追い詰められたバルフォード三世
「くそっ・・・!」
雪の降る路地裏に追い詰められたバルフォード三世。
周りには警官が埋め尽くされている!
「年貢の納め時だ。とうとう終わったな鈴木太郎くん」
「その名で呼ぶんじゃねえ!この◯ァッキン野郎!」
「やれやれ、これだからメタラーは悪の象徴なんだよ。もっとも君は悪の根源としてこれから厳しい処罰が下るけどねえ」
ニヤリと吐き気がする笑顔を見せる偉そうな奴。
こいつは私のことを憎悪を持って追い続けてきた刑事だ。
「安心しなよ。君の仲間は私達がやーさーしーく取り押さえたからね。フフフ」
「変わらないゲス野郎でなによりだぜ、クソ刑事がよ」
「フン。何を吐いてもお前の状況は変わりはしない。なんならここで死刑にしてやってもいいんだからな」
「ヘッ!抵抗するメタラーは即射殺でも構わないってか。国家の犬畜生がよ」
「まあ、どちらかといえば君が悶え苦しむ様を見る方が楽しいと思うし。恨むならこの世界を恨むんだな」
「あぁ十分恨み疲れたよ俺様はなあ」
「君と話すと疲れるよホント。あっそうだ最後に君と少し取引がしたくてね」
「あぁ!?」
すると偉そうな刑事は、部下に命令しある物を持ってくるように言った。
なんだ?今更なんだというのだ?
「ほれ」
偉そうな刑事は四角い物体を私の目の前で投げつけた。
「あ?・・・!!!こ・・・これは!?」
「いい表情だなあ。その表情が崩れるのを想像すると笑いが止まらないよお!」
そう、それは1枚のCDだった。
しかし!ただのCDではなかった!
「ジ・・・ジーザスプリーストの伝説のファーストアルバム【ペインキル】のアルバム・・・!」
この世にもはや1枚もないと言われていた!私の運命の出会いである伝説のジーザスプリーストのアルバムだ!
ジーザスプリースト事件後彼らはこの世から忽然と姿を消したのだ。
このCDはジーザスプリーストの最初で最後のアルバムであり、メタル取締法により全て壊され、燃やされたはずなのだ!
ジーザスプリーストはメッセージ代わりにパッケージの右下に小さくアルファベットのFの文字が入っているのだ!
この文字は消したり、燃やしたりしてもまた浮き出る仕様になっており、まるで【魔法】を使っているかのFの文字部分だけが残るのだ!
メタル取締法で処分した分Fの文字だけ大量に残ったというのは周知の事実である。
「いくらでも試してみなよ」
「・・・。」
CDを開封し、パッケージを取り出して右下のFの文字部分を破いて捨てた。
そして確認すると、みるみる内に再生し、Fの文字が浮かび上がるではないか!
「本物だと・・・」
「あぁ。本物だ」
「・・・何が目的だ」
「簡単な取引だ。今すぐそのCDを踏み潰して壊せ」
「なに・・・?」
「踏み絵ならぬ踏みCD?・・・ハハハッ!なんてアホらしいと思わないか!?だが、低俗で悪の根源であるお前にはできるかなあ!?」
「・・・。」
「そのCDを踏み潰したら今日は見逃してやる。明日はどうなるか分かんないけどね。もし拒否するなら、そのまま豚箱行きね。ま、無事に行けたらの話だけどね。フハハッ!」
・・・不幸な時代だ。
本当にどうしようもなくこの世界は腐っている。
メタルゴッドよ本当に申し訳ない。
私はここまでのようだ。
あなたには追いつけただろうか?
超えられただろうか?
私はあなたに、あなた達に出会えて心の底から感謝している。
もう悔いは何一つない。
私はCDを手に取り、偉そうな刑事の前に立つ。
「なに?ほら?早く踏みなよ。鈴木太郎ちゃん?クスクス」
「・・・ろう」
「はい?」
「この◯ァッキン野郎があああああ!!」
私は思いっきり偉そうな刑事に掴みかかろうとしたが!
「ま、予測済みだけどね。全員撃てええ!」
ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!
四方八方から銃声が響く
全てがスローモーションに見えた。
そして、今まで生きてきたメタル人生が蘇る。
辛いことが多かったが、悔いはなかったな。
メタルゴッドよ。ゴッドメタルはあなたと共に・・・
ゴアアアアアアアアアア!
その瞬間凄まじい光がバルフォード三世を覆う!
「「「うわっ!?まぶしいっ!?」」」
バルフォード三世を囲んでいた警官達が、あまりの眩しさに目を覆う!
しばらくして光が収まった時、既にバルフォード三世の姿は消えていた。
「奴はどこだ!?さ、探せえ!」
1枚のCDを残して。
そのCDからはFの文字だけ消えていた。