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そして、午後4時ごろ、勇気の部屋には、様々なモノが持ち込まれていた。
あたしと勇気が、高専の実習室に3Dプリンタで作った強化服「水城」の装甲。
原チャリ用のヘルメットと作業用の手袋と防塵マスクとミラーグラスの作業用ゴーグルと作業着が各2つ。安全靴足が1つ。ネジその他のホームセンターでも買える「水城」の補修に必要な物品。
「作業着だったら、高専のを持ってるけど……制服代りのヤツ」
「まさか、その作業着、学校名とか入ってないよな?」
「あっ……」
「身元をバラす気か? 当日は、動き易くて、どこでも売ってるような服でやる。下も長ズボンだ。出来れば厚めのヤツ」
そして、小型の無線通信機が4つ。
「えっ? これ、普通の無線機じゃないですよね?」
勇気が無線機を手に取って眺めながら、「本土」から来た2人に聞く。
「ええ、早い話がWi−Fi接続型の小型のIP電話みたいなタイプです」
「それなら、島の端から端まで通じるだろうけど……Wi−Fiはどうするの?」
「明日、本土から来る応援が衛星回線経由のモバイル・ルーターを持って来てくれる事になってます」
続いて、四〇㎝×四〇㎝×二〇㎝ぐらいのドローンが3つ。
「あのさぁ……その……何て言うか……大きくない?」
「小さいと、ちょっとした風でコントロールを失なうんで」
ん……ちょっと待てよ……。
「えっと……去年あたりに、小型ドローンをJRの線路に墜落させて電車を止めた馬鹿な高校生が居た、ってニュース見たんだけど……たしか……久留米のM学園の……」
何故か望月君が今村君の方を見る。
「……こっちでもニュースになってたのか……」
ボソリとつぶやく今村君。
「一応、言っとくと、やらかしたの、こいつじゃなくて、こいつの部活の先輩です」
フォローっぽい事を言う望月君。
どうやら、心当りが有ったようだ。なるほど、そう云う知り合いが入れば、風の影響を気にするよね……。
「じゃあ、後は……コードネームを決めるか……」
荒木田さんがそう言った。
「コードネーム?」
「身元がバレないように、作戦中は本名は使わない」
「作戦?」
「他に何て呼ぶんだよ? 喧嘩か?」
「まぁ、確かに……」
「じゃあ、ボクはアルジュナで、光さんはダーク・ファルコン」
暁君が、そう言った。
「やめろ」
「……な……何、それ?」
「オンラインRPGのキャラ。ボクのキャラが聖戦士のアルジュナで、光さんが闇の気を使う武闘家のダーク・ファルコン」
「だから、やめ……」
「さっさと決めましょ。俺は『ファットマン』で」
続いて望月君。
「何で痩せてんのにデブ?」
「あと、何、さらっとヤバい名前付けてんだよ? 差別用語言ってウキャウキャ喜んでる中学生か、オマエは?」
あたしと今村君が同時にツッコミを入れる。
「デブ……ガリガリ……じゃあ、俺は路地裏の男で」
続いて勇気。
「インドかどっかのラッパーに、そんな名前の居なかった?」
「そうだっけ?」
「じゃあ、俺は『早太郎』で」
今度は今村君。
「早太郎って、何かの昔話に出て来る白犬だろ。能力がバレバレじゃないのか?」
そこに、望月君のツッコミ返し。
「どうせ、変身しないと使えないけど、変身したらバレるような能力なんで関係ない」
「で、レナは?」
「じゃあ、ルチア」
「何それ?」
「あたしのクリスチャン・ネーム」
「クリスチャンだったの?」
「一応、先祖代々の由緒正しいカトリック」
「し……知らなかった」
「まぁ、日曜日に教会に行きたくても、この辺りには無いし」




