無言の絆
2回目の投稿です。
物語を書いていて思いました。
小説やラノベを描いてる人って本当にすごいなと!!
僕には手が届きません。でもいつか届いたらいいなぁなんて。。。
「ねえ、あなた名前なんて言うの?」
ざわざわした教室の中で僕に向けて放たれた声が聞こえた。
「啓介。 灰川啓介だけど。なにか僕に用?」
「いや、特に。できたら君と仲良くなれたらなと思って。」
仲良くなる?この僕が?
無理な話だ。
僕は人をそれなりに避けてきた。
人に興味なんかないし、一人のほうが面白いからだ。
それに、ストレスが全く無いからだ。
「嫌だよ。僕は一人が好きなんだ。君とは最低限のことでしか関わらないよ。」
「そう。分かったわ。じゃあ私の好き勝手にするね。」
彼女は僕に対してそう応えた。
僕は彼女が言った意味を理解できなかったが、あまり深くは考えなかった。
僕は人づきあいが苦手...というよりこっちから願い下げな高校1年生だ。
僕は今入学式を終え、新しい教室、新しい生徒、新しいにおいのする今までとは違う別空間にいる。
中学生までは机がとなり同士とくっついていたが高校生となるとひとつひとつ机は離されているらしい。
僕の席は窓側の一番後ろだ。なんて僥倖だ。
僕は人目につかない席が好きだ。
すぐにその席に座る。
特にやることもないので寝たふりをする。
クラスメイト達もまだ友達を作れていないようで寝たふりをする人もところどころみられたので僕も安心して寝たふりをできる。。
そうして静まり返った教室で少しの時間を経て、静寂を壊すものが訪れた。
「はい、ではホームルームを始めます。」
僕はその声を聞いて重い体を起こす。
あぁ、これからまただるくて辛い日々が始まるんだろうな。と思う傍ら、
そういえば僕の隣の席の人は誰なんだろう?
なんてことを思い立ち、横を一瞥する。
そこには先ほど僕に仲良くなろうと言ってきた人だ。
まあ、顔立ちはかなり良いほうだと思う。
少なくとも今まで見てきた女子たちよりは遥かに美人さんだ。
だからといって深く関わろうとは思わないが。
そうこう思っている間にホームルームは終わり初日の学校は終わったらしい。
さようならの挨拶をしたあとに僕は人混みが嫌いなのでしばらく教室で座って待ってから帰ることにした。
クラスではしばしば友達を作り始めているクラスメイト達の様子がうかがえる。
「え!同じ駅じゃん!明日から一緒に行こ!」
「お前んちこっから近いの?」
「よろしくね~!」
などの声が聞こえてくる。
やっぱり社交的な人はさすがだなと思った。
しかし僕は自分から人付き合いを避けているので羨ましくは思わなかった。
また寝たふりをかます。
それから数分経ったかなくらいに隣の席だった子に耳をふーっとされる。
「ふぇ?!」
と、情けない声を教室中に響き渡らしてしまった。
ほかのクラスメイトたちがこちらを気にしていないことを祈る。
「な、なにをするんだ?」
「いや~、啓介の寝顔をみてたらつい。」
初対面の人にやることじゃないだろと心の中で思った。
それより心臓が少しドキドキしている。脈拍数が多分上がってる。多分じゃないな確実です。
僕の顔は薄く紅潮しているはずだ。
僕は顔の体感温度でどれくらい紅潮しているかが分かる。
いやそんなことどうでもよくて。
雑駁な思考が巡りに巡る。
次の言葉をすぐ考える。
「...」
何も思いつかない。すると、
「啓介、顔赤いよ。もしかして、気に入った?」
ニヤリとした顔でそう言った。
「う、うるさい。眠りの邪魔をするな。」
「でも私、好き勝手するって言ったからねー。今度は一緒に商店街回ろ! あ、ちなみに強制ね!」
ニヒッといった擬音語が見えそうなほどのニヒッだった。
こっちはヒエッである。ヒエッ。
まあ、とくに家に帰ってからやることもないので彼女の要求に従うことにした。
いくら僕といえ、多少のコミュニケーションくらいは取れる。
学校の外。
少し教室で待った甲斐があった。
人がかなり少ない。
ラッキーだ。
まだこのへんのことは把握していないけれど、彼女はどうなのだろうか。
商店街へと向かっていく足を僕たちは緩めず、歩いていく。
...会話がない。
気まずい。
僕はこれが嫌なんだ。
この、何か話さないといけないと思う感じが。
疲れるのだ。
僕は人との交流を避けているが、概ねこれが理由である。
彼女は今何を考えているのだろう。
何を思っているのだろう。
どうせ僕のことをつまんないやつだとか無口で根暗だとか陰キャとか思っているんだろうな。
そう、自分の心に刺さる言葉ばかりが思い浮かぶ。
ーー本当はそう思っていない可能性のほうが高いのに。そういう妄想ばかりが膨張し続ける。
その僕の重い心を全く分かっていなさそうな彼女は
「啓介といるとなんか無言でも心地が良いや。」
と眩しい笑顔で言った。
まるで僕の心を読んだかのような発言で、驚きが隠せない。
初めて心地が良いと言われた気がする。嬉しさが隠せない。
僕は安堵と驚きと嬉しさの混ざったぐちゃぐちゃな顔で彼女の顔を見ていたと思う。
ーー彼女になら、心を開けるかもしれない。
そう思うのに強烈な一手だった。
「ありがとう。僕はまったくもって逆だったけど、君にそう言われて救われた感じがしたよ。」
「えーひどくなーいそれ? まあ、救われたのなら良いか!」
と、また笑顔で言った。
ずっと笑顔だな。
「啓介となら、折り鶴1000輪を無言でも折れそう!」
「それは身体的に辛い。...精神的には楽かも。」
「そうだね」
とクスッと笑った。
「あっ! あそこジンギスカン売ってる! あそこで食べていっていい?!」
「良いよ。ジンギスカン好きなの?」
「うん。大好き!」
そういって、彼女と楽しく話しながらおいしくジンギスカンを食べた。
「ごちそうさまでしたー!」
「ごちそうさまでした。」
「次さ、次さ、海行きたい!」
「行こっか。まだまだ時間はあるし。」
まさか、初日でこれほどまでに素敵な出会いがあるとは思わなかった。
まるでさっきまでの自分が別人だ。
人と関わらないで生きていくつもりが、彼女のたった一言で人生設計が狂わされるとは思わなかった。
人と関わっていく自信が生まれた。
彼女とは上手くやれて行きそうだと心から感じる。
彼女の身勝手さが僕の人生を変えた。
「そういえば、君の名前は何?」
「私? 私の名前は真奈だよ。 灰川真奈。」
実はこの物語、3単語のお題が出されてその3単語から作ったお話です。
つまり、小説やラノベを描くための練習として書きました。
上達していけたらなぁ。