1話 寝て起きたら森の中-1
「…や、これどうするよ」
10分ほど足元の草を抜いてみたり、近くの木を触ってみたり、空を見てみたり。
もしかしたら誰かのドッキリかも、とか思ってその場で何かしらウロウロしたりしてみたけれど、聞こえるのは風で揺れる木の枝の音。
見えるのは青い空、緑の木々。鳥の声…は聞こえないか。
だからと言って、誰かの声が聞こえるわけでもなく。
さっさと帰りたいけど、ここがどこかわからない。
軽くイライラもしてきたけれど、どうしようもない。
「あぁあっ!」
とりあえずイライラを声に出してから歩き出す。
方角?知るかそんなもん。
とりあえず町にでもたどり着けばなんとかなるだろ。いくら森ったって、自分がここにいるってことはここに来れたってことだ。
幸い、うっそうとしているわけでもない。日もまだ高い。
理由は全くわからないが誰かに誘拐されて放置された。そんな最悪の予感も、考えたくなくても頭をよぎる。でも、それならそれで余計になんとか、人のいる場所まで行かなきゃならない。
無理やりでも鼻歌なんて歌いながら、歩きやすそうな地面を辿って歩き出す。
「ったく…何時だ、って…時計も携帯もない。マジかよ…」
今日は学校休み、というかサボりになるなこれ。学校に行っていないことが分かれば、もしかしたら捜索願とか出されるのか。それはそれでじいちゃん達に迷惑かけるな。
そんなことを考えながら、がさがさと歩を進める。
―――ャ
「ん?」
しばらく歩いていると、何かが聞こえた気がした。
立ち止まって耳を澄ませてみる。
――ギギャ
ドクン
心臓が大きく震えたのを感じる。とてつもなく嫌な感じがした。
動物の鳴き声のような、子供の喚き声のような。
もしくは、
―ギギャァァアアッ!
「…っ!」
怪物のような。
テレビやゲーム、アニメなどでしか聞いたことがないような叫び声。
しかもそれが徐々に近づいてくる。がさがさと草木がこすれる音もする。なのに動けない。もしかして人かもしれない、なんて思えるわけもないのに動けない。
そして…
「…なんだ、コイツ」
テレビやゲーム、アニメなどでしか見たことのない、モンスターがそこにいた。