(7)
そして、男性陣は勇気の部屋に泊まり、荒木田さんはあたしの部屋に泊まる事になった。
部屋の外からは、荒木田さんと暁君の着替えを洗う洗濯機の音。
「ずっと1人で住んでるのか?」
「勇気のお父さんが生きてた頃は……勇気のお父さんが親代わりだった。それ以降は、ずっと1人」
「気を悪くする質問かもしれないけど……生活費なんかは?」
「国連機関だか外国のNGOだがやってる生活保護と高専の奨学金……あとはバイト」
「就職先は有るのか?」
「『本土』か……さもなくば外国かのどっちかだと思う」
話す事もなくなり、荒木田さんが洗濯物をベランダに干した後、私達は眠りについた。
TVも無い。本は学校の教科書だけ。主に高専で使ってるモバイルPCが一台。何もする事が無い帰ったらシャワー浴びて寝るだけの殺風景な部屋。
夜中に目が覚めて、ふと、枕元の目覚まし時計を見る。日付は八月一六日。
そうだ……。丁度、今日で、一〇年目だ……。
富士山が爆発してから……。
一応の故郷が無くなってから……。
かつての「首都圏」が壊滅してから……。
そして……あたしが「富士山の女神」を名乗る存在に取り憑かれてから……。
この「神様」が、前に取り憑いていた「お姉ちゃん」が殺されてから……。




