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物理好きの転生

作者: イルソル

あらすじで書いた以上のことはない。どうせ短編だしね。

 自分はいつも通り夜道を歩いていた。極めて一般的な道路であり、木々が配列されている。人々が往来を歩き、道路照明灯が道を照らしていた。


 そして次の瞬間、真っ白な空間にいた。


 これはどういうことなのだろうか。第1候補としては人類によるドッキリである。理由としては調査だろうが、そもそも唐突に真っ白な空間に移動させることなど現時点の人類にできることではない。


 第2候補としては、やはり気絶である。健康優良児だとは言えないので十分に確率は高いが、それでは真っ白な空間にいることが説明できない。一応気絶させられた後に運ばれたという可能性もあるが、それでは寝起きのはずなのに頭がスッキリしている説明がつかない。そもそも自分は明晰夢を見るタイプではないし、何よりも体を抓っても痛みを感じな…あれ?そもそも体がない。


 ということはこれは電脳世界であることが確定したと言っていいのだろうか。いや、選択肢を挙げて徐々に排除する方向で行かねば。でなければ短慮を招いてしまうだろう。


 まず、体がないことからここは物質の存在する世界では無いはずだ。ということはプラズマ化しているのだろうか。いや、それでは意識があることを説明できない。つまり脳を、何かしらの自分の知覚外に存在する機械で再現していることになる。


 もしくは次元が高いということだろうか。だが余剰次元の時空はコンパクト化されているので無意味な疑問だな。話を戻そう。


 現在の技術で見透せる中にそういうことをできる機械はやはり電脳世界しかないだろう。そんな技術はまだ開発されていない。ということはやはり宇宙人だろうか。


 だがもしも宇宙人の行動によって自分が現実世界から瞬時に電脳世界に隔離されたとして、何故だろうか。


 次に考えるべきは自分は本物か、偽物かと言うべきだろう。

本物ということが「自分という人間が構成された物質が基本的に変わっていない」とすると、もしも本物であるならば「自分は現実に存在していて周りの物質全てが消滅した」ということになる。これは電脳世界という結論と矛盾するので却下だ。


 ならば現実をシミュレーションしているのだろうか。だがその場合、体が存在していないとプログラムが複雑になりすぎる。そうするくらいならば脳の型を用意していて、脳の原子構造をコピーし解析してプログラムにデータを入れた方が遥かに簡単だ。おっと、そもそも恐らく人間と違う脳の構造をしているだろうから無意味な仮定だった。ということはやはり、環境含めてシミュレーションしているということだろう。ならば自分の体に触れられないことがいっそう不可解だな。自殺は困ったりするのだろうか。


 結論として、突如宇宙人によって体をスキャン、解析されてプログラム上で動かされているということだろうか。


 理由としてはやはり知的生命体に接触する前準備に安全性を確かめるためだろうか。そうなるとたくさんの人がスキャンされたことになる。まぁどうでもいいか。


 だが、いくら知的生命体と接触してみたいからって、こんなカルダシェフスケールで分類すると、Ⅰ(惑星文明と呼ばれ、その惑星で利用可能なすべてのエネルギーを使用および制御できる文明)未満の我々に接触してくるだろうか。それに、未だに電波という方法で宇宙にメッセージを送り続けている我々のメッセージを受信するような文明があるとしても、それは恐らく1.5程度だろう。いや、それでも人類が他の知的生命体に接触したがっているように、その文明もまた知的生命体に接触したがっているのかもしれない。


 そもそも、現時点で判断するには宇宙人が接触して来たこと以外は考えられないのだから今考えることではないか。


 まず、他の知的生命体と出会った場合にはまず翻訳が必要になる。そしてやはり最初にすり合わせるべきは数字だろう。簡単にすり合わせられるからな。


 だが、意思疎通の方法は問題だな。数字を画像で表示するにしても、相手の宇宙人が光で物質を認識しているか分からない。なんなら、脳で会話しているかもしれない。まぁ、正確性の面からデータという形式でも保存されているだろうから大丈夫だろう。いくら骨董品だとしても。そもそも脳を直接繋ぐのは安全性に問題があるから、文章や会話によるコミュニケーションも残っているだろう。


 まぁ宇宙人が光以外の方法、例えば超音波で会話していたとして、それでは文字に残すことが不可能だから、技術が継承されず、高度な技術が形成されることもないだろう。それに空気の振動や電磁波以外での周囲の認識は、周囲の変化に比べてあまりにも情報伝達が遅いから、進化の過程で絶対に滅ぶだろう。進化の過程がない可能性もあるが、進化がなければ生命は進歩しないのでこの可能性もなし。


 また、前提条件として宇宙人は我々と同じ有機生命体でいいだろう。長期的に見ても隕石がほとんど落ちてこない安全な星に岩石型生命体などがいたとしても文明の発展が遅すぎる。


 宇宙は一様だから物理法則は変わらないはずだし、地球生命に接触してきた知的生命体は電磁波で周囲を認識するタイプでいいだろう。だが、生まれ故郷によっては宇宙人は我々と可視光の範囲が違うだろう。


 また、有機生命体にとって物質の繋がりを破壊するレベルの電磁波は致死的なので、そこで発展した知的生命体もいないだろう。クマムシのような超すごい生命体の可能性もあるが、そもそもそんな星では初期生命が生まれられない。


 最後に光の認識方法だが、やはり認識できる全ての色が存在している状態と、全ての光が存在しない状態の2種類(つまり白と黒)でいいだろう。


 まとめると、白と黒の2色で数字を画像として表示するのがいいだろう。ただし白色と黒色の発光方法は前述の通りで。


 また、2色で数字をとなると、やはり2進数だろう。1進数は距離の認識が難しいし、小数を表せないし、コンストラストがある2進数の方が認識がしやすい。


 数字をすり合わせるための数値としては基準の存在しない比がいいだろう。基準が存在する場合、それは地球専用の数値だから。


 今ぱっと思いつく比はπしか思いつかないが、とりあえず横に真円を書いて…いや横ではそれも数値を表す何かと判断されるかもしれない。物質と物質の間を開けて置いた方がいいだろう。2進数の表し方は最も認識しやすい四角形の黒と四角形の白が並ぶ形とし、そして2進数における小数点の位置は点を表す見やすい記号を入れると良いだろう。これで両者の間にて点という記号の形が共有される。


 次にこの真下に四角ではなく「0」「1」という記号で表した数値を書いておこう。これで「0」「1」という数字も共有されたことになる。


 あとは物質と物質の間を開けて数字を順番に並べよう。先の共有で1番小さい数値が共有されたため、数値の順番が分かるはずだから。


 これで何進数かと、数字全てが共有されたことになる。


 また、表と数式を対にして表すことで数式の表記方法と名称を共有する。


 また、表意文字よりも表音文字の方が単純なため、表音文字を使って数式で表した図形をいちばん簡単な文章で紹介する。これによって簡単な文法がわかるはずだ。あと、主語も。


 また、宇宙の天体の白黒画像で天体の名称を共有しておくことで単語のボキャブラリーも増える。


 また、数式の証明や、証明を文に直したものを共有することでどんどん文法が分かるだろう。


 そして共有した単語しか出てこない文章を相手に大量に渡す。これによって主語と単語や簡単な文法がわかっているため、そこから全ての文法を理解することが出来るだろう。


 これにより終に翻訳辞典が完成、これで宇宙人とコミュニケーションが取れるようになるはず。


 まて、そもそもなぜ自分は体を動かせないんだ。これではコミュニケーションがとれない。もしや自分が実は関わってはいけないものに関わっていて、裏で宇宙人と接触していた国に引き渡されたのだろうか。だがそれならば地球の監獄でもいいはずだ。


 もしや、シミュレーション上で思考している自分の分子の動きを解析して、画面上に思考を出せるようにしているのだろうか。それならば体が動かせないのも納得が行く。思考をさせるためだ。つまり自分はこのまま思考を巡らせている方がいいのだろうか。


 ではそうしようと思ったが、一応πを思い出しておこう。確か3.141592653589793238462643だったかな。いや公式を使って導き出すべきか。収束が早いやつはなんだったかな…


-----------------ザー------------------


 ん?これはそろそろ解析が完了して、意思疎通ができるのだろうか。だがやはり、黒い紙と白いペンか白い紙と黒いペンが欲しい。


 「お前はあまりにも心の声がうるさい。さっさと転生しろ」


 これはどういうことだろうか。宇宙人の作っているゲームの設定の中に、転生者がいたことがある、という設定があって、そのために自分をコピーしたのだろうか。確かにその可能性もある。体がないのは魂とかの魔法的なものがあるゲームなのだろうか。


 もしくはこれが一番心躍る展開なのだが、実は神と呼ばれる現象が現実に存在していて、自分は多次元世界論における別世界へと転生するのだろうか。これはまだ知らない物理法則が存在することを示している一番心躍る展開だ。だが、多次元世界論において、世界の法則や物理定数は世界ごとに違うとされているから、物理法則の探求はやり直しかな。


 よし、用意された世界に転生したら、まず簡単な物理定数を確認しよう。これで一致しなかったら別世界だ。一致したら宇宙人の用意した世界として、街の発展具合を確認しよう。転生者が転生した設定なのだから、恐らく宇宙人の文明から見て少し劣った文明くらいだろうから、これで宇宙人の最低文明レベルがわかる。いくら計算機の出力が良くなったとしても、流石に素粒子レベルでは矛盾が生じているだろう。少なくとも地球での物理法則の理論で予想されて、実験で存在が確認されている素粒子、物質に質量を与えるヒッグス粒子まで存在を確認したい。また、ストレンジレット(陽子、中性子みたいな素粒子でできた物質の一つ。超特殊な状態でしかできないが、表面張力によっては中性子星の外に出ても崩壊しない可能性があり、その場合陽子や中性子をストレンジレットに作り替え星がストレンジレットだけでできたストレンジレット星になる可能性がある)の生成を行おうとすればきっと宇宙人がゲームの中に出張ってくるだろうから、それでもここがゲームの世界だという証明ができるだろう。


 もしも別世界なら1から物理法則の数式を作り直そう。それもまた楽しそうだ。


 そういえば体がある気がする。これはいつの間にか転生していたということだろうか。


 よし、この世界での物理法則の研究を始めよう!!

筆がめっちゃすらすら進んだ。ナンデダロー

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