第6話
なんか終わり方がおかしいけど許してね!
魔剣精製・・・全身の魔力エネルギーを使い、魔剣を作る。自分の魔力エネルギーで出来る魔剣なのでとても手に馴染む。
『魔剣精製!!』
俺はスキルの内容を確認して、スキル名を叫ぶ。
全身の魔力エネルギーと言うエネルギーを使って魔剣を作る。
何処と無く、脱力感が生まれ、右手の近くに光の粒子が集まる。
集まった粒子は剣の形に姿を変え、一瞬目が眩むほどの光を放つ。
『ダークアクアオーラ』
何故かそう言う名が出てきた。
剣の形は長剣。色は水色、だが角度を変えてみれば黒色にも見える。魔剣精製の説明に書いてある通り、手に馴染み、重さも真竹の竹刀と同じ重過ぎず、軽すぎず、丁度いい重さだった。
『おお〜上手く出来たようだね』
「ああ、すごいな……こんなの日本では握るどころか、見ることすらないからな……」
『ガァァァァァァ!』
「『!?』」
大きな鳴き声が、すぐ近くまで竜が襲って来ているのを物語っている。
俺は強く剣を握る。
『大丈夫だよ、自分を信じて』
エキナからエールを送ってもらう。
そんな些細な応援が、今の俺には勇気をもらえた。
竜との距離……500mを切っていた。
(あれ?どうして見えないのに分かるんだ?)
竜との距離が分かる理由は気配察知のおかげだった。
『アユム君。竜との距離はもう迫ってる。魔法とかも使い方は分からないだろうけど、使えるものはみんな使いなよ……』
「ああ、分かってるよ。使えるものはなんでも使う」
俺は唯一の武器、『ダークアクアオーラ』を構え竜が来るのを待つ。
風も森も竜を恐れているのか音はしなかった。するのは竜が迫ってくる地響きだけだった。
「来る!」
『ガァァァァァァ!』
さっきは驚きすぎてよく見れなかったが、竜の大きさは40mと言ったところ。
牙は野獣のような、そこら辺の化け物など何もかも噛み砕くような牙。
爪は大きく、前足、後ろ足も太く、とても剣では斬れるような足では無かった。
もはや驚き、驚愕、恐怖、畏怖の感情しか湧かないだろう。
『アユム君!突っ立てると危ないよ!』
俺はエキナにそう言われ、全力疾走で背中に回り込む。
俺がさっきまで立っていた場所は竜の吐くブレスによって跡形もなく、チリとなっていた。
「危ねぇ……」
『よそ見してると余計ね!前!前!』
正面を見ると、巨大な木があった。
「おっと!ぶつかるところだった……」
『本当に……戦闘してるんだから……竜が動き出したよ!』
竜は『ドシン!ドシン!』と1歩1歩音を立てながらこちらに迫ってくる。
『アユム君!肉体強化と言うんだ!』
『肉体強化!!』
するとだんだん体が軽くなり、体が動きやすくなる。これが魔法と言うものだろうか?
肉体強化・・・全身を魔力エネルギーで包み込み、身体能力を最大限引き出す。歩の場合、魔力支配と言うユニークスキルによって最大限引き出せている。魔法の1種。
『アユム君!とりあえず斬りまくれ〜!』
「わかってるよ!」
適当に相槌を打ちながら竜に接近する。
襲ってくる竜には負け犬の遠吠え程度にしか考えてないだろう。
確かにアユムは竹刀を振り回したことはあるが、剣はない。
長剣と竹刀では勝手が違うため、ただただふるだけしかない。
「はぁぁぁあ!」
気合いを入れて竜の腕を切り落とそうとする。下手な剣の使い方では切り落とせない。
そう、普通の剣を使っていたのならばアユムはその状態だった。普通の剣を使っていたのなら……
「あれ?なんか体が勝手に動く……」
『相当の手練のような動きをしてましたよ……』
『そうじゃの〜この体ならこれが限界かの〜もっと上手くわっちを振りたいなら剣術Lv.10の域から出るべきじゃの〜』
そう、アユムの振っている剣は魔剣。
魔剣『ダークアクアオーラ』なのだ。
「グァァァァ!」
激水のような追い打ちが竜の切り口から襲いかかる。
そしてアユム、エキナは違和感に気づく。
「『お前誰!?』」
『わっちは『ダークアクアオーラ』お主が作り出した魔剣じゃよ』
「『ええーーっ!?』」
『ほれほれ、無駄口をたたいておる暇があるなら手を動かせ、主よ。あやつは待つ気などゼロのようじゃぞ?』
「『(なんでそんな喋り方なの?)』」
様々な疑問を抱き抱えながら、長剣を構える。
竜は長年傷が無かった体に傷が入り、激怒している。
「じゃあ頼みますよ、魔剣『ダークアクアオーラ』さん」
『うむ、まかせれたのじゃ。』
魔剣を竜に向け、構える。
竜も魔剣が脅威と理解したのか、目付きが変わる。
竜と睨み合い、沈黙状態が数秒続く。
先に動き出したのは、こっち。
肉体強化で強化された、足で地面を蹴る。
蹴ったあとの地面には小さなクレーターが出来ていた。
ものすごい力で、地面を蹴ったため、竜との距離は一瞬で縮まる。
魔剣『ダークアクアオーラ』が己の意思で竜に斬り掛かる。
勿論真っ向からの斬りかかりを受けるような竜ではない。
『ダークアクアオーラ』の斬撃を竜の爪が抑える。
『キィィン!』
金属同士がぶつかり合うような音が辺りに響く。
その音が、竜の爪の硬さを物語っていた。
「どう……するんだよ!」
力の押し合いで負けるのは目に見えている。
そのため1回弾いて、距離を取る。
『ほう。そのぐらいは出来るのじゃな』
「剣道……ちょっとだけ剣振ってたから……な!」
会話中も、竜は距離を詰めて、俺の体を切り刻もうと、爪を振ってくる。
『しっかしの〜肉体強化以外魔法が使えんのかの〜』
「まずどういうものかすら知らねぇ………よ!」
会話しながらも的確に竜の爪を弾けていれるのは『ダークアクアオーラ』のおかげであろう。
竜の攻撃が止むことはなく弾きながらも頭を動かす。
『お主!魔剣術があるではないか!?』
「なんだそれ?強いのか?」
呆れたようなため息が『ダークアクアオーラ』から聞こえる。
『魔剣術とは、魔剣が技を使うために必要なスキルなんじゃが、人には覚えることはできんと思っとったんじゃ。久々の本気出すとするかの〜』
魔剣術・・・魔剣本来の力を全開まで発揮する。なお、人間では魔力エネルギーが足らないためまず覚えることは不可能である。
例え覚えたとしても、使用中にかかる不可のせいで人間の肉体では耐えることは不可能である。
「とりあえずあいつ、やれそうか?」
『これがあるならまず間違いなく、でもお主が耐えられるか心配になってくるの〜』
「どうせこのままじゃあ拉致があかね〜よ!」
実際問題、この状況がしばらく続けばまず間違いなく死ぬのは俺だ。
ならかけれるならかけるべきだ。
「『魔剣術!!』」
魔剣が光り輝く。
作った時よりも、数倍数十倍と光り輝く。
その光に、視覚を失い竜も俺も身動きが取れない。
だが俺の体には確かに作った時と同じような、脱力感があった。
『やっぱりこの状態が最高じゃの〜!』
出来上がった魔剣は水色の刃の所に、黒色のオーラを纏い、何処か禍々しく、近寄り難い気配がする。
「これでなんとかなるんだろうな………」
『もちろんじゃ。さて、後はわっちに体を預けよ!』
俺は体の力を抜いて、『ダークアクアオーラ』を構える。
すると体が勝手に竜に斬り掛かる。
一瞬だった。
自分でもわからないほどの……一瞬だ。
気づいたら竜の前足2本を同時に切り落としていた。
その力は人知を超えていた。
『ふむ。まあ、上々と言ったところかの〜』
これで上々と言われればこれより上が恐ろしく感じるが自分が使うとなれば何処か気持ちよかったので楽しみでもある。
『さて、主よ!一気に決めようぞ!』
「ああ!頼んだぜ!アクアオーラ!」
瀕死に前足を失った竜だったが、戦意は消えていないようで、まだ俺を睨んでいる。
「さあ!行くぞトカゲ野郎!」
『力を持つと一気に強気になるのね………』
「うぐっ」
『やるのはワシじゃぞ?主殿』
「ぐはぁ!」
「グルァァァァ!」
「うわっっと!」
『さて茶番はこれくらいにしようかのう』
俺と竜は真剣な目で睨み合う。