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13 それぞれのセレジュへの思い

 一方。

 バーデンは例の娼館の女とそれからもずいぶん長く続いていた。

 奴は似ていない、と言ったが、あのセレジュと同じ髪と目の色の取り合わせは帝都ではそう無い。

 帝都に元から住んでする人間はだいたい濃い色の髪と目をしている。

 それは帝国の祖となった部族がそうだったとか、日差しが強い場所に住んでいるとか、理由は色々だ。

 少なくとも彼女の様な色はチェリでは普通でも、ここでは異質な方だ。

 だからどう見ても、バーデンの目当てはそこだとしか俺には思えない。


「なあバーデン、お前、セレジュのこと、どう思っていた?」

「いた? 過去形かよ」

「思っている、んだ」

「無論だ」


 奴は言い切った。


「いつから?」

「最初から。女鞍に文句付ける令嬢っておもしれー、って思ったのが最初。後はもう、やっぱ俺、自分と対等に話せる女が好きだし」

「お姉さんや妹さんとはまるで違うよな」

「あれを見てるから、大概の女は嫌なんだ」


 けっ、と奴は肩を竦めた。


「でも抱きたいとまで思えた?」

「お前はそういうこと、思ったことがないのか?」

「……無い」


 は、と奴は両手を広げた。


「……だったらな、俺とセレジュを結婚させて、お前とは友達、それが一番俺等の間ではいい関係だったんじゃないか?」


 俺は言葉に詰まった。どうなんだよ、と奴はこづいてくる。


「セレジュは俺達とずっと一緒に居たいとは言ってたけど、結婚まではどうかな……」


 たぶん、それどころではなかったんだと思う。

 彼女はあの頃あまりにも忙しすぎた。

 普通の貴族の令嬢が恋やら愛やらを夢見る時間を将棋に費やしていたんだから。

 俺達は勉学やら武術に将棋を加えても、ままだ色恋沙汰を多少なりとも考える時間はあった。


「そりゃ多分、誰かと結婚しなくてはならないから選べ、と言われたらお前か俺だったろうけど」

「だろ? で、お前にその気が無いなら俺でいいだろ?」

「それができていたなら、そうだったら良かっただろうね」


 不服そうな顔で奴は俺を見た。

 だってそうだ。

 それはもう過ぎた夢だ。

 セレジュは手の届かないところに行ってしまった。


「手が届かないから、お前は代わりの女を抱くんだろ?」


 奴は何も言わず、ただ苦そうに笑った。


 親父の方からは、伯爵家の事情が続けて届けられた。

 そして伯爵夫人が死んだ一年後。


「……おい、伯爵まで亡くなったぞ」


 親父は何ってことだ、とばかりに慌てて手紙をよこしてきた。

 同時に、セレジュに二人目の子供が生まれたとも。最初が王子だったが、今度は王女だとも。

 後ろ盾としてどうしたものか、と伯爵家は世代の引き継ぎにあたふたしている、とあった。

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