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22 王、そして王子王女達の対処と護衛騎士への依頼

「これは?」

「夫が、挙動が不安だと言っていた辺りの席に印をつけてみたものです」

「これはいい。だがまだだからすぐに、という訳にもいかないな……」

「甘い匂いは、麻薬常習者特有のものなんですね?」


 ナルーシャは確認のために訊ねた。

 眠らされた女性からは、だらだら流している脂汗がむわっとした匂いを放っていた。


「ふむ」


 国王はその様子と表を見て少し考える。

 そして軽くうなづくとテルガ男爵に向かい。


「其方、男爵と申したな」

「はい。自分はテルガ男爵レヒト、医師を十数年やっております。こっちは我が妻ホルテ。私の医院において看護婦をしております、私の片腕と言っていい女です」

「よし、テルガ男爵、一旦ここに居る者達を座席に着かせる。……スルゲン教授、其方等の作った表の写しを作らせる故、少々貸してくれ」

「は、はい」


 王は半円の中心へと行くと、護衛騎士を呼び寄せた。

 彼等は三つの花の徽章を付けている、すなわち辺境伯令嬢配下のものである。

 その中で最も地位の高い者らしき者が王に近づく。


「ここでは其方達は令嬢の配下ではあると思うが、手を貸してもらえまいか」


 周囲はざわ、とした。

 王が騎士に「命令」ではなく「依頼」をしているのである。


「内容によります」

「一つ。まずこの表の写しを幾枚か作っていただきたい。そしてその席に座っている者の名を正確に記してもらいたい」

「了解いたしました」


 そう言うと、彼は部下に言われたことを命じた。

 王は次に、大広間全体に響き渡る声で、着席を命じる。

 貴族達はのろのろと、それに従う。


「父上、我々には何かできることはありませんか」


 下の二王子が駆け寄ってくる。


「セインは?」

「兄上は昨日のことと昨晩のことが衝撃だったのでしょう。部屋の方で、クイデと話をしております」

「そうだな、今はあれを動かしても貴族達はその声に耳を傾けまい」

「私は、何を致しましょうか。医師の手伝いを?」

「エルデ、とユルシュか。医師の手伝い――そうだな、医師の妻の方を手伝うがいい。クイデは部屋だと言うが?」

「正妃様以下、私の母をはじめとした側妃様方は、下がっております。あと歳若い二人も。皆クイデの側から見た第三側妃様の話に関心がある様です」

「手が足りなくなったら来る様に言う。ここで話されるよりはよかろう」


 そしてミルト、ナギス両王子はテルガ男爵の、エルデ、ユルシュ二王女はホルテの手伝いにと回ることとなった。

 そして護衛騎士の方には、続けて眠らせた者の確認と保護を願った。


「麻酔はどのくらいの時間、効きますか? それによっては、外部から他の医師の要請が必要となりましょう」


 護衛騎士は訊ねる。セインより数歳年上程度の若い者であったが、その口調は落ち着きがあった。

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