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ラベンダー3
廃墟のお屋敷は様々な花が咲き乱れています。見頃の藤は池のほとりの藤棚から枝垂れ、その甘い匂いを振りまいていて、すこし吐き気をもよおしました。池には見事な睡蓮が可愛く浮かんでまるで絵画のようです。このお屋敷は、和洋折衷、どんなお花でも綺麗に咲いております。まるで植物園のよう。しかし、廃墟にこんなに綺麗な花が咲くものでしょうか。
しばらくぼうっと花を眺めていると、その爽やかな香りが風にのって漂ってきました。ラベンダーの香りです。花屋さんが言っていたように、ここのラベンダーは絨毯のように一面に青々しく咲いております。それは永遠のように。ずっと咲き続けております。このお屋敷で何があったかわかりません。しかし、花は記憶しております。悠久の時をずっと優雅に眺めております。このお庭の花達は他の花より饒舌に屋敷の記憶を語ってくれるでしょう。