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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第2章「朱雀の位とお助け猫」
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「猫又(最強)」

 というわけで外です。

「あー、夜なのに暑いなぁ。流石日本の夏だね」

 リュウの言うとおり、外はこう、変に生温い感じがした。とりあえずリュウ、暑いなら脱げよ。

 みんなで街をランニングして目的地へと向かう。

「ほら、遅いぞ、もっと急ぐんだ孔弌君」

 またばてられると困るのでリュウには僕の自転車を貸した。



「兄ちゃん、そこゴミが落ちてるからつまずかないようにね」

「うん、ありがと」

 スザクが指摘した場所にはなぜか空き缶が5個ほど設置してあった。誰かの罠?

「さて、連絡があったのはこの辺りだが」

 河川敷のあたりでウロウロしてると



「あ、リュウさんリュウさんこっちこっち」

 声のした方を見ると女の人が二人いた。リュウの事を呼んでいる方の女の人はそのままこっちに小走りで寄ってくる。

「やぁセイナ君。して問題の妖怪は?」

「あそこです。あの川の上を飛んでるあの妖怪です」

 セイナと呼ばれていた女の人が向こうの方を指差す。確かに明らかに化け物っぽい何かが空中を舞ってる。



「うん……確かにあれはこの町の妖怪じゃないね……力も……君達にはちょっと厳しいか」

 紙くず同然の戦力であるリュウが冷静に現状を分析する。

「リュウ、この人は?」

「ん? この辺りを散歩していた川姫という妖怪だ。おっと、姫って名前がついてるけど、別にどこかの王国の姫ってわけじゃないからね」

「いや、それぐらい何となくわかってたよ……」

 妖怪って時点で。



「よし、向こうが気付かないうちに一斉攻撃だ! いけぇ、孔弌君、天奈君、スザク君! 君に決めたぁっ!」

 基本見てるだけのリュウが偉そうに命令を出す。本来その役割は僕のはずじゃ?

「あと、その戦法って神としてどうなの?」

 一体を全員で叩きのめす……。

「より確実に市民を守るための戦術だ」

 確かにそうだけどさ。



「よし、癪だけどとにかく行くよテンちゃん、スザク」

「……ん」

「よし!」

 僕の号令の下二人が水と炎を放つ。



「孔弌兄ちゃん、僕の力を使ってみてよ!」

 左手の橙色の部分だけが輝き始める。

「なんかよくわからないけど、いけぇ!」

 スザクの光線と同じような光が敵めがけて飛んで行った。

 そしてけたたましい爆音が辺りに響く。夜だから余計に響く。近所迷惑にならないかなぁ。

 三人の一斉攻撃を受けて川の上を飛んでいた妖怪が爆炎に包まれる。



「ん~、あの妖怪、どうもただの知能が低い妖怪ってわけじゃないね。どういうことだ」

 リュウが神妙な顔で何やら言ってた。

 そして煙が晴れて

「無傷……?」

 いや、流石に無傷ではなかった。

 ダメージは結構通っていたが、撃墜まではいたってないみたいだ。



「やっぱり神クラスの妖怪が二体もそろっていて、おまけに一流討魔師まで揃うとすごいなぁ。でも、相手も一筋縄じゃいかないみたいだ……あれは、どうも何かおかしいね」

 何もしないリュウが他人事のように言っている。

 くそっ、神様なら働けよ。

 あ、いや神様だから働かないのか? 納得いかないなぁ……。



 ――ふむ、早速苦戦しておるようじゃの。

 鈴の音のように涼しくも美しい声がした。

 ――まったく、同じような状況が二か月ほど前にもあった所じゃというのに。

 その凛とした声のすぐ後に突然大きな音が、それはもうとてもとても大きな音がしたという(昔話風に誇張)。



 冗談はさて置きとんでもない音量で耳鳴りが酷い。しかも鋭い光の帯のようなものが辺りを満たしてる。

 一貫したレーザーのようなものがあるかと思えば、カーテンのようなものからユラユラ揺れる光、まるで刀みたいな光まであらゆる光が飛び交っている。

 何が起こっているのかわからない……。こんな突拍子もなく、凄まじい光景を見せられてもどうすればいいのやら。

 それでもただ、目の前ですごい破壊が行われているのは理解できる……。

 あとうるさい。最近爆発音とかそういうバカでかい音ばっかり聞いてるような気がする。



 そうこうしてるうちに光の帯は徐々に消えていき、見ると化け物は消滅していた。

「ふぅ、びょうのがみほたる、参上! どうじゃきまっておるか?」

 声のした方を見ると闇色の髪と髪色と同じフリフリっぽい和服を着た猫耳ロリっ子が立っていた。属性が飽和してるよ。

 短い刀を持っている所を見るに、さっきの攻撃はこの子が放ったのか。ぅゎょぅι ゙ょっょぃ。

「三十二点。演出に凝り過ぎだね」

 リュウが笑いながら答える。意外と採点辛いな。

「とにかく、久しぶりだね蛍君」



 あぁそうか、さてはこの人はリュウが呼んだ助っ人の一人だな。

「うむ、しばし遅れたがこれよりお主たちの力となろう。安心するがよい」

 蛍と呼ばれた少女は上機嫌に目を細めながら笑っている。

 この人が、この小さな女の子が今のすごい攻撃を繰り出したのか……。



 見た目はテンちゃんと同じくらいの小さな女の子なのに……一体何者なんだ。

 いや、でもまぁこの耳からして既にただ者ではないって感じだな。

 いかにも俺様は獣だっぜ! って感じの耳が頭についてるし。ものっすごいモサモサしてる。あとで触らせてもらおう。

 それから尻尾もあるし。しかも何故か沢山……。とりあえずあの揺れ具合は作り物じゃないみたいだ。

 多分……というか確実に妖怪なんだろうなぁ。



「しかし、消滅させてもよかったのかい?」

 リュウが問いかける。

「問題あるまい。恐らくさきの妖怪は最近問題になってきておる力を増した低能妖怪じゃ。捕まえたところで尋問にもならぬし、あの力を放っておくわけにもいかぬからの」

「ふむ。最近各地に出現しているやけに強い妖怪……か。あれがそうだったのか」

 なんか納得してるリュウ。

「しかし、直接関与してないにしてもあのクラスの妖怪がこの辺までウロウロしているとはの……」

 こっちも何か深く考え込んでいるみたいなんですけど。

 くそっ、すっかり蚊帳の外になった僕たち三人はどうすればいいんだ……。



「孔弌ぃ……」

 ていうかさっきからテンちゃんが腕からませてくるんだけど。闇にまぎれて、さりげなく! そんなに怖かったのかなぁ……ってわけでもないか、この感じは……。

「おっと、そういえば紹介しないとな。孔弌君、こちらはすごい妖怪のゆいいつしゅようかいびょうのがみほたる君だ」

 ……どこからが名前でどこまでが名前なんだ!?



木春このはるほたるじゃ。蛍でよい。以後よろしくのぅ」

「あ、僕は阿保孔弌。それからこっちの二人が僕の式神の天奈とスザクです」

「ん……? んん?」

 蛍さんが訝しげな顔になり。

「どこかで見たことがあると思ったら天后の位と朱雀の位ではないか……。一体どうなっておるのじゃ?」

 蛍さんが借りた物をすぐに返してくれるディオでもみたような表情でリュウの方に視線を送る。

「あぁ、それも込みでとりあえず家に帰って話をしようか」





「と、いうわけなんだ」

 家に帰って早速今までの経緯を述べる。かくかくしかじかというやつだ。

「しかし……まさか静哉以外に人の身でこれほどの器をもった者がおったとはのぅ」

 信じられないとでも言うようにそう言う。

「まさかあの十二式神を調伏するとは……恐ろしい使い魔使役の才能じゃ」

 こんなすごそうな人まで驚くってことは、本当に僕の持ってる力ってすごいのかな。



「ふむ、話は大体わかった。それならば、わしは明日からはお主たちとは別行動を取ろう」

 別行動って、話全然わかってないよね!? 助っ人じゃないのっ!?

「基本的に町に出る悪妖どもはわしが退治しよう。お主たちは式神のほうに集中してくれ」

 あぁ、確かに式神も妖怪も僕たちで相手してたら大変だしね。役割分担は大切かも。

「もちろん、強大な式神……騰蛇,勾陣,貴人,青龍などが出た時にはわしも力を貸す」

 つまりその四体は僕たちだけじゃ手に負えない可能性があるわけだね。



「うむ。見たところ今のお主たちでは五分の戦いになるかどうかという所。ただ、それ以外の式神なら今のお主たちでも同等以上の戦いができると思う」

 ん~、まぁ僕なんて戦闘経験ゼロのひよっこだからなぁ。

「この式神達と戦闘になる時点で人の身としては十分化け物クラスなんだけどね」

 リュウがけらけらと笑う。十二式神ってそんなにすごいのか……。

「そうじゃな。特にお主の場合は妖怪退治よりも式神の捕縛のほうが向いていそうじゃしの。わしが勝ってもお主のように容易く調伏はできないじゃろうし、何より式神達は自分より強いものに従うから、お主らだけの力を見せつけたほうが何かと有利に事が進むじゃろう。じゃが、無茶はするな。わしも手が空いておる時は手伝うからの」

 あぁ何て頼もしい人なんだ……。この人がこの町の神になればいいのに。



「それは無理だよ、孔弌君。蛍君は既にある人間の式神……使い魔なんだよ?」

「え!?」

 ということは、こんなすごそうな人を使役している人がいるのか……。

 正直、テンちゃん達が言う力の大きさとかはわからない。

 それでも今の僕にはこの目の前にいる少女がどれほどの存在かは何となくわかる。

 それこそ、僕から見たら神だ。



「うむ、そうじゃ」

「それに、その人はもう一人使い魔を連れててね、これがまたべらぼうに……いやブラボーに強いんだよ。多分十二式神全員が束になってかかってもその使い魔には勝てないだろうね」

 おいおい……そんなのまで使役してるって……それ人間?

「人間じゃな……恐らく霊格は大神より上じゃが」

 よくわからないけど、それって人間じゃないんじゃ……。

 ていうか、その人がこの町に来てぱぱぱっと式神捜したほうが早いんじゃ……。



「ま、話を戻すとじゃな……とにかくお主らは式神の捜索に集中してくれというわけじゃ」

 蛍さんが話の結論をまとめる。そういえば凄まじく脱線してたな。

「それじゃ、空いておる部屋を勝手に使わせてもらうが、よいか?」

「あ、うん」

 どうぞどうぞ、いくらでも使ってよ。



「しかし大きな屋敷じゃのう。200年ほど前のわしの家よりは小さいが、現在のよりは大きいかの」

 そんな事を呟きながら蛍さんは廊下を歩いて行った。

 蛍さんの実家、土地でも売り払ったのかな。

 最近、独身寮とか運動場の土地を売る企業が結構あるからなぁ(世知辛い)

「よし、これで明日からは式神探しに専念できるね」

 リュウもそういって部屋へと向かっていった。





「じゃ、僕たちももう部屋に戻って休もうか」

 僕とテンちゃんとスザクの部屋は二階なので僕たちは階段のほうへと向かった。

 ちなみにスザクは僕の部屋の二つ隣を自分の部屋にした。

 まぁ要するにテンちゃんの部屋の隣だ。


「それじゃおやすみ」

「うん、また明日兄ちゃん」

「……おやすみなさい」

 と挨拶して自分の部屋に入る。

 なんだか今日はすごく寝つきよさそうだから、すぐに眠れそうだなぁ。




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