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2 仮の裁判所がつくられる

「国王殿()()、だと? 陛下と言わないのか?」


 母の突然の自死に心が動転し、また父親に対するその呼び方にもセインはかっときたのか、バルバラに対して怒鳴る。


「私にとっての陛下という尊称をつけることができるのは、この広大な帝国全体を治めになる皇帝陛下とその御正室の皇后陛下のみ。属国であるこのチェリ王国の国王には、殿下とつけるのが当然でありましょう」

「何のことを…… 言っている?」

「本当におわかりでない様ですね。さて、ではそこの侯爵令嬢、ええと名前は何と言いましたか」

「名前を覚えもできないのですか! マリウラ! ランサム侯爵が娘マリウラですわ」

「ですが、ランサム侯爵には、三年前まで子供の一人も居なかったはず。そして侯爵ご自身は今、ここにいらっしゃらないのですね」

「父上はご病気なのです! ですから娘の私が名代として社交には出ておりましたわ!」

「そうですか」


 そう言うと、バルバラはこう言った。


「長くなりそうですね。皆様椅子をご用意下さいな。そして国王殿下及び王妃殿下、以下側妃様達も皆この場に座っていただきたく思います」


 すると即座に広間の窓際に散らされていた椅子が、その付近に控えていた屈強な男達によって集められた。


「いつの間に……」


 王座から降りてきた国王は、彼等の姿に唖然とした。

 そこに居たのは、制服こそ王宮の警備騎士のものだったが、一部分が異なっていた。

 襟元。

 そこに三種の花を合わせ象った徽章があった。

 おそらく気付いていた者は気付いていたのだろう。

 そして声を上げることはできなかった。

 彼等のすることに逆らうことはすなわち、帝国に逆らうことだからだ。

 彼等の手により、椅子が次々に広間に並べられる。

 第三側妃の遺体もそそくさ、と裏に運ばれていく。

 母上、とセインは声を上げたが、それを騎士達は聞くことはない。

 とりあえずその場の客達は、それぞれ皆その地位に相応しい位置に座ろうとする。

 身分の高い者は前に、そうでないものは後に――それが通常の配置である。

 だが、半円形に近い形に並べられた席となると話は別だ。

 ぽっかり空いた真ん中に、特別に一つ二つ椅子が用意された状態というのは。


「これは…… 裁判所の様だ」


 誰かがつぶやく。


「実際辺境伯令嬢は王家に対する裁判とおっしゃっていた。仕方なかろう……」


 そしてその中で、バルバラの騎士達は、王家の者達に対し、貴方はこちら貴女はこちら、と席を割り振っていた。

 皆それに静かに従っていた。

 静かでないのは二人だけだった。


「おい、何で俺がお前等の命令を聞かなくてはならないんだよ!」

「そうですわ! 私は侯爵令嬢ですのよ! 手を引っ張らないでちょうだい!」


 全体を見つめる位置に、椅子とテーブルを配置したバルバラのもとには、次々に書類が運ばれてくる。

 その胸には、先ほどはペンダントだった帝国の紋章。


「では順番にお話を伺いましょう。まず、特に言いたがっているでしょう、セイン殿。まず貴方の言い分をどうぞ」

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