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13 国外への結婚間近な第三王女と②

「どういうこと?」


 さすがにそれには手を止めて彼女は私の方に向き直ってきた。


「ふうむ」


 私も手を止める。

 さすがにこれはなかなか説明がしづらいのだ。


「クイデ様は兄君の良いところは何処だと思いますか?」

「良いところ?」


 はい、と私はうなづいた。

 正直、今の様子を見てもそうなのだが、セイン王子というひとは元々自分に自信が無いのだ。

 だからこそ、私は彼の自信を付けさせてやる方向に言葉をかけた。


「今はあの悪いところががん、と突きつけられていますから、見つけづらいとは思うのですが」

「それもあるけど…… 私、お兄様とあまり仲良くなかったし」

「仲良く無いというより、私からは無関心に見えましたよ。できるだけ距離を取ろうとしている感じでした」

「やっぱりそう見えていたんだ」


 そう。

 私が色仕掛け要員としてセイン王子に近づいている時、クイデ様はともかく私達の視界に入らない様にしていた。

 そして兄のやっていることを軽蔑して見ている様だった。


「私の色仕掛けに落ちていたのも、彼の認識がおかしかったからです。もし正しい帝国に対する認識があれば、彼は私を好ましくは思っても、あそこまで馬鹿な真似は致しませんでしたよ。せいぜい側妃になってくれ、という程度でしょうね」

「じゃあマリウラはお兄様の何処を誉めたの?」

「何よりあの方は素直ですね」

「素直」

「あと、母君に見捨てられている、という感情がありましたから、ともかく優しい女に弱い」

「あー……」


 それは仕方がない、とばかりに顔を伏せる。


「まあ、それは私も否定できないわ…… だって、私だってあのお母様であっても、それでも振り向いて欲しいと思ったことは小さな頃はよくあったもの」

「クイデ様はいつから、セレジュ様をあきらめたのですか?」

「いつからだったかな。……そう、五つか六つくらいの時かも。いくら探しても探してもお母様が見つからなかったことがあってね。何だか私もやっきになって探していたんだけど、ともかく行く先々でさっきまで居た、あそこで見た、という話は聞くんたけど、どうしても姿が見えなくて」

「それは不思議ですね」

「だけど一度だけ、ちらっと顔を合わせてしまった――んだと思うんたけど、姿を見た! って自分で思った時があったのね。お母様も私に気付いた! って思った瞬間も。だけどそれはほんの僅かで、あっという間にお母様の姿はそこから消えたの。慌ててそこへ走っても、その近くの横道に入ったのか、また見つからなくて」


 そう言えば、宮中には様々な抜け道があるというのを聞いたことがある。


「で、それが八つくらいの時まで何度か続いた訳。で、ある時とうとう判ってしまったのよ。お母様は私を避けてるって。で、駄目だ、って一気に力が抜けて。もうあのひとに何も期待しても駄目なんだ、って思ったら、妙に気持ちがせいせいして」

「セイン様はそこまでではなかったですね」

「そうなの?」


 彼女は驚いた。

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