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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第3章「勾陣の位と平和な一日」
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「合流……え、不審者!」

「えっと、替えの服って、リュウの部屋に行けばあるのかな」

 確か一番奥の部屋だよね。

「うん、ここだよね」

 ドアを開ける。


「うっ……」

 リュウの部屋は、意外と普通だった。

 いや、ほらリュウの事だから、薔薇と鏡が大量にある部屋を想像してたんだけど……。

 そりゃ確かに薔薇と鏡はあるけど、薔薇は普通に花瓶にさして窓際に置いてあるだけだし、鏡も普通に小さいのが一枚あるだけだ。

 でも……

「……孔弌、においきつい」

「だね……」

 見た目は綺麗な部屋だけど香水くさい……。


「まったく、リュウはそこまで生ゴミ臭い体臭気にしていたのか」

 だとしたら先日の僕の言動はひどく彼の誇りに傷をつけたかもしれない。猛省。

「とりあえずそこのクローゼットしか服の入ってそうなものはないよね」

 件のクローゼットの扉を開けると

「うわっ、なぁにこれ」

「……同じ服がたくさん」

「この部屋の主は余程この服が好きなのだな」


「とにかく、1セット持っていこう」

 服とズボンが1セットにしてあって、軽く7セットぐらいあったので、そのうちのひとつをとった。

「よし、それじゃ公園のほうに行こうか」

 テンちゃんとアルテと一緒に家を出る。





『リュウ? 公園のあたりまできたけど』

 石に念じる。

『前に君と天奈君が妖怪に襲われていたところがあっただろう? あそこまできてくれ』

 あぁ、あの人があんまりいない静かに過ごせる穴場か。

「えっとこの辺りだよね」

 軽く辺りを見渡す。うん、相変わらず誰もいないなここ。

「孔弌君、こっちこっち!」

 リュウの声がした。

 そっちに向かっていくと


「リュウ……? どうしたの、かな? えっと…………頭湧いてるの?」

 全裸のリュウ(大人の都合で立ち絵がありません)が林に身を潜めていた。

「もうそれ以上何も言わないでくれたまえ……」

 今にも泣きだしそうな声でリュウが言う。

「そんな、確かに今日は暑いけど……何もそこまで原始的な姿にならなくても」

 正直いろいろと目のやり場に困る。


 もしリュウが夏の暑さで頭をやられてしまったのならば、今すぐ研究所とかに頼んでリュウを瞬間凍結してもらわなければいけない。

 多分そのぐらい冷やすのが丁度いい。

 それから、もうひとつの可能性も……。

 リュウがスザクと二人行動しているうちに危ない感情に目覚めたのなら、彼の今後についてみんなで緊急会議を開く必要がある。


「ちがうんだ兄ちゃん、リュウは、リュウは僕の代わりに!」

 リュウに続くように林の方にいたスザクが駆け寄ってくる。

「一体何があったの?」

「その前に服を……」

 それもそうだ。こんな奴と向かい合って話せるわけがない……。

 とりあえずリュウに服を渡して、着替えてもらう。


「ふぅ、やはり紳士はこうでないとな……」

 林の奥から着替え終わったリュウが出てきた。大丈夫、さっきまでの姿もむしろ紳士的だったよ。

「さて、何から説明したものか」

「なんで裸だったの?」

「バッカヤロォォォォオオ」

 リュウが叫びながらどこかへ去って行った。


「兄ちゃん、僕が説明するよ」

 そっちのほうが話早そうだから助かるかな。

「あ、その前に勾陣の位、久し振りだね」

「あぁ、今はアルテという名前だ」

「そっか、僕はスザクっていう名前になったんだよ」

「って、まんまじゃないか孔弌!?」

 アルテから突っ込みが入る。

「だって……」

 その呼び方よかったんだもん、呼びやすくて。決してめんどくさかったわけじゃない。文句は僕じゃなくて作者へ。


「酷いよね。"ああああ"ばりの適当さが滲み出てるよ」

「失敬な。むしろデフォルトネームのまま決定をセレクトしたんだよ。公式ネームだよ」

 二次創作の時に通名として大活躍。

「……その場のノリで決められなくてよかったと心底安心している」

「実はアルテともう一つタワシって候補があったんだけど」

「なんだと!?」

「って、話脱線しすぎじゃないかな。そろそろ説明したいんだけど」





「それもそうだな。結局何があったんだ?」

 アルテが話すよう促すと、スザクが物凄くやるせない顔になって事の顛末を語り始める。

「うん、最初から話すとね……僕達はちゃんと打ち合わせ通りに六合が出たって言うこの公園にやってきたんだけど」

 意外と計画通りに行動してるんだね。僕はリュウの事だからどこかでサボるのかと。

「それで、この広い公園で、妖怪達の話を聞きながら六合を探してて、このあたりに行ったらしいから僕とリュウでこの辺まできたんだけど」

 そういえば隠れるのがうまい式神なんだよなぁ。


「六合がここにいて」

 あ、結局いたんだ。

「兄ちゃんたちがくるまでここに足止めしようと思って」

「思って?」

「近づいて交戦しようとしたら」

「どうなったの?」

「リュウの服が消えた」

 意味がわっかんなぁぁぁいっ! 誰か因果関係説明してっ!?


「多分それは六合の攻撃だ」

 アルテが話に入ってくる。

「仲間だったお前たちは使われることがなかったから知らないかもしれないな。六合には武装解除攻撃があるんだ」

「武装解除?」

「あぁ、要するに対象が身につけているものをすべて取り払うってことだ。もっとも神装具のように精神力が元になっているような物は対象外だから、相手が余程強力な武具使いなどではない限りあまり強力な攻撃とは言えないが」

「あぁなるほど。それで服が……」

 吹き飛んだってわけか。


「だが完全に消滅するわけじゃない。二時間ほどすれば持ち主のもとに戻ってくる。無機物を未来に飛ばすというか、時間差を生じさせるというか……まぁそんな感じだ」

 ん~、よくわかんないけど、近づくと一時的に服がはじけ飛ぶってことか。

「うわぁ、天から僕の服が落ちてきた! 戻ってきたぞ。わははぁっ! 無敵装備じゃー!」

 リュウがはしゃぎながらこっちに走ってきた。

 何なのあいつ?


「8着しかないから、1つでも減ると大変なんだよ」

 全然大変そうに見えないけど……むしろ替えがありすぎると思う。

「とにかく一度戻ろうか。恐らく彼女はここから離脱しただろうし、これ以上探し回っていても無駄だろう」

 うわっ、裸でアタフタしてたくせにすごく落ち着いて語りやがるぜこいつ。


「まぁあれだよ、逃がしてしまったのは非常に申し訳ないと思ってる。ただそれだけだ!」

 家に着いてもリュウの謝罪(上から)は続いた。

「君達のほうはうまくいったみたいだね」

「うん、大変だったけどアルテいい人だったしね」

 言葉では言えないけど、何となくいい人だっていうのは伝わってくる。

「私は人ではないのだがな」

「そういう細かい事はここでは置いておこう」

「そうだな、お前がそう言うのなら従おう。何せ私はお前の式神だからな」

 クスッと笑いながら答える。


「しかし、本当に二人だけで勾陣の位を倒すとは……ちっ」

 リュウが今さらっと何か言ったんですけど。しかも舌うちしたよね?

「確かに……式神の中でも要の1人だった勾陣の位を兄ちゃんと天奈だけでやっつけるなんて」

「ふふっ、それほどに孔弌達は強かったからな。何より私もお前が気に入った」

 そういって正面から背中に手をまわして抱きしめてくる。

「え、ちょっと」


「うぅ……アルテェ」

 テンちゃんが唸りながらこっちを見ている。

「ははっ、孔弌は我々全員のマスターではないか、天奈お前も一緒に入ればいい」

「うん」

 バフと抱きついてくるテンちゃん。すりすりと顔を摺り寄せて……って

「モテモテじゃないか孔弌君」

「流石兄ちゃんだ」

 いや、あのね……。僕は別に変なフラグを立てた覚えはないよ。




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