真冬の別荘 【月夜譚No.46】
冬の別荘は何処か儚げで、淋しさに満ちている。今は使われない家具に白い布が掛けられ、その上から薄らと埃が積もる。夏はあんなに楽しくて賑やかだったのに、まるで別の場所のようだ。
リュックを下ろした少女は部屋の隅に歩み寄り、冷たいフローリングの上に座り込んだ。窓から見える景色は冬枯れた木々ばかりで、緑はあまりない。黄昏時の森は暗く、じっと見ていると闇に塗り込められた奥深くに吸い込まれそうだ。
少女は寒さに腕を擦り、ふと思い出してクローゼットから毛布を一枚取り出した。元の場所に戻って毛布に包まり、膝を引き寄せる。壁に頭を寄りかからせてぼんやりとしている内に、どんどん日は暮れていく。
暗くなっていく室内を眺めながら、つい先刻のことを思い出していた。怒鳴り声と、やるせない感情と、引くに引けなくなった自身の矜持。怒りに任せてここまで来てしまったが、そこから先は何も考えていなかった。お腹が空いたな、などと思いながら、気づけば眠りに落ちていた。