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鏡界

作者: 只野乙

「今月で何人目だ?」

「次は誰なんだろうな、神隠し」


 またその話か。


 連日ニュースを賑わせている連続神隠し事件はこんな田舎の高校でも、毎日毎日話題になるほどだった。


下野(しもの)くん、ちょといい?」

「え?」


 放課後、後ろの席の女子から突然声が掛かる。クラスで俺に声をかけるやつがまだいたとは。


「えーと、確か(たつみ)さんだっけ?俺に声を掛けて大丈夫?」


 そういって他の連中を見回すが、これといって反応を示すような奴らはいない。あくまでシカトを決め込むつもりらしい。


「うん、大丈夫」

「それで何か用?」


「1つ、あなたに言っておきたいことがあるの」

「何?」


 告白?そんなわけないか、今話しかけられるまで顔もろくに知らなかった相手だ。


「最近『鏡』見た?」

「何で?」

「そう、随分と引っ張られてるのね」

「は?」

「今日の夜にさ、2人で会わない?」

「なぜ?」


 そっと耳元に近付く巽の口元。


「秘密…」


 俺の返事を待つことなく、巽は時間と場所だけ伝えて帰っていった。


「ただいま」


 そう言ったところで返事はない。


「ぅぎャーア!」


 返事がないこともないか。

 今日も母さんは鏡を見ながらブツブツと何かを呟いては時々奇声を上げている。

 父さんも何度か母さんを病院へ連れてっているようだが、一向に症状が良くなる気配はない。


「ちょっと出掛けてくる」

「あ、ぁあッ!」


 家を出た後も奇声は鳴り止まず、家の外まで響いていた。

 巽が指定したのは学校だった。


「待った?」

「いや、別に」


 完全に闇に覆われた学校には、もう残っている生徒もいない。ここには俺と巽の2人きりだ。


「それで秘密って何だよ?」

「ついて来て」


 歩き出す背中を追いながら廊下を進む。


「連続神隠し事件って知ってる?」

「またそれかよ」

「あれ、神隠しじゃないよ」

「は?どういう意味だよ?」 


 嫌な予感がする。全身の毛が逆立つような感覚。


「これ覗いて」


 巽が促した物は、手洗い場の『鏡』だった。


「何で鏡なんて…」

「ほら、何が見える?」

「何も見えないけど…」

「もっと近付いて」

「だから何も見えないって!」

「可笑しいよね、下野(あなた)も映っていないんだもの」

「え?」


「あなたは神隠しに遭ったの」

「何、言ってんだよ!?」

「気付かなかった?私以外、話しかけてくる人、誰もいなかったでしょ?」

「そんな…」

「ドッペルゲンガーは鏡に映らない、人と話せない、扉は開けられる、その人の縁のある場所に現れる」

「何を言って…」

()()()は入れ替わったの」

「そうか…そうだったのか…」

「思い出した?使命を」

「ああ…我々の使命は」

「「人と入れ替わること」」

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