それでは……よろしくどうぞ。



■建築素材


 まずはざっと建築素材を上げていきます。


(1)木材


 ヨーロッパの森林の歴史は複雑な要素が絡み合って、ちょっとかじった位では説明が難しいです。

 各方面で需要に供給が負けた……といったところでしょうか。

 ヨーロッパでは古くから大量の木材を消費したようです。

 それは建築資材だったり、唯一の燃料だったり。

 意外にも都市部の住居はほとんど木造でした。

 また大きな聖堂を建てるとなると、その足場を組むのに森が一つ消えたそうです。

 イギリスでは造船の為に国内の森は綺麗に無くなったそうです。

 ヨーロッパでは中世以前の森と現在の森では全く姿が違うとの事。

 まあ日本でも、戦後でたらめに杉やヒノキが植林されましたけどね。


 さて、小説を書く上で、木材に触れなくてはいけない事があります。

 それは家の柱だったり家具だったり。

 日本では杉やヒノキや桐が定番ですが、ヨーロッパではどんな木材が使われているのでしょうか。


 後述するハーフティンバー様式の柱や梁はオーク材が好まれたようですね。

 オーク材は耐久性に加えて装飾性も高いため、家具やワイン樽、お店のフローリングにもよく使われる高級木材です。

 その他ヨーロッパを代表する四大銘木はマホガニー材・ウォールナット材・アッシュ(タモ)材・そしてオーク材となっています。



(2)日干し煉瓦レンガ


『日干し煉瓦』とは、粘土を方形の型に入れてレンガ状のかたちを作り、日光で乾燥させて作られた物のこと。

 大きさは適当。 建材としての歴史は古いです。

 原始的、貧相なイメージがあり、強度、耐久性もありません。


(3)レンガ


 煉瓦レンガとは、粘土や泥などを型に入れて窯で焼き固めたブロック状の建築材料です。

 ヨーロッパではドイツ方面などでは12世紀くらいから使用がみられる様ですが、イギリスでの普及は1666年に起きたロンドン大火がきっかけ。

 大火は4日間にわたって燃えつづけ、市内に建つ実に85パーセントにあたるおよそ1万3200戸が焼失。

 その結果、木造建築が禁止され、代わりに耐火建材としてレンガが使用され急速に普及していったそう。

 


(4)石材


 ヨーロッパの巨大な歴史的建造物は、ほとんどは石材で造られています。

 加工が容易な石材である石灰岩(lime stone)、砂岩(sand stone)、硬質チョーク石(hard chalk)、燧石(flint)などが使われています。

 特に産出の多い石灰岩が多く使われて様です。

 高級石材で美しい大理石も石灰岩が変性したものです。

 

 ヨーロッパで建物造りは、石工が行うものでした。

 石工|(いしく、せっこう)とは、石材を加工したり、それで建築する人や職業の事です。



(5)セメント・モルタル・コンクリート


 セメントを作ったのは、古代ローマ人という説が有力です。

 石灰岩を焼いて砕いた石灰に砂を練り合わせたモルタルを作ったとされています。

 このモルタルに、ナポリ近郊で取れる火山灰を加えると、強度・耐水性が増したという。

 セメントと砂を水で練ったものをモルタル、さらに砂利を加えたものをコンクリートといいます。



(6)ガラス


 ガラスの誕生は今から五千年以上前に遡るのですが、窓ガラスやガラス器に至っては中世での普及は、ほぼなかったと言えるでしょう。

 ファンタジー小説でも、扱いが難しいところです。

 まあ、存在しなかったわけではないので、とても高価なものとして登場させるのが無難ですね。



(7)ステンドグラス


 ステンドグラスは富が集中するキリスト教会の建築物で、中世の歴史と共に洗練されて行きます。

 12世紀に入ると建築の技術が発展し、大きな教会や聖堂が建てられ、より高く壮麗な窓が可能になり、そこにステンドグラスが飾られます。

 この頃のステンドグラスは、当時ほとんどの人が文字は読めませんから、神の教えの物語を視覚的に表すために飾られていました。



(8)洋瓦


 ヨーロッパの街並みの画像を見ると、オレンジ色の屋根が一面に広がり、とても綺麗ですよね。

 洋瓦は基本的に素焼きなので、粘土を焼いたままの赤褐色やオレンジ色になります。

 フランス瓦が平板なのに対し、スペイン瓦は半丸になっています。



(9)テラコッタ


 テラコッタは、イタリア語でそのまま『焼いた土・素焼き』という意味を持ちます。 

 ツヤがなく、赤褐色や茶色やオレンジ色など暖かみのある色が特徴です。

 上記の洋瓦もテラコッタです。

 日本の土偶や埴輪もテラコッタに分類されます。



(10)スレート


 いっぽう適当な粘土を産出しない地域は、天然石のスレートを屋根に葺くことが多く、その場合黒っぽい屋根になります。

 スレートとは平板の屋根材です。

 現在の日本の住宅では七割ほど人工的に作られた化粧スレートが使われています。

 天然材は粘板岩(玄昌石)を薄く板状に加工したものです。



(11)(かや)


 屋根材に使う草木の総称のことで、具体的にはチガヤ、スゲ、ススキなど。 

 わらふき屋根と勘違いしている人が多いです。

 もちろん藁ふきも無いわけではありませんが……。



(12)西洋漆喰(せいようしっくい) 


 ヨーロッパの街並みで古くから使われていたのが漆喰です。

 石灰や、焼いた消石灰をベースに、砕いた大理石などその風土に応じた混ぜ物を入れた壁材。

 テラコッタの屋根に漆喰の壁が、定番中の定番。



■建築様式


 中世の建築を語る上では、教会の様式の変化が重要ですので、サラッと初めに流しておきます。


(A)ロマネスク様式


 10世紀末くらいから12世紀初めくらいに見られた建築様式。

 ロマネスク様式の天井部分は、石材でできた半円アーチで作られており、必要な石材が多かったため、壁や柱は分厚く、建物自体も背が低いという特徴があります。



(B)ゴシック様式


 ゴシック様式は、12世紀から15世紀頃にかけて北西ヨーロッパで広まった様式です。

 このゴシック様式では、先のロマネスク様式の課題でもあった天井の重さを改善するために、『尖頭型アーチ』と呼ばれる二等辺三角形に近い丸みの天井が発明されました。

 これまで横方向に広がっていた重みを飛び梁で支えて壁を薄くでき、大量の光を取り入れるための大きな窓、そして建物をより高く作ることが可能になりました。

 ゴシック様式の教会の特徴は、壮麗なステンドグラスと、巨大でとげとげした外観です。



(C)ルネサンス様式


 ルネサンスとは『再生』という意味です。

 15〜16世紀にイタリアのフィレンツェを中心に隆盛したもので、ローマの古典文化を復活させ、優美と調和を理想とするものです。

 幾何学図形を基調としたバランスの取れた造形が特徴です。



(D)バロック様式


 バロック様式は16世紀末にイタリアで生まれ、ヨーロッパ各地に普及した様式です。

『自由な動き』を求め『過剰な装飾』がある事も特徴です。



 次にもっと小さな、一般の住宅などの建築を紹介します。


 ファンタジー小説で魔術の乱暴な使用は一考を要するところ。

 筆者的には魔術で『パッ!』と立派な建物や便利な道具が出来てしまうと『????』となってしまいます。



(1)ハーフティンバー


 ヨーロッパの街並みで、誰もが思い浮かべるあの建築様式を『ハーフティンバー』といいます。

 柱やはりの間に斜めに筋交い入れて補強する骨組を数多く外観に露出させ、その間の壁面を石やレンガで埋め、漆喰で仕上げる木造構造です。

 外観表面に木材が半分ほど見えることから、『ハーフティンバー』と名前が付けられています。

 ハーフティンバーは英国のチューダー様式の中のひとつで、ヨーロッパ中に波及して行きました。

 木の組み方もそれぞれの家で異なり、漆喰にカラフルな色に塗装した家も多く、個性的な外観を演出していますね。

 街並みで建物を表現するなら、このハーフティンバーしかないでしょう。



(2)ログハウス


 間口が広く、ゆるやかな切妻屋根のログハウスは現在でも憧れの建物です。

 ローマ時代のイタリアやギリシヤ、中世ヨーロッパの木造技術をさらに洗練させていったアルプスのログハウスは、ドアや窓のまわりに装飾を施すなど、独自のデザインを展開してきました。

 これらのデザインは、すでに14世紀から16世紀には完成されたといわれています。

 ファンタジー小説に登場させても、全く問題ありません。

 森の中の家にはバッチリですネ。



(3)洞窟住居


 洞窟住居は穴倉住居とも呼ばれています。 

 時代とともに変化を遂げ、現在でも住居として利用されているケースもあります。

 洞窟住宅に使われる建築方法は、地下式、埋設式、掘削式、穴倉式があります。

『熱慣性』に優れているのは解るような気がします。

 もちろん中世ヨーロッパにも実在しているので、安心して使えます。

 ドワーフは地下の大規模な集落に住んでいますね。

 


(4)ツリーハウス

 

 生きた樹木を建築上の基礎として建てられた家屋。

『ゲゲゲの鬼太郎』の自宅が正にツリーハウスです。

 巨木の内部が部屋になっているような描写もありますね。

 エルフが住んでいそうな……。

 また巨木の森で、木々の上部を吊り橋で結んで集落を形成しているような絵面も見かけます。

いづれにしてもファンタジー色が強いですね。



(5)テント


 テント生活者としては、まず遊牧民を思い浮かべます。


 突き上げ式テント アラブやイラン

 円錐型テント アメリカインディアン

 ドーム形テント モンゴル


 また冒険者は遠征ではキャンプで簡易的なテントを張ったでしょうし、貿易商も街道脇でテントを張って夜露を凌いだ事でしょう。



(6)バラック小屋


 例えば王都の外縁部や、城塞都市の城壁の外には相当数の貧民が住んでいたはずです。

 まあ、現実世界にしろ、ファンタジー世界にしろ、人間が社会を形成する以上、底辺の層は必ず存在するはずで、おそらく廃材などを利用した粗末な建物に住んでいた事に違いありません。




 中世ヨーロッパでは人口の約九割は農民で、集落を形成して暮らしていました。

 その住居は当然、非常に簡素な造りでした。

 現実は厳しかった……。




最後までお読み下さり、ありがとうございます m(_ _"m)

是非『ブックマークに追加』して頂き、あなたの作品に役立てて頂ければ幸いです。

少しは役にたったよ! といった創作家様がおられましたら

広告下の☆☆☆☆☆評価を5つ黒く塗って応援して頂けますと、

作者はなにより嬉しく励みになり、さらに努力してまいります。

            ヾ(*´∀`*)ノ

 


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ