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「あんたらに頼んだのが間違いだった」
俺が「寛永寺僧伽」のフロント企業の事務所に戻って来ると、中から聞こえたのは、俺と同じか少し下ぐらいの年齢の女の子の声だった。
ここ2〜3日の間、関わった女ほぼ全員の「男にクソ女と思われたとして、それで、あたしに何か不利益でも有んの?」って感じの声とは違う、アイドルや萌えアニメの声優だと言われても違和感の無い声。
しかし、言ってるセリフは、声の感じとは逆に、あいつらが言ってもおかしくないモノだった。
「何だと⁉」
「あ……違いますッ‼ あたしがそう思ってんじゃなくて、ウチの総帥からの伝言ですッ‼」
「ああ、そうか。じゃあ、あいつに伝えろ。恩人を殺しちまった罪悪感はテメェの問題だ。自分で何とかしろ。他人も、その『恩人』の子供も巻き込むな、ってな」
「何だ?」
「ああ、帰って来たか、小僧。俺達は、もう、この件から降りる。その強化服の修理が終ったら、さっさと出て行ってくれ」
「おっさんさぁ……ひょっとして、舐めてた『本土』の連中が、実はチート野郎だったんで、ビビってんの?」
スキンヘッドのリーダー格は、溜息を付いた。
「正直に言や、そう云うこった。お前も夢は捨てろ。お前は……お前の親父とは違う」
多分、俺は、今、不機嫌そうな顔をしているんだろう。
「ここで、修理だけはしても良いんだな……。ブッ壊されてないPCを1つと、LANケーブルを1本貸してもらえる? あと、ドライバー一式」
「本土」の今村と望月ってヤツが、そもそも、この「島」に来た、本来の目的……中古の電子部品の即売会は、今日までだった。
そして、俺は、そこで何とか見付けた。あのチビに粉々にされた「水城」の制御コンピュータのCPUとメモリ……それと互換性が有る型式のCPUとメモリを……念の為、予備を含めて複数個。
「で……ところで……こいつ誰?」
俺は、制御コンピュータにCPUとメモリを取り付けながら聞いた。
俺が居ない間に部屋に来ていたのは……大人しそうな感じの、俺より少し年下の眼鏡っ娘。三つ編みにした髪を左肩から垂らし、服装は、顔と合ってないストリートファッション風。夏なのに、ダブダブ気味のデニム地の長袖の上着を着ている。
眼鏡は、どうやら携帯電話を兼ねた眼鏡型携帯端末らしい。
「え……えっと……『薔薇十字魔導師会・神保町ロッジ』の階位1=10・熱心者の更に候補生で、『無属性』の魔術師で……魔術師としての名前は『紫の女司祭』……」
「長ぇよッ」
「ご……ごめんなさい……」
クソ……レナや妹の仁愛があんな性格な上に、ここ何日か、気の強い女とばっかり関わったせいで、逆に、こんな気が弱そうな娘を、どう扱っていいか判んない。
もし、彼女が出来るなら、こんな感じのがいいな〜、とか思ってた通りの娘なのに、現実に目の前に居られると、妙にイラつく。
「で、本名は明かせないんだろ」
「は……はい」
「で、何しに来たの?」
「あの……ウチの総帥から……石川さんの手伝いをしろと……言われて……」




