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ラベンダー1
ここはしがない花屋です。
なにも特別なことはございません、お好きなお花で花束をおつくりいたします。
さて、あなたはどんな花を御所望ですか?
お好きな花をお聞かせください。
海辺の小さなお花屋さん。
私は、友達への花束を買いにやってきました。
潮風が香る丘の上に建つここは、外のきらきらとした初夏の様子とは全く違って、しんと静かです。
店内にはお客さんはいません。
白い壁には、四季の花がパステル調に書かれた美しい絵がかけられています。
店内を見渡しました。
お目当ての薔薇はすぐ見つかりました。
口内のように赤くてグロい色をして優雅に咲いています。
僕は少したじろぎました。
この赤さがすごく怖くなりました。
足元から震えがきて、これから行く友達のことを考えるのが辛くなってきます。
ギュッと目を瞑り、心を落ち着かせようとします。
そんな時、爽やかな香りが漂ってきました。
ラベンダーの香りです。
その香りはゆるゆると僕の緊張を解してくれます。
咄嗟にラベンダーへと手を伸ばしました。