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ラベンダー9
「先生と呼ばれるのは慣れません」
そう、先生は何度か言いましたが、僕とお父さんは先生と呼ばずにいられませんでした。
お父さんから、あの植物園の先生が来るぞと言われた日。僕はどんなにか喜んだことでしょう。テレビに出てる芸能人、有名な本の作者、僕にとってそんな人達より先生はすごい人でした。植物園にある花、バラもそうですがあの水仙はとても素晴らしいのです。例えば、ルビーの原石を削ることで光らせるように、先生の手で削られた花はさらに輝きだすのです。どうやって、美しさが増すのかはわかりません。肥料でしょうか、水でしょうか。とにかく、どこにある花とも違うのです。先生は魔法使いなのでしょう。
本人に聞いたこともありましたが、
「特別なことはしていませんよ」と言うだけです。
「ただ、人は花の美しさに惹かれるのです。人間にはその手伝いをすることしかできませんよ。」と教えてくれたことがありましたが、あまり意味はわかりませんでした。