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第7話 ファンタジー世界の建造物



 アニメやRPGでおなじみなので、視覚的にファンタジー世界の建物を想像する事は容易いでしょう。

 しかしこれを文章に起こすとなると……。

 実に難しいです。

 名称や構造が解らないと書けません。

 今回からそんな悩みの対策を講じていきます。


 中世ヨーロッパでは、人々の生活様式などは愕然とするほど粗末でありましたが、建築技術はかなり高かった事は実に興味深いです。



(1)宮殿・王宮・城


 宮殿(palace)とは、王族、皇族などの君主およびその一族が居住した御殿。

 君主が政務や外国使節との謁見、国家的な儀式などを行う公的な部分と、君主一族が日常生活を行う私的な部分を共有している事が多いです。

『王宮』(royal palace)はそのまま、『王様が住む宮殿』という事になります。


『城』(castle)はもともと軍事的な目的が最優先で、同時に君主などの日常生活の場であったり、政務をとる場所でありました。

 当然、攻撃・防衛拠点としての機能が要求されるので、敵の軍隊の攻撃を阻むための城壁はもちろん、食料や武器の備蓄を行ったり、こちらから攻撃をしかけたりする仕組みが備わっていました。

 しかしヨーロッパ史においては大砲の発達により、古い形式の城は防衛拠点としての役目を果たせなくなっていきます。


 筆者的には『王宮』とは、軍事的機能の要求が低下した比較的平和な時代に築かれた、王家が居住のための建築物というイメージが強いです。

『城』の武骨さは影を潜め、豪華絢爛、権威の象徴としての役割を担っているのでしょう。



(2)城郭都市・城塞都市・城壁都市


 その歴史は古く、近隣の都市|(国家)同士の領土争いは相当なものがあり、城郭都市が建設された大きな理由のひとつであります。

 城壁には重厚な城門が構えられ、堀がうがたれて跳ね橋などが設けられている場合もありました。

『夜間は閉じて入れない!』 なんて設定も多いですね。

 通行税を取られたり、亜人などの差別が有ったりと、何かと騒動が多いところであります。

 城壁の上には一定間隔で望楼が設置され、常に見張りが立っています。

 都市の拡張に従い、二重・三重の城壁が存在する事もあります。

 城攻めに大砲が投入されると、いくつもの城塞都市は陥落していきました。

 大砲対策で星型の様に姿を変え、やがて歴史の中で役割を終えます。


 *豆知識*

 ヨーロッパの都市で、○○ブルク(ドイツ)、○○ブール(フランス)、○○バラ、○○バーグ(イギリス)という語尾がつく地名が多いですが、いずれも『城塞』を持っていた事を意味しています。


 ファンタジー世界に限っては、想定する敵が人外である事も多いでしょう。

『進撃の巨人』が正にそれですね。

 そう言ったケースは作中で一工夫加える必要がありそうです。



(3)砦・要塞


 国境線や海岸線、山頂などの戦略上の要所に設置される戦闘用の建造物。

 当時、国境線は明確に確定していないため、小競り合いも多かった事でしょう。

 規模の小さいものを砦、大規模なものを要塞といいます。

 要塞の場合はやはり大砲などの重装備を連想するので、ファンタジー小説には不向きかもしれません。



(4)教会

 

 現実世界のヨーロッパ史は、キリスト教なくして絶対に語る事は出来ません。

 しかしナーロッパ小説ではキリスト教に類似した宗教は出てきますが、あまり詳しく描写される事はありません。

 まあこれは、我々日本人が宗教に親しみが無いからでしょう。

 筆者的には、ファンタジー小説の中に、出来るだけ宗教を登場させたいと考えています。

 ですからこの後『第10回 ファンタジー世界の宗教』で詳しく取り上げます。



(5)神殿


 神殿とは神の家として造られた建築物。

 あまりにも多種多様であって説明が難しいです。

 廃墟の神殿、海底に沈んだ神殿もよく見かけますね。

 古代ギリシャのパルテノン神殿のイメージが強いです。



(6)塔


 城の一部としては、一般的には見張りを立たせるための高い建造物。

 昼夜を問わず、衛兵の見張りを立たせている。

 それからお姫様の幽閉場所としてもメジャーな建物です。

 カリオストロ城のクラリス姫が正にこのパターン。

 教会の建造物として鐘塔もあります。

 王都では大聖堂の鐘塔の高さを越える建造物は許されない! といった設定もよろしいかと。

 巨大な塔型のダンジョンもゲーム系で登場する事が多いです。

 SAOの浮遊城アインクラッドもこのパターンなのかな⁈



(7)広場


 街の広場には、噴水やベンチなどが設置されていて、周りには露店が出ている風景が見える様です。

 綺麗に石畳が敷かれている方が雰囲気はいいかも。

 王都では、王宮前や大聖堂前には巨大な広場があったりする。

 筆者の作中にも『王宮前広場』がよく使われています。

 定番のデートスポット。



(8)図書館


 ナーロッパワールドで意外なほど存在感を示しているのが図書館です。

『リゼロ』ロズワール邸の『扉渡り』で隠された部屋、ベアトリスが司書の禁書庫。

『本好きの下剋上』での貴族院の図書館。

 また『ドラクエ』や『F・F』でもストーリー中にしばしば登場していますね。

 書物はとても貴重でありましたから、単独の建物の図書館より、王宮や大学内に併設されている様なイメージが合うと思います。

 司書長や司書さんに本を探してもらいましょう。



(9)冒険者ギルド


 筆者も大好きな冒険者ギルド。

 冒険者ギルドは『第9話』で詳しく取り上げます。



(10)宿屋

 

 ファンタジー小説では「ホテル」「旅館」「民宿」などの名詞が使いづらいので、この「宿屋」という名詞に救われています。

 一階の奥には酒場や食堂が併設されているのは常識。

 宿屋は元気なおばちゃん(女将さん)が切り盛りしている事が多いですね。

 獣人族は嫌な目で見られたり、泊めてもらえなかったりします。


 客室は概ね二階か三階にある。

 壁は薄く、隣の喘ぎ声はよく聞こえる。

 安い部屋だと屋根の傾斜に合わせて、天井に勾配がある。

 入り口側が高くて窓側が低い。

 小さな出窓である事が多い。

 ベッドは壁の両側にあるツインの部屋がメイン。

 両側が二段ベッドで四人部屋も。

 安全上客室は、ランプの照明が無難でしょう。


 街道沿いの宿屋は『隊商宿』とも表現できます。

 隊商宿は貿易商達が客層なので、倉庫や馬車庫・馬小屋なども併設されていた事でしょう。

 同意のキャラバンサライと書くとイスラム圏色が強いでしょうか。



(11)酒場


 ここでも問題なのはファンタジー小説ではレストランという名詞が使いづらい事。

 よって酒場は、レストラン・食堂・居酒屋・賭博場・喫茶店など全てを内包した、とても都合のよい名詞であります。

 仲間との出会いの場、作戦会議の場、乾杯の場、食事の場、密談の場、そして突然殴り合いの喧嘩が始まったりします。


 アニメでよく出てくる樽を小さくしたような木製のジョッキ。

 エールをこぼしながら勢いよく「乾杯~!」なんて打ちつけ合うシーンを良く見かけますが、そのジョッキは創作上のモノらしいです。

 リアルな史実の中には存在していません。

 だから筆者の作中では『陶器のビアマグ』と表現しています。



(12)商店


 職業を差別する言葉の中に、「○○屋」という言い方があります。

 差別用語で放送禁止用語らしい。

 一応、物書きの皆様には注意喚起と言う事で!

 八百屋は青果店、魚屋は鮮魚店などに変換するのが良いでしょう。

 まあファンタジー小説では雰囲気が損なわれるので、そのまま使っちゃいますけど……。


 貴族街に近ければ、当然貴族相手の高級店が多いでしょうし、平民のエリアでは生活感あふれる商店が相応しいです。

 ただ、既製服を売る衣服店は存在しなかったようです。

 当時の衣服はすべて、お母さんの手縫いです。

 貴族や金持ち相手の仕立屋は存在していました。


 冒険者相手では、武器屋・防具屋・道具屋・薬屋・買い取り屋などが登場します。



(13)市場


 賑やかな市場だったり、閑散とした市場だったり。

 その街の雰囲気や異国情緒を出したりするのに都合の良い場所です。

 露店が並ぶ市場は、その場の匂いを表現するとよさそうです。

 肉を焼く食欲を誘う匂いだったり、魚介類の生臭い匂いだったり。



(14)噴水


 どうやら人間とは、水がある所に落ち着きを感じる様です。

 中世ヨーロッパの都市では、水道工事の完成記念として広場に華麗な装飾を施した噴水を設置する事が多かったようです。

 まだポンプのない時代には地形的に高い位置にある水源からパイプを通して水を噴き上げさせていました。

 15世紀以降、ヨーロッパにポンプ技術が普及すると高低差の制約がなくなり、庭園には必ず噴水が造られる様になりました。

 自然の摂理に反し、下から吹き上がる噴水は権力の象徴でした。



(15)工房

 

 武器や防具の製作所は鍛冶工房としたほうが良いでしょう。

 レンガ造りの煙突からは煙を吐いているはず。

 鉄を加工するには相当な熱量が必要です。

 工房はそれぞれ独特の汚れや散らかりがあります。

 例えば金属を扱えば、切削すると鉄粉で真っ黒になりますし、掃除の行き届かないところは赤さびてしまいます。

 木工所は木くずで汚れている事でしょう。


 各種工房はその業界のギルドと密接な関係にあります。

 ギルドに加入していないと、商売が出来ないのが普通です。

 師弟関係などは物語の奥行を出しますよね。



(16)貴族の館・屋敷


 ナーロッパファンタジー小説では、王宮と共に描写が必要となる貴族の館。

 悪役令嬢を筆頭に、多彩な貴族令嬢達のマイホームなのだから当然です。

 ここはしっかりと描写したいところ。

 第4回で詳しく書いているのでそちらを参照の事。



(17)平民の住居


 ヨーロッパでの中世までの住居は、部屋は一間だけで中央に炉があり、食事を済ませたら床に家族一同ゴロ寝する生活スタイルでした。

 ルネッサンスに入ってから、ようやく細分化した部屋の形式がとられるようになりました。

 平民の住居といっても、貧富の差や地域差によって全く異なるのは当然です。

 次回『建築様式』で詳しく取り上げます。


(18)道路


 中世・近世ヨーロッパの道路は想像を絶するくらい酷かった事でしょう。

 もちろん同時期の日本であっても同様です。

 石畳を綺麗に敷いて舗装していた道路は、都市や街道の一部に過ぎなかったと思われます。

 

 袋小路 並木道 傷んだ道 獣道 峠道 クランク S字 十字路 五差路 坂道 踏みわけ道 小径  わだち 目貫通り 表通り 裏通り 雪道 街道 田舎道 あぜ道



(19)街路樹


 西欧風の街並みなら、マロニエ(セイヨウトチノキ)やプラタナスの並木道が定番でしょうか。

 夏は木陰を作り、冬は日差しを遮らない落葉樹が良いですね。


*ヨーロッパの樹木

 ヨーロッパブナ・ヨーロッパナラ・リンデ(ヨーロッパボダイジュ)・セイヨウトネリコ・クリ・ネズミモチ・クスノキ・セイヨウイチイ・オーク・エーデルワイス・シラカバ

 ゲッケイジュ・ブドウ・オリーブ・オレンジ



(20)橋


 当然フィールドには川がたくさん流れています。

 橋が無いと馬車の移動が大幅に制限されてしまいますよね。

 立派な石橋を架ける技術はありましたから、描写に問題はありません。

 戦略的にあえて破壊可能な橋にしている事もあるでしょう。

 


(21)上下水道


 ヨーロッパでの上水道の始まりは『ローマの水道』で、山岳地帯の水をローマに運んで飲料水や大浴場などに供給しました。

 山岳伏流水を、水道橋を建設してローマに引いたのです。

 ヨーロッパ史において悔やまれるのは、この上水道技術のロストでしょう。


 中世ヨーロッパの都市部は屎尿を道路にまき散らしながら、一方で上水は地表水を利用していたので、ペストやチフスなどの伝染病が蔓延してしまいました。

 15世紀になって、ようやく伝染病対策として上下水道の整備に取り掛かります。

 それでも三百年ほど改善しませんでしたが……。

 ナーロッパ小説では理由をつけて、早めに上下水道を整備してあげたいところ。

 そうしないと、あなたのヒロインがお風呂も入れなくて可愛そうです。

 まあ、この問題に全く触れない……という作者さんがほとんどですが。



(22)水車小屋・風車小屋

 

 水車はファンタジー世界でも貴重な動力源であると思われます。

 粉ひきや、水をくみ上げる揚水の動力として利用する。

 また鍛冶工房で鍛造などの動力源としても有効でしょう。

 あくまで水資源が豊富なところに限定されますが。

 粉ひき所やパンを焼く窯には税金がかけられたりしています。

 風車は地域が限定され、小説では使いづらそうです。



(23)灯台


 灯台とは、夜は灯光を放ち、船舶に対して航行の安全を図る施設。

 当時は上部で火を焚いただけの簡素な造りだったことでしょう。

 作品に帆船が登場するような場合は、是非登場させたい建造物です。

 孤独な魔導士さんが、船乗りたち安全を願っている……なんて設定もいいかも。


 筆者もたまに観光で灯台に立ち寄りますが、上部に上がると眺めが良いし気持ちいい!

 飛行魔術が使える魔女さんとも相性が良いです。



次回は『ファンタジー世界の建築様式』を見て行きます。







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