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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第1章「天后の位と近所一のバカ」
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「怪しい男(ゴミの臭い」

 というわけで彷徨うように街に出かけた。

 フラフラと神社の前を通りかかると

「何かあったのかなぁ」

 パトカーが止まっている上に、"まさに野次馬"みたいな方々が群がっている。

 よし、負けずに僕も野次馬として群がってやる……!

 ……だめだ、人の壁がすご過ぎてとてもじゃないけどフロンティアに到達できそうもない。

「すいません、何かあったんですか?」

 仕方ないので、状況把握のために人のよさそうなおばさんに話しかけてみる。


「それがね、今朝神社で爆発があったらしいのよ」

「爆発?」

「うん、どうにも原因がわからないらしくて、なんだか物騒よね」

 たしかに、もし誰かの仕業だったらすごい物騒だなぁ。

 でも、そうだとしたら何で神社なんて爆破したんだろ。

 神社だから宗教的対立ってやつかなぁ。

 とにかく、今は中の様子を見に行くのは難しそうだ。しょうがない、また今度改めて来てみよう。


「そうだなぁ、公園でも行ってみよかな」

 ここでウロウロしてても暇だしね。

 山の方に行けばいわゆる中央公園と呼ばれている大きい公園がある。

 町外れにあるのに中央とはこれいかに! って感じの事を昔は思ったりもしたけど、一応地図で見ると確かに市の真ん中にあったりする。ややこしい。


 まぁあんな大きな公園を町中に作っても、色々不便そうだけど……。

 アスレチックとかの遊具や、野球場、テニスコート、プールなどの各種スポーツ施設、合宿に使うような宿舎や広大な芝生、自由に使える多目的グラウンドもある。

 家から歩いていけない事もないから、暇なときはもっぱらそこで時間を潰している。

 公園はボーっとしてるだけでも何となく楽しいからね。いや、老人じゃないよ?





「自転車で行けばよかったかなぁ……」

 普段から自転車より徒歩で移動するから、今日も徒歩なわけなんだけど

「熱い…………」

 七月下旬に青空の下をトロトロと歩くのはとても辛いらしい……。

 ぐわぁぁ、髪の毛が蒸発するぅ。公園まで耐えられるかな。



 しばらく歩くと

「なんだ、あれ……」

 道路沿いのゴミ置場に通りかかったとき奇妙な物が見えた。

「えっと……」

 なんだか人のようなものが落ちているんだけど

「……人形だよね? そう、等身大ドールってやつかな。……♂だけど」

 流石にゴミ捨て場に人が捨てられてるわけないよね。

 僕はよくゴミ扱いされるけど。



 近寄ってよく見てみると

「まさか……本当に人間……?」

 とても精巧にできた人形かもしれないけど。

「動いてるよね?」

 かすかに胸のあたりが上下している。

「あの、もしもし、大丈夫ですか?」

 呼びかけてみるけど、起きない。



「あれ、もしかしてかなりやばい?」

 落ちつけ僕……落ち着いて中学校で習った人命救助を思い出すんだ。

 ええっと確か、こういう時はまず二次災害の危険を確認……

「なんかこの人、生ゴミ臭いな……」

 二次災害の危険性あり! こう……臭い的に?

 いや、単にゴミ捨て場にいたせいでゴミ臭くなっただけだと思うけど。

 出血とかはしていないみたいだ。



「よし、確かこのまま意識がない場合は……」

 気道と血液循環の働きを確保……

「って、循環のサインは出ているから、心肺蘇生とかはしなくていいのか……」

 ええい、とにかく意識を戻さないと。

 体を揺すってみようと肩に手を触れると

 (注:無暗に頭を揺らしたりしないでください)





「うわぁっ! 何これ……」

 僕の手が群青色の淡い光を放ち始めた。

「う……ぅー……」

 何かがそのゴミの人(←かなり失礼)に吸いとられるような感覚がして

「んぅ……」

 ゆっくりと目をあけるゴミの人。



「あれ……僕は確か力を失って倒れたはずじゃ……回復してる?」

 うん、確かに君の意識は回復したね。

「これは、もしかして君の力、か?」

 意味不明……な事を言っている。

「……おや、君はっ!」

 驚天動地……いきなり凄まじく驚いた顔になって

「あぁ、あれ? 何ともない、何ともないのかい?」

 支離滅裂……な事を言っている。



「あの御加減は大丈夫ですか? 主に頭とか」

 いろいろと危ないご様子なので僕がそう気遣うと

「あぁ、とにかく君のおかげで助かったよ」

 とりあえずは感謝してくれているようだ。

「うん……もう大丈夫。とにかく残念だけど君の事は後回しだ……今は一刻も早くあいつらを探さないと」

 服に着いた汚れをはらいながら



「ありがとう、お礼は今度必ずするよ絶対に。それじゃね、また今度! 絶対に行くからね、絶対に!」

 キザな笑みとなぜか花束と生ゴミのにおいを残して男の人は去って行った。

「…………なんだったんだ」

 すごい不思議な人に出会った……。

 ってあの人今度絶対お礼するって超しつこく言ってたけど、ホントに会いに来るのかな……。

 ファブ○ーズ用意しとかないと。



 それにしても、さっき僕の手が少し光ってるように見えたのは目の錯覚だったんだろうか。

 夏の強い日差しにやられて少しおかしくなったのかもしれないしね。

 あの人もきっと暑さにあてられて、頭おかしくなっちゃったんだろうなぁ。




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