ラベンダー8
僕の家は、由緒正しきお貴族様の家系なのだそうです。お爺ちゃんが教えてくれました。貴族は貴族らしく優雅に完璧でなくてはいけない。お爺ちゃんは厳しくてとても怖い人でした。(お爺様と呼ばないと怒られるのですが、今では怒る人もいないのでかまわないでしょう。)その厳しさのおかげで貴族制度がなくなった後も、自力で事業を開拓して成功し、豪邸を売らずに済んだのだそうです。すごい人なのですが、ちょっと窮屈な人に感じました。それは、僕にだけでなく、家族みんながそうでした。特に、後継のお父さんは随分我慢していたらしいのです。お爺ちゃんはお父さんが植物学者の道に進むことを許してくれませんでした。そして、お父さんがこれ以上植物にかまけないよう庭には、樹木を残して花は全て刈ってしまったそうです。広い庭に、点々と松やら杉やらがどんと生えているのは侘び寂びというか、寂しさがありそれはそれで芸術的なのでしょうが。植物園に行くのも、おじいちゃんには内緒でした。
お父さんは、お爺ちゃんが亡くなるとその日のうちに庭を改造し始めました。そして、ずっと憧れていた植物園の先生を招きました。