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Neo Tokyo Site 01:第一部「Road to Perdition/非法正義」  作者: HasumiChouji
第一章:宿怨 ― Hereditary ―
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(4)

「と、言う事が有って、もう三〇分以上、連絡なし。こっちから連絡しても応答なし。で、正義くんや仁愛ちゃんにGPS持たせてるよね」

 あたしはバイトから帰って来た勇気に、これまでの経緯を説明した。もちろん、あたしと荒木田さんの持ってる「能力」に関する事は省いて。

「ちょっと待て、あいつらの携帯電話(Nフォン)がGPS付のヤツなんで……今調べる……あれ……?」

「どうしたの……? ん? 1つは、ここの近くで……もう1つは……?」

「この近くに表示されてるのは正義だ……。仁愛は……これって……移動中かよ?……推定速度が……時速四〇㎞」

「車を借りられるアテは有るか? 私が運転出来る」

 荒木田さんは、そう言った。

「俺の親父が使ってた車が有ります。今は、近所で共同で使ってますけど……」

「追う。案内してくれ」

「えっ? でも……」

「ここじゃあ、警察はアテにならないし、自警団とやらは、それ以上にアテにならないんだろ? 自分達で何とかするしか無い」

「まぁ、そうだけど……」

「何とか成るのか?」

「……ええっと……多分」

 あたし達は、部屋から出て階段を降りる。まぁ、多分だけど、能力(ちから)だけなら、あたしと荒木田さんで、並のヤクザやチンピラなら何とか出来る筈だ。

「お……おい、何で、ここに居る? あと、友達は無事か?」

 外の階段の途中で出会(でくわ)したのは、パッと見は普通の子供。よくよく見ると、この辺りの子供よりマシな服を着てる子供。

 普通のTシャツにズボンだけど、どう見ても「近所や兄弟のお下りのお下がりの……」みたいな感じの子供用なのに富士の噴火以前に作られたような超々中古品(ビンテージ)じゃない。ピッカピカの新品。

「えっ……と、何で、ここに居るの? ダーク・ファル……」

「まずは、質問に答えろ、友達はどうした? あと、物理空間上では、その名前で呼ぶな」

「連れ去られた……。正義くんの……お姉ちゃんも……」

「誰に?」

「判んない……黒いバンに乗った……どっかの軍隊の戦闘服みたいな迷彩模様の服を着た……。他にも車の中に何人か、子供が居たけど……薬で眠らされてたみたい」

「黒いバンに戦闘服って……まさか……バンや戦闘服に、昔の日本の国旗とか、旧自衛隊や特務憲兵隊のシンボル・マークとか、そんなのが()かれてた?」

「……う……うん」

「英霊顕彰会かよ……」

「何者だ?」

「『九段』の自警団。かなり強力な死霊使いがリーダーで、幹部は神道系の呪術者がほとんど……みたい」

「自警団が子供を誘拐するのか?」

「自警団ってても、半分はヤクザ。資金源に攫った子供を売ってる……。どうも、『()()()()()』の『正統日本政府』とも繋りが有るみたい」

 一応「日本政府」は名乗っているが、わざわざ、頭に「正統」を付けてる時点で「誰からも『正統な日本政府』だ」と見做されてない事だけは自覚してる連中。要はテロ組織か事実上のヤクザ。早い話が、昔、「異常な日本人」だと見做されても仕方ない事を自覚してるヤツほど、「日本を愛してるだけの普通の日本人」だと名乗ってたようなモノだ。

 もちろん、そこと仲良しの「英霊顕彰会」の通称である「靖国神社」も似たようなモノで、「火山灰の下の『本物の靖国神社』の後継組織を自称してるが、『中の人』でさえ、そんな事は信じてない」から、逆に「靖国神社」と云う呼び名が、これ以上無いぐらいの嫌味になっている。

「冗談みたいだな……。おい、お前の親が心配して博多に来てる。今夜一晩は、ここに泊めてもらえ……って良いよな?」

「えっと……うん」

「それと、友達のGPSを何でお前が持ってる?」

「逃げる途中で、ボクにコレを渡してくれた……。これが有れば、万が一の場合でも、正義くんのお兄ちゃんが助けてくれるだろう、って」

 そう言って、その子供は、携帯電話(Nフォン)を見せる。あたしが子供の頃のアニメに出て来た恐竜「タル坊」のデコケースの携帯電話(Nフォン)。確か、正義くんのでデコケースを作ったのは仁愛ちゃん。

「明日、朝一のフェリーで本土に帰れ。そして、親にみっちり怒られろ。あと、友達の部屋から出るな。玄関のドアには内側からチェーンをしておいて、私達が帰って来ても、合言葉が違ってたらチェーンを外すな」

「合言葉?」

「そうだな……『次のいちご狩りは?』『来年の2月』でどうだ?」

「わかった」

 荒木田さんは、テキパキと「香港の金持ちのガキ」らしき子供と、あたし達に指示を出す。

「何か……その……こんな事慣れてるの?」

「今年の4月に福岡の大学に入学するまでは、こんな事には縁が無かった……。けど、福岡に来てから、この手の騷ぎに巻き込まれたのは……これで、3回目か4回目だ」

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