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第4話 貴族たちの優雅な生活?



 私たちは貴族の生活を経験した事が残念ながらありません。

 それなのに小説には、描かねばならない……。

 これは結構キツイ作業です。



■『ブルーブラッド』貴族の血は青い!


 貴族たちは当然肉体労働などせず日焼けをしないので、大体皆、静脈が青く浮き出た白い肌をしていました。

 彼らは『自分たちには高貴な血』が流れているとして『青い血の一族』を自称したのです。

 


■貴族はどこに住んでいるの?


 封建制において、貴族は王家から認められた領地に本拠の城や屋敷を構えています。

 力のある貴族は王都に豪華な上屋敷を持っていた事でしょう。

 また避暑などの別荘や、領地巡回のための別邸を有していました。



■貴族の屋敷(館)

 

 屋敷には家族それぞれの寝室のほか、当主の執務室、書斎、書庫、食堂ダイニングルーム、厨房、地下貯蔵庫、応接室サロン談話室(ラウンジ)、パーティーホール、エントランス、テラス、バルコニーなど。

 また敷地内にはメイドなどの使用人の住む宿舎や、穀物倉庫、馬小屋、馬車小屋、家畜小屋など、多種な別棟があった事でしょう。

 当時の使用人はほとんどがかよいではなく、住み込みで働いていたようです。



*家財・インテリアの名称、表現例


 執務机……マホガニーの木目が美しい重厚な執務机。

 椅子……猫足が優雅な曲線を描くサロンチェア・ダイニングチェア・アームチェア

 ソファー……上質な皮製のソファーに着席を促された。

 シャンデリア……鎖を降ろしシャンデリアの蝋燭ろうそくを交換する。

 暖炉……時折薪が弾ける音がする。

 燭台……三連の燭台しょくだいがテーブルを灯す。

 肖像画……壁には歴代当主の肖像画が並んでいる。美しい貴婦人の肖像画。

 本棚……壁の本棚には高価な書物が隙間なく並べられていた。

 チェスト……大きな天蓋が付いた家具。装飾品などの収納場所として使える。

 天蓋……定番のお姫様ベッドは四本の柱に支えられた天蓋てんがいが~。

 ドレッサー……「マーガレット殿下、御髪おぐしを整えましょう」

 呼び鈴……呼び鈴を優しく鳴らし、彼女はメイドを呼んだ。

 紋章旗……最も格式のある応接室にはこの家の紋章旗が誇らしげに飾られていた。

 猫足……いかにも洋式といった猫足のバスタブ。 

 オマル……麗しき貴族令嬢には、必ず侍女がオマルを持って付き従っていたはず……。

 ケーキスタンド……三段式をよく見る。英国色が強いので取扱注意。

 庭園……美しい庭園は当然貴族のステータスである。

 前庭……門から屋敷玄関までに広がる庭。

 パティオ……建築物などで囲まれた中庭。樹木や噴水などの添景物がある。

 ガゼボ……欧風東屋。柱と屋根だけの建物。八角形が多い。令嬢のお茶所。

 トレリス……格子状になった木製の柵。つるバラなどを絡ませるアーチ状のアイアン。

 ロートアイアン……外構(外塀)の上部の鉄柵。鉄棒で組まれた門。職人が作る。

 温室……趣味で温室を持つ貴族もいたようだ。野菜を作るわけではない。



■貴族はどんな生活をしているの?

 

 これがね……真面目な作家さん達を悩ませるのですよ(苦笑)

 忠実に中世ヨーロッパを再現しようとすると、全く物語が書けません……。

 可愛い貴族令嬢のヒロインでさえ食事は手づかみだし、部屋の中でオマルに用を足すし。馬車は無いし、紅茶も無いし、フルコースも無い。

『ナーロッパ』を舞台に繰り広げられる絵面えづらは、ほとんどが近世以降に登場したモノばかりなのですネ。

 ですから以後の文章はあくまでナーロッパワールドに必要な表現だと承知おき下さい。



(1)貴族はどんな食事をしていたの?


 この食事風景でも現実の中世ヨーロッパとナーロッパで、大き過ぎるギャップに直面してしまいます。

 我々は貴族の食事って『豪華なダイニングルームに立派な長いダイニングテーブルがあって、白いテーブルクロスの上に銀のカトラリーやナプキンが丁寧にセットされ、使用人たちが食事やお酒の世話をしてくれる』ってイメージじゃないですか。

 しかしこのような様式が広く普及するのは極々最近なんですね。


 それでは実際の中世ヨーロッパでの食事スタイルはどの様な感じなのよ、と言えばテーブルの上に料理をバーンと初めから並べちゃいます。

 肉料理は貴族のステータスでもありましたから、よく食べられていたようです。

 狩猟の獲物のジビエは貴重で、何であれとても人気がありました。

 野鳥なども何でも食べたようです。

 実際は食肉のほとんどは牛や豚の家畜でした。

 牛は動力として大変貴重ですから、なんらかの理由があった時、食肉にされたのでしょう。

 豚は飼料として豊富などんぐりがあったので、飼育は容易だったようです。

 しかし調理方法はほとんどが丸焼き。

 味付けは入手可能な香辛料のみ。

 おそらく口に入る頃には、冷めてしまって硬かった事でしょう。


 食事は昼と夜の二回だったようです。

 パンは当然、貴族は白パン、農民は黒パンです。

 水はほとんど不衛生で飲めたものではありませんでした。

 このため、麦芽を発酵させてビールやエールを作り、多く飲んでいました。


 そして貴族たちでさえ、テーブルに並んだ料理をナイフで切り、手掴みで食べていました。

 テーブルマナーや美食とは程遠い、とってもワイルドな食生活でした。



 それでどうしましょうか、小説上の貴族の食事風景。

 史実に近づけてダイナミックな食卓を描くか、それとも今風の上品な食事風景を描くか?

 筆者的にはウソと知りつつも、後者を選ぶかな……。



(2)貴族の趣味


 さて、『中世・近世の貴族の趣味はこんなものがありましたよ』なんて紹介しようと思いましたが、趣味なんて人それぞれでしょうし、きっと上げればキリが無いでしょう。

 ですからちょっと違った見方で攻めてみたいと思います。

 貴族たちは特性として流行に敏感であって、ステータスになりそうなモノに飛びつく習性がありました。

 おそらくコレクションには情熱をもって、相当なお金を使ったことでしょう。

 とにかく見せびらかしたい、見栄っ張りの塊なのです。


 また芸術家や音楽家や学者など屋敷に住まわせて保護していました。

 いわゆるパトロンです。

 これも自分たちの知識向上などを目指したものではなく、どちらかと言えば見栄だったと思われます。


 そのほかにあえて具体的な趣味を上げるとすれば、男性は『狩猟』、女性は『刺繍ししゅう』といったところでしょうか。

 封建制度下の貴族たちは、当然軍役を負っていましたから狩猟は趣味と実益を兼ねていた事は間違いないでしょう。


 狩猟は貴族の特権で、そこで得た肉はご馳走になりました。

 領地の農奴たちには、森で獣を狩る事は堅く禁じていました。

 領地に住む獣でさえ、領主の所有物だったからです。

 密猟がバレると重い刑罰が科せられたそうです。



 次はご婦人方の『刺繍』ですが。

 まず裁縫は平民女性のたしなみであって、貴族はやりません。

 貴族のご婦人は刺繍やレース編みです。

 そのなかで紹介したいのが、ヨーロッパのクラシカルレースの一つである『タティングレース』です。

 タティングレースとは一目一目、結び目を繰り返し結う技法です。

 大掛かりな道具は必要なく、シャトルと呼ばれる糸を巻きつけた舟型の道具だけで、美しいレースが編めるそうです。 

 シャトルは小さく持ち運びも可能。

 そのためご婦人方は、馬車での移動時間でもタティングレースを楽しんだとか。


 その他、ナーロッパでは読書が趣味の御令嬢も多いですネ。



■貴族の使用人


 貴族を支える使用人の職種を列挙します。


 筆頭執事・執事長・執事……その家の経済規模に応じてお好みで。セバスチャンが定番。

 家令……執事とほぼ同意。作風に合わせて。

 従者……主人に付き従う人。

 侍女長・侍女筆頭・侍女……貴人の傍仕え。社会的地位は意外と高かった。

 メイド長・メイド頭・メイド……特にナーロッパ小説では重要なポジション。

 乳母……日本では春日局が有名。貴族の母親は自分で赤子におっぱいをあげたりしない。

 家庭教師……貴族の令息・令嬢には家庭教師が先生である。

 料理長・料理人……その家の裕福さによって規模が異なるでしょう。

 御者……馬車の運行を行う者。

 厩番・馬子……(うまやばん)(まご)馬の世話役。

 下僕・従僕……低位の男性使用人。執事もここから始まる。

 農奴……封建社会下での農村のほとんどの生産者階級。土地に縛られていた。

 奴隷……ファンタジー小説にはよく登場するが、最近は人権問題が厳しいので注意。


 騎士団長・騎士……上級貴族は自前の騎士団を抱えているはず。

 衛兵・衛士……平時は屋敷の警備などが仕事か。

 造園技師・庭師……庭園を造る。庭木の手入れをする。



 貴族の生活については、まだまだ書かなくてはいけない事が多そうです。

 そのうち……たぶん。

 次回は貴族の重要なお仕事、社交界について書きます。

 引き続き、よろしくお願いします。








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