(9)
「あれ? 勇ちゃんか? それ、親父さんのか? 動くようになったのか?」
一同が暗ぁ〜い雰囲気になってる時に、そう声をかけたのは、近所に住んでる五〇ぐらいのおじさんだった。
「え……ええ……」
「そっか……」
おじさんの顔は妙に明るい。
「でも、一回思いっ切り動けば、それでおしまいみたいっす……」
勇気は、そう答える。
「そりゃ、残念だな……。勇ちゃんの親父さんが生きてた頃みたいに、少しは『秋葉原』もマシになるかと思ったんだが……」
「やめてよ、おじさん……。あたし達、まだ子供だよ。何で子供が町の為に危険な目に遭わなきゃいけないの?」
「でも……誰かがやんなきゃ……。そいつの修理費用なら、何とかなるかも知れねぇぞ」
「えっ?」
「ええ?」
「勇ちゃんの親父さんが生きてた頃を懐しがってるヤツなら、この町に山程居る。勇ちゃんに、その気が有るなら……」
「やめて、せめて、勇気が高専を卒業してから……」
「おい、レナ、勝手に決めるな、お前は、俺のオフクロか?」
「あの……まずは、目先の事から決めない?」
やれやれと云う感じで、望月君がそう言った。その足下には……。
「ええ?」
「何だよ、そいつ?」
リュックサックを背負った日本猿が1匹。腰にはベルトをしていて、そのベルトの左右には短刀がブラ下っている。
「何か有ったようだけど、詳しい事は上で話そう」
声の主は荒木田さんだった。




