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2話 寝て起きたら森の中-2

 ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ


 俺はそれに背を向けて、思いっきり走り出した。

 なんだあれ、さすがに着ぐるみとかってレベルじゃない。

 リアルすぎる、口からよだれ垂らしてるしっ。

 持ってた刃物っぽいのから、なんか赤いの垂れてたしっ!

 どっから見ても、なんていうか、その…いわゆるゴブリンだしっ!!


 《ゴギュルァアァッ!》


 なんか鳴いたっ!叫んだっ!

 多分追いかけてきてる!


 「うわ、う、ぁあぁあぁあっ!」


 誰の声だ!俺かっ!

 気付けば俺も叫んでいた。

 草をかき分け、走る。飛び出た枝が肌を切る。

 後ろからどったんどったんと走る音が聞こえている。

 鈍重な音の割に、なんか近づいて来ている気がする。

 ゴブリンって意外と足早いんだねっ!


 「って知るかっ!」


 走りながら悪態を吐く。


 「なんなんだ!なんで最初がゴブリンだよ!悪趣味すぎるだろ、どんな第一モンスター発見だよっ!」


 そこじゃない。キレるところは多分そこじゃない。

 だけどそんなもの知らない。


 《ギュギャッ!》ぶんっ


 また鳴いた!叫んだ!

 というか、さっきから色々叫んでるのは嫌ってくらい聞こえてるけど、何だ今のぶんって “ざく” 音っ!なんか振り回、し、て…。


 「…え?や、ちょ、え…っでぇえぇぁあああっ!?」


 俺の左腕から何かが生えている。

 赤いような赤黒いような、あんまり手入れもしてなさそうな、なんというか、刃が。

 気付けばその場に倒れていた。

 後ろから乱暴に投げられたものが俺に当たった、刺さったその勢いで。

 立ち上がろうとして力が入らなくて、転んで背後を向くような恰好になる。


 痛い。痛い痛い痛い痛い痛い痛いっ!


 左腕がありえない、痛い、左腕ある?あるか、あんのっ!?

 こんな痛いのにっ!


 「ぐ、ぅぅぅう…っ!」


 涙を流しながら顔を上げれば、こちらを見てニタニタとしているゴブリンが立っていた。

 やっと捕まえた獲物。そうとしか見ていないだろう笑み。

 実際、笑っているのかはわからないけれど。

 それでも俺を殺さないのは、武器を投げて、まだ俺の腕にそれが刺さっているから、なのか。

 左腕からは血が流れ続けている。

 それを見ていたゴブリンがまたニタッと笑って、後退りをした。

 しかし少し離れたところで止まると、その辺りをウロウロとし始める。


 「ぎ…っ…?」


 痛みに声が漏れそうになるのをなんとか抑えながら見ていると、なんとなく、わかってしまった。


 「…っ…そう、か…」


 こいつは待っている。

 わざわざ労力を使わなくても、俺は死ぬ。

 血が流れ、獲物はいずれ死ぬ。

 それをこいつは待っている。


 「い…」


 嫌だ。タガが外れかけている。

 叫ぶ。叫びたい。泣きわめきたい。

 多分小便も漏れてる。


 「いや、だ…っ」


 嫌だ。こいつのせいで死ぬのは。

 こいつの為に死ぬのは。

 こいつに殺されてやるのは。


 『え、なんで死にそうなの?』


 こんな奴に……は?

 突然、頭の中に声が響いた。

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