運命の出会い
「ゲハハ!古くさーい音楽を嗜む◯ソッタレ共よ!この会場は我々【ジーザスプリースト】が乗っ取った!」
「てめえらは高貴であると自分達を傲り!この世界の腐った部分の一部である事に気付いていないのだあ!」
「よって!貴様ら全員に調教してやろう!世界の真実を!悪魔的になぁ〜!」
「おーい!テレビ中継は万全か〜!」
「ヘイッ!問題ありやせん!全世界同時放送ですぜ〜!」
「よ〜し!機材も全部問題ねえなー!?」
「ヘイッ!全てが問題ありやせん!」
「準備整いやした!」
「派手にぶちかましてくだせえ!」
「いくぜ全世界の◯ァッキン野郎ども!新曲【ペインキル】のお披露目だぁ〜!」
「うおーっ!」
「うおーっ!」
「うおーっ!」
「ペ〜〜イン!キ〜ルゥィィィウアアラアア!」
ワアーッワアーッワアーッワアーッワアーッワアーッ
・・・・・・これは!これはなんなんだ!?
この時!鈴木太郎の脳内にすさまじいほどの雷撃が走った!
突如始まったゲリラライブ!というより、側から見るとただの犯罪者集団にしか見えないだろう。
だが!鈴木太郎の目には恐ろしい悪魔が!天使のように微笑んで見えたのだ!
会場は未だに逃げ惑う人がいて、しかし!客席中央にはどこから沸いてきたのか皆、露出度の高い黒い革製の世紀末ファッションに身を包んだ男女200人程が、同じく露出度が高く世紀末な、悪魔の様な化粧をして、モヒカンで!ヒャッハーな5人を囲んでいるのだ!
そしてその5人は、父母に低俗な音楽と散々言われてきたメタルを!ヘヴィメタルを!演奏しているのだ!
身体が、熱い!この旋律とも言えない、ただ高場するこの音の感覚は何なんだ!今までに音楽に対してこんな気持ちになったのは初めてだ!こ・・・この・・・か・・・感覚!
「え・・・エクスタシィ・・・う、うおおおおおおおおおおオオオオオオオアアア!」
私は叫んだ!両手を挙げて叫んだ!身体と音が調和し、一体化するこの感覚は、快感の何者でもない!
これが・・・メタル!
(うまくいったな)
(あぁ、後はあいつ次第だな)
(まあ期待しといてやろう)
(やつが世界を変えてくれるさ)
(頼んだぜ◯ァッキンぼうや!)
5人がアイコンタクトで合図を取る仕草をした時!
「貴様ら!吾輩の会場をよくも・・・!ゆるざんぞおー!」
この会場のオーナーだ!オーナーは怒り狂い我を忘れたかの様に、何故かバイオリン片手に5人に迫る!
「死ねやあ!低俗な野郎ども!」
あろうことか片手に持つバイオリンを思いっきり振りかざしたのだ!
「ぼうやに最後の教えじゃい!」
そしてボーカルのモヒカンが何の抵抗もせずにバイオリンで思い切り頭を叩きつけられたのだ!
そして頭から血を流したモヒカンはこう言った!
「おい・・・ジジイ!これは人を殴るものじゃねえ!こう使うんじゃぁ!」
と、血で濡れたバイオリンを奪い取りあろうことか、弾き始めたのだ!
激しく!激しく!激しく!
「バイオリンが!!!こんなにも熱く弾けることができるなんて・・・ウオオオオオオオオオ!メタル!メタル!ウオオオオオオオオ!」
叫びながら感動している鈴木太郎であった!
「バ・・・馬鹿な!こ・・・この音は!」
オーナーが何故か悶え苦しんでいる!
「おのれえ!う・・・うぶおらっ!」
そして、その場で泡を吐いて気絶したのだ!
「ったく、この授業高くつくぜ・・・いてて」
「おまえがこんなマネするとはな。おもしろかったからいいけどよ」
「◯ァック!いい根性してるぜえ!」
「おい、そろそろ行くぞ」
「ムーヴ!ムーヴ!」
その時!鈴木太郎の後ろから!
「全員動くなあ!警察じゃい!逮捕じゃあ!」
「ガッデム!撃つぞこのやろう!」
大量の警察官や制圧部隊があらわれた!
「もう来やがったな!だか、俺様達は捕まらねえぜえ!野郎どもやっちまいなー!」
ウオオオオオオオオオオオオ!
観客の200人あまりが、警察官や制圧部隊に向かって走り出したのだ!
「シーーーット!こいつら全員捕まえろい!」
「ウワアアアアアア!」
「えっ!?ちょっ!?」
私はその波に飲まれ、巻き込まれる形で世紀末集団と共に御用となったのだ。
そして、最後にモヒカンはこう叫んだ。
「俺様の名はメタルゴッド!ローブ・バルフォード様だあ!アディオス!」
ドカン!と爆発音がステージ側から聞こえた頃には、すでに彼らの姿はいなくなっていた。
この事件は世界に衝撃を与え、後のメタル取締法へと繋がるのである。