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序章

 あの悪夢と悲劇が起きてから、丁度、一〇年目のその日、「東京」の各地で慰霊祭が行なわれている中、「()()」発の()()()()から二〇人近い男女が「()()()」の一角……「()()」と呼ばれている場所に有る港に降り立った。

 かつて存在した「本物の上野」から「本物の有楽町」までは、電車で一〇分かそこらだったらしいが、今では「上野」と「有楽町」を行き来するには、高速船でも片道一時間近くかかる。一般のフェリーであれば、それより数割増しだ。

「おい、魔導師がビジネスマンのコスプレか?」

 フェリーから降りた一団のリーダーらしき三〇代の男は、出迎えたスーツにネクタイに眼鏡の同じ位の年齢の女性にそう言った。

 「上野」から来た一団は、男女比は、およそ6:4、背の低い者も居るが、誰もが服から覗く首や腕には筋肉が付いている。服装は一見するとバラバラだが、地味な色の動き易そうなものである点は共通していた。男女問わず髪は長くても五分刈り、全員が「ネックレス」と呼ぶには、あまりにゴツい「数珠」のようなアクセサリーを首にかけている。

「悪いね。『靖国神社』とは、いずれケリを付けるつもりだが……まだ、表立って動けない事情が有るんでね」

「以前の借りは、これでチャラだと思え。これ以上、俺達は、千代田区(Site01)のゴタゴタに関わる気は()ぇからな」

「お互い、昔が懐しいな。縄張(シマ)も親分子分もややこしい義理も無い、ただのチンピラだった頃が」

「で、場所と目的は?」

「『秋葉原』の若い奴らと、『本土』から来た他所者(よそもの)が、『靖国神社』が誘拐(ぶっさら)った子供(ガキ)どもを取り戻しに行こうとしてるらしい。手助けしてやってくれ。その若い連中が持ってるGPSの識別コードと、そいつらの写真は今送った」

「その若い連中を『靖国神社』の連中の死霊術から守ってやれ、と云う訳か」

「そう云う事」

「で、あんたらの差金だと『靖国神社』にバレないようにしろ、と」

「ああ、もちろんだ」

「本当に、一介のチンピラだった頃が懐しいな。こんなややこしい打算も義理も無しで好きに動けた」

 関東甲信と静岡・愛知の多くの地域が富士山の噴火により壊滅して一〇年。俗に云う「関東難民」の内、ある者達は、被災地に残り、またある者達は「本土」で新しい生活を始めた。

 そして、それ以外の多くは……現在、Site01〜04が存在し、Site05とSite06が建造中の巨大人工浮島(メガフロート)――通称「Neo Tokyo」――に移住した。

 唐津と壱岐の間に有るSite01――通称「千代田区」――は、更に4つの地区に分れていたが、一定の治安が保たれているのは通称「有楽町」地区のみで、残りの3つの地区「秋葉原」「神保町」「九段」は、異能の者達によって、かろうじて「暴力(ちから)による秩序」が維持されている暗黒街(アンダーワールド)と化していた。

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