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キズナの鬼  作者: 孔雀(弱)
第1章「天后の位と近所一のバカ」
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「孤独の日々」

コードの消し忘れなどあったらすみません。

背景・キャラ描写が薄いです。

「お前は……またこんな点数とりやがって」

 この前やった小テストを先生から受け取る。

「お前はschoolも読めんのか……? なんだごめんなさいって……問題がわからないことを謝っているのか?」

 この人は限りなく体育教師に近いノリの僕の担任だ。担当は英語。

「違うよ先生、ソーリーと勘違いしてただけだよ。別に問題がわからなかったわけじゃないよ」



「余計悪いわっ! ……中学からやりなおせ」

 できるなら僕もそうしたいよ。

 クラスメイト達はこらえきれず、とうとうクラスに爆笑の渦が発生。

 あぁ、普段はちょっとした微笑みすらしない我がクラス1のポーカフェイスである山本さんまで僕を見て笑っている。今、僕は1つの偉業を成し遂げた……。

「我が人生に一片の悔いなし……」

「早く席に戻れ」

 そうでした。

 またクラスが笑いに包まれる。



 今はロングホームルームの時間。

 略してLHR! 一時間丸々を担任との雑談やレクリエーションで過ごす大人気授業だ(授業嫌いな生徒の間では)

 今は明日から夏休みが始まるということで配布物を配ったり、伝達事項を述べたりしている。

 流石に小学生みたいに夏休みの心得を配布したりはしないけど。



孔弌(こういち)だけじゃなくて他の奴もちゃんと勉強しろよ。小テストだからって適当な気持ちで受けてるんじゃないだろうな? 英語やれよ英語。夏休みは英語8割、他2割の割合で勉強しろ」

 先生、英語プッシュしすぎだよ……。

「全くお前らのせいで俺がいつも職員会議で苛められるんだからな……」

「先生、それはどういうこと?」

「最近一年生の英語の成績が悪いとか言われて苛められてるんだ。だから俺のために英語を重点的に勉強してくれ!」

 うわぁ、英語に対する勉強意欲が元から低いのに更に低くなったよ。



「次は、君たちお楽しみの成績表を配るぞ」

 先生のその言葉が発せられた瞬間、クラスが活気と緊張という相反する2つの空気に包まれた。天国と地獄、ふたつの可能性をはらんだドキドキの時間がやってきた。

 確かに僕にとっても成績はとても重要なモノだ。さて、今回は学年順位どこまで上がってるのかワクワクしてきたよ。



阿保(あお)孔弌(こういち)

 早速僕の名前が呼ばれた。まぁ出席番号1番だから当たり前だけど。

 とことこと前まで歩いて行き、先生から成績の書かれた紙っぺらを受け取る。

「えっと、順位順位」

 学年順位の書かれているところを見る。



「前より上がってたか?」

 先生が訪ねてくる。ちなみに前というのは中間試験の順位の事。

「いや、変わってなかった……」

 成績も学年順位も前回とほぼ同じ……。低下していくよりはマシだけど、変わらないのはちょっとパッとしないよな。



「あ、そういえば先生」

「どうした?」

 ふと気付いたことを先生に言ってみる。

「僕の順位約分すると1になるよ、すごくない? 偶然かなぁ、これ」

「そうか……よかったな……」

 先生の悲しそうな目が向けられる。



「ま、流石"アホ"孔弌だ! この調子ならこの国一番のバカにもなれるぞ」

 クラスのお調子者筆頭である川田君がそう言った瞬間、またしてもクラスの温度が上がった。

「失敬な……せめて近所一ぐらいにしろぉ!」

 クラス中から、いやそれはないだろ的視線が集まってくる。

「くっ、僕はこう見えてもやればできる子なんだぞ」

 そう、本気を出せばもっといい点がとれる……まだ本気は早い……。



 そう、僕の名前は阿保孔弌。

 周囲からは不本意ながらこの学校一(←譲歩した)のアホorバカだと思われているらしい。

 ていうか、阿保なんていかにもいじめられそうな苗字のせいだろ。僕がアホアホ言われるのは。

 実際は、そこまで頭が悪いわけじゃないよ、うん。人並?

 全く、みんな僕の本気見たら多分驚いて死んじゃうぜ?



「たー、よくいうぜ、今はやることすべてがダメダメでいつもドベのくせに。[l]見てみたいもんだぜ、その本気を」

 となりの席から笑いながら話しかけてくる。

「草太だって、成績はそんなによくないでしょ」

 隣のこいつは、比較的昔からの付き合いでこのクラスでは一番よく話す奴だ。



「俺はサッカーがあるからな、ある程度勉強はできなくてもOKよ」

「そういえば草太は期待の1年生エースだとか何とかですごくみんなに期待されてるんだったね」

 小さい頃からやってるスポーツがあるってのは羨ましいなぁ。

 かくいう僕も中学の時なんかは一応運動部に所属していたけど、成績はあんまり芳しくなかった。

 スポーツテストとかの結果を見る限り基礎体力とかは悪くないと思うんだけどなぁ。



 ちなみに進学してからは帰宅部が許されているので部活には参加してない。

「夏休みといっても、ほとんど部活でつぶれるから結局休める日は日曜日しかないんだけどなぁ」

「それでも好きな事を一日中できるのは楽しいでしょ?」

「そうだな、やっぱここに座って話聞いてるよりずっと楽しいぜ」

 草太はハリのある夏休みになるんだろうなぁ。



「お前もそんなに周囲の評価が不服なら、とっとと本気とやらを出せばいいだろ? その気があれば頂点なんて簡単に狙えるだろうに」

 簡単に言っちゃって……。

 自分だって小さい頃から誰よりも努力してきてようやく手に入れたエースの座が、そんなに簡単なものじゃないってわかってるだろうに。

 草太の言葉が僕に何とも言えない感情を抱かせる。

 はぁ、それにしても本気かぁ。





 こうして一学期最後の学校が終わり、晴れて下校タイム。多くの学生は、一年の中でトップ5ぐらいに入る喜びに浸ると思う

「はぁ……僕は夏休みどうしようかなぁ……」

 なんてことを帰りの電車で考えてみるんだけど……目に入ってくるのは電車の中の変な広告だけ。

 僕は夏休みが嫌いだ。

 長期休暇というものは、どうにもこう孤独感を強く感じるから……。

 夏休みだけ部活動とかダメなのかなぁ。短期バイト感覚で。





 駅を3つ越えて、少し歩いたところで自分の家が見えてくる。

 町はずれの一軒家。改めて見てもやっぱり広い敷地。[l]周囲から浮いたこのちょっと大きな建物が僕の家だ。

 隣の家が離れすぎてるから、そもそもお隣さんがどういう人なのかもわからないっていうね。

 門をくぐり玄関に向かう。





「ただいま……」

 意味のない音を口から出す。いつもの事だけど、おかえりなんて言葉は返ってこない。

 うちに両親はいない。それどころか家族は誰もいない。[l]あるのは両親が残してくれたこの家と財産だけ。親戚もいない。

 物心がついた時には既に両親は既に亡くなっていたから、ずっと一人でここに住んでいる。

 学校に行けば、たとえ落ちこぼれと罵られようと皆が僕を囲んでくれる。

 だから僕は学校が大好きだ。





 広すぎる食堂でお湯を沸かし、買い置きのカップラーメンにお湯を注いで自分の部屋に持っていく。

 あ、自分の部屋って言い方は変か。

 まぁとにかく僕が主に使用している部屋に持っていく。

 食べながら、今日の午後は何をしようか考えてみる。



「はぁ……」

 特に明確な目的地はないけど、散歩でもしてみようかなぁ。

 家にいても寂しくなるだけだしね。

「今頃草太達は部活かなぁ」

 こんなことなら、ダメダメだけど部活続けるんだった。

 活躍できる種目なんてないけど、それでもやっぱりこういう休みは寂しくてかなり気持ちが滅入る。

 とりあえず今日の午後は家の外に出てみようか。



 ――キュッキュッ

 ぶら下げているペンダントを擦る。

 ペンダントって言っても、どっちかっていうとラリエットに近いんだけどね。

 ちなみに寂しい時はこのペンダントについてる赤い珠を擦るのが僕の癖になっているらしい。

 らしいっていっても、自分でもかなり自覚してるんだけどね。

 あれ以来あんまりしなくなったんだけど、こう長い休みが来るとつい無意識にね。

 さて、あてもなくブラブラしてみるか。




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