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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第2章「朱雀の位とお助け猫」
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「初出勤」

「おい孔弌君、朝食にしようではないか」

「ん……誰……」

 確か今日から夏休みだよね……もう少し寝ててもいいはず。

『孔弌』

「ん、何……」

『起きろ』


 とたん、体が勝手に動き出して

「え、あれ、何これ……ちょっと」

ベッドの上に立ち上がっている僕。

「うははは、ちょっとした魔法だよ。ほら、天奈君はもう居間のほうにいるぞ」

「あれ、リュウ……?」

 ん? リュウって誰だっけ?


「なんだい? まだ寝ぼけているのか君は」

 リュウ、天奈、……。

「あっ、そうか。そうだ! 忘れてた!」

 いやぁ、昨日の出来事すっかり頭から飛んでた。

「君、その、バカなんだね……」

 僕の顔から考えを読み取ったか、リュウが呆れる。





「孔弌、お寝坊」

 リュウの言ったとおりテンちゃんは既に食堂にきていた。

「テンちゃん、起こしてくれてもよかったのに」

 そうしてくれてれば、あんな意味不明な起こされ方しないですんだのに。


「孔弌気持ちよさそうだったから」

 そっか、気を遣ってくれたんだね。

「それにいいものも見れたから……」

 いいもの? 日の出でも見たんだろうか。いや、それは流石に早すぎるからないか。

 そういえば僕は昔、日の出を見るために一日中起きてたことあったっけ。


「きぬぎぬ、か」

 リュウが意味深な顔でこちらを見つめている。

 きぬぎぬってどういう意味っすか? わかる人誰か教えて。

「で、今朝は何を食べるんだい?」

 リュウは早く飯を持ってこいというように椅子に座って料理が出てくるのを待っている。

 ていうかその襟かけみたいなのどこから出してきた。


「そんな事どうでもいいから、朝食はまだかい?」

「ん~、ラーメンしかないんだけど」

 棚を見てみるとインスタントのラーメンがあるだけだ。

「何? 君は自炊とかはしていないのかい?」

「あ、二年前くらいまではしてたんだけど、最近は何かめんどくさくなって」

 一度楽を覚えるとどうもね。


「あのね、食生活にはもう少し気を遣いたまえ」

「ファーストフード店に入り浸ってた神様には言われたくないな」

「問題ないさ。僕たちは気さえ取り込めれば何を食べたって構わないからね」

 なんだよ、それ……。超便利そう!

 手早くご飯を用意して机に並べる。


「そういえば、ここでご飯を食べるのって久々かも」

 普段は自分の部屋で食べてるからなぁ。

「こうやってここでご飯を食べるのって僕のささやかな夢だったんだ」

「……昨日ボクとここで食べたよ?」

「あ……」

 そういえばそうだった。

「えっと、若年健忘症っと……」

「何それ!? 何メモってるの!? ねぇ?」

 リュウが手帳にペンを走らせる。絶対よくない事書いてるよね!?


「さって、腹ごしらえもすんだし。そろそろ行こうか」

「ねぇ、何メモってたの?」

「さぁてね。……よし、早速行くか君達」

「行くってどこに?」

 ていうかまだ僕もテンちゃんもご飯食べ終わってないんだけど。


「君はバカか? もちろん式神捜しに決まっているじゃないか!」

 あぁそういえば昨日そんな話もしてたなぁ。

「それって街のパトロールをするってこと?」

 この炎天下の中……。

「いや、そのつもりだったんだけど、たった今連絡がきた」

「連絡?」


「あぁ、図書館の前で式神らしき者が悪事を働こうとしているらしい」

 携帯も何もないのにどうやって連絡とってるんだろ。

「奴らははるか昔この国を恐怖で包んだ恐ろしい奴らだ。早く行って捕えなければ大変な事になってしまう。急ぐんだ諸君!」

 言うや否やリュウは飛び出していった。

「あ、待ってよ! 僕まだ食べ終わってないのに」

 くそ、まだ半分ぐらい残ってるけど仕方ないか……。

「もうしょうがない、行こうテンちゃん」

「うん」





 僕たちもリュウからやや遅れてあとを追うように家を出た。

 そして少し行ったところですぐにリュウに追いついた。

 あんなところで座って何してるんだろ。まさかまたゴミ漁ってるのか。

「ハァハァ、もう、動けない」

「えぇぇぇえ!? まだ家から50mぐらいしか走ってないよね?」

 そこまですごい速度で走ってなかったと思うんだけど。

 なんでもう息切れしてるかな……。





「ハァハァ……」

 どうして、僕が、リュウを、おぶらないといけないの……。

「ほらほらぁっ! 早くいかないと町が軽く焦土にされちゃうぞっ!」

 くそ、かついで走ってる僕の身も少しは考えてよ。

 全く人使いの荒い神様だ。


「よし、図書館前というとこの辺りか……」

「ゼー、ゼー……ハァハァ……」

「天奈君この辺りで仲間の気配は感じるかい?」

「あっち」

「よし、行くぞ」

 ちょっ、ちょっと待ってよ休ませてよ。

 その言葉を発する前にリュウと天ちゃんは走って行ってしまった。

 だーもう! 仕方ない。僕も後を追いかける。


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