現代病床雨月物語 第2話 「聖母マリアの出現」 秋山 雪舟(作)
私は白血球減少症のまま1年以上が経過しても何の体の変調もなくただ少し疲れるのは「加齢」の為だろうと思っていました。この間に、骨髄穿刺を3回していますが細胞の目立った変化は認められず。経過観察の受診と感染予防の薬の処方を受けていました。
そして2016年8月の受診時に血小板の数値が5万以下に下がり始めました。担当の医師から「秋山さん血小板が下がってきたので一度、首より下の全身のCT検査をしましょう。」ということになりました。
CT検査の結果について担当医師からは「左脇下に大きくなったリンパ節があるのでそれを摘出して癌細胞であるか検査します。私は、血液内科ですので手術は外科のA医師にしていただきます。」
手術は、9月に決まり3日間の入院でリンパ節の摘出をすることになりました。手術は入院した翌日の午後からだったと記憶しています。手術は全身麻酔でおこなわれたために手術台に寝かされるとすぐに意識がなくなりました。次に意識を取り戻したのは病室のベッドでした。その時、今までに体験したことのない体験を目にしました。そのとき私のベッドの横には妻が付き添いで椅子に座っていました。
私は意識を取り戻すとすぐに私の足元前方の上空に「『聖母マリア』がいる」と声を出して手術した側の左手でその方向を指さしながら自然と涙を流しました。妻は、そんな私をみて「キョトン」としていました。まだ麻酔が残っていると思っていたのです。
私は、『聖母マリア』を見た時に強いテレパシーのようなメッセージを受け取ったように感じました。それは『聖母マリア』の抱いている赤ちゃんの顔がイエス・キリストであり私ではないので私は天国に行けないし(死なない)そしてリンパ節も癌ではないと悟りました。
『聖母マリア』が現れたその日の晩は、手術も成功していたので妻も自宅に帰っていました。私は手術した左脇が痛くて寝ているようないないような夜を過ごしていました。そうすると深夜ごろ「ニセの聖母マリア」が現れました。なぜニセと判断したかと申しますと、初めの聖母マリアは柔らかい光に包まれ優しく光っていました。「ニセの聖母マリア」は衣装こそ同じですが背が低く、何よりもイエスを抱いていなかったからです。また光に包まれていなくてただ両眼の目だけが光っていました。「ニセの聖母マリア」は、私のベッドの足元側に立ち私をものすごい形相で睨み病室を出て行きました。そして病院の廊下に待たした男性の老人を引き連れて消えました。私は、あれは『死神』だと思いました。ほどなくして、私の摘出したリンパ節は癌ではないと医師から報告をうけました。