2. Web小説がトレーディングカードゲームであることの証明
皆さんは、「トレーディングカードゲーム」と聞いて何を思い浮かべますか? 触れたこともない方も多いでしょうが、一般的に『トレーディングカード(略称トレカ)として販売されている専用のカードを用いて行うカードゲームを言う。多くは対戦形式の2人プレイである。英語圏では一般的にコレクタブルカードゲーム(Collectible Card Game、略称CCG)とも呼ばれる(Wikipediaより引用)』ものを指します。要はカードを集めて自分のカードたちで他の人のカードと対戦するゲームであると認識していただければ問題ありません。有名なものとして『マジック・ザ・ギャザリング』や『遊☆戯☆王』、『デュエルマスターズ』、『ポケモンカードゲーム』を挙げれば聞いたことがある方もいらっしゃるでしょうか。もしくは小さい頃に触ったことがある方もいらっしゃるかと思います。
ではなぜWeb小説がトレーディングカードゲームなのか。考えてみると以下のとおり、実に多くの共通点があることがわかります。
1. ルールが存在する。
トレーディングカードゲームにとって最も重要なのはルールです。これを知らないとゲームをすることができません。同じように、小説を書くのもルールがあります。正確には小説投稿サイトのルールですが、『小説家になろう』であれば利用規約がそれにあたります。利用規約なんて読んだことがない方も多いと思いますが、利用規約──特に重要なのは第14条の禁止事項ですが──を守らないで投稿された作品は、削除や何かしらの警告の対象になります。ゲームを始める(小説を投稿する)上で最も重要であるルールの存在。これが1点目の共通点です。
2. レギュレーションが存在する。
レギュレーションってなんぞや? と思う方もいらっしゃると思いますが、これはトレーディングカードゲームにおいてカードを集めて自分オリジナルの束(以下、デッキと表記します)を構築する際に、その構築方法について定められた決まりです。ルールと似たような部分もありますが、例えば「○○のカードはデッキに入れてはいけない」とか「××のカードと□□のカードを同時にデッキに入れてはいけない」とか「▷▷のカードはデッキに1枚しか入れてはいけない」といったものです。
そして、トレーディングカードゲームにおいてレギュレーションとルールの大きな違いとして「1つのカードゲームに複数のレギュレーションが存在する場合がある」というものがあります。具体的には、世界的に人気なトレーディングカードゲームである『マジック・ザ・ギャザリング』を例に挙げると、『スタンダード』『パイオニア』『モダン』『レガシー』『ヴィンテージ』のような多種多様なレギュレーションが存在し、それぞれデッキ構築のルールが異なります。これは、小説投稿サイトにおいては投稿時に年齢制限のところにチェックを入れますよね? あれに当たると思っています。年齢制限なしのレギュレーションでは使用不可能だったグロやエロのネタ(カード)がR-18のレギュレーションでは使用することができるといった具合です。
これが2点目の共通点になります。
3. デッキ、プロットの構築の仕方が似ている。
先程も少し触れましたが、トレーディングカードゲームにおける1枚1枚のカードは、Web小説では物語のネタに当たるものだと考えます。それを組み合わせることで、作家は1つの物語の大枠を作り上げるわけですが、その際に入れたいネタを入れて、そのネタとネタの親和性を考えて、設定に無理がないか、読者が読みやすいかどうかを工夫する……といった作業をやると思います(私だけだったらごめんなさい。)。カードゲーマーも同じようなことをやります。「よし、このテーマでデッキを作ろう」「このカードを使ってデッキを組もう」と考えると、そのカードと相性のいいカードを入れて、デッキを上手く回すためのサーチ札(特定のカードをデッキから探してくるカード)、ドロー札(デッキからカードを引く効果を持つカード)を採用して、回しやすいように工夫します。
小説を書いている方、実際に執筆している時よりもプロットやアイデアを考えている時の方が楽しかったりしませんか? 正直カードゲーマーも「このコンボ決まれば気持ちいいだろうなー」と思いながらデッキを組んでいる時が1番楽しいです。
以上が3点目の共通点だと考えます。
4. 明らかに強いカード、ネタが存在する。
一般的な小説の場合は当てはまらないかもしれませんが、Web小説には明らかに読者に人気の『強いネタ』が存在します。具体的には『追放』『ざまぁ』『成り上がり』『悪役令嬢』『婚約破棄』みたいな? ランキングに載っている作品は、カードゲーマー的には「今、トップクラスに強いデッキ(以下、環境デッキと表記します)」だと思っているのですが、その環境デッキには前述したような『強いネタ』、つまり『強いカード』が採用されている場合がほとんどであると思います。
それは何故か? 強いカードを採用した方が強いデッキができるのは当たり前だからです。この点においても、トレーディングカードゲームとWeb小説は似ていると言えるでしょう。
5. 最終的にはプレイヤー、作者の腕前が勝敗を分ける。
さて、トレーディングカードゲームの世界においても、ただ単に強いデッキを作るだけでは勝てません。私も、カードゲームの大会で結果を残しているデッキを丸パクリして大会に出たことがありますが、それだけではなかなか勝てないものです。同じように、Web小説でも「流行りの『強いネタ』をふんだんに取り入れた作品を書いたのに、思ったように評価やブクマが伸びない!」といった経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。原因は単純で、いくら強い要素を取り入れた小説を書こうとしても、作者の腕前が未熟ではランキングに載ることはできません。
イラッとされた方、ごめんなさい。私も経験者ですので自戒の意味も込めて書いています。次のページでその対策方法を紹介しますので、良かったら次も読んでいただけたら幸いです。
以上が、大まかに5つのポイントに分けて述べたトレーディングカードゲームとWeb小説の共通点です。細かいところではまだまだたくさん共通点がありますが、挙げるとキリがないので、この5本柱をもってWeb小説≒トレーディングカードゲームであることの証明とさせていただければと思います。