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木高空来の推理

 目覚まし時計に起こされて、目をこする。

 えーと、今は……七時か。

 寝相が悪いわけではないのに、私はベッドの端で寝ていた。

 どうして……ああ、そうよ。理乃と寝てたから……え?

 隣には誰もいない。

「理乃っ!?」

 部屋中を見回すが、いない。

「理乃ちゃん! 何所にいるの!?」

 物陰を覗いていくが、何所にもいない。

「木高のところに帰ったのかしら……」

 部屋から出て、木高を訪ねる。ノックをすると、少し間をおいて木高が出てきた。

「木高さん、理乃ちゃん、そっちで寝てますか?」

「いえ」

 血の気が引くのが分かった。

 木高を押し退け、木高の部屋に入る。理乃の姿は、ない。

 ふらっとよろめいたのを、木高が支えてくれた。

「……木高さん」

「はい」

「理乃ちゃんが……消えてしまいました……」

「はい」

 淡々な口調に苛立ちを覚える。

「何よ、その態度……理乃ちゃんが、妹が行方不明なのよ?」

「分かっています」

「心配じゃないの?」

「はい」

「……………」

 可哀想な理乃。こんな薄情な兄を持って。私が貴方の姉だったら、もっともっと、優しく接してあげるのに。

「……理乃ちゃんを、捜してきます」

 離れようとする私を、木高が肩を掴んで引き止める。

「捜す必要はありません」

「――っ、何でよ!? 大切な妹でしょう!?」

「理乃は私の妹です」

「じゃあ、何で」

「リビングに皆を集めてください」

 木高は急に話を変えた。

「貴方を襲った犯人を、特定します」


 リビングには、この家にいる全員が揃っていた。否、理乃を除いた全員が。その事に、誰も触れない。

 木高がテレビの前に立ち、テレビを三方から囲むように配置されているソファに私達は座っている。

 木高は誰にも目を向けず、真っ直ぐな視線を宙に浮かばせて、口を開いた。

「恵一さんと菊池さんがおっしゃったとおり、私は恭子さんのゼミの先輩ではありません。恭子さんに雇われた者です」

 場がざわつく。

「恭子さんは近日、三度も命を狙われました。このままでは近いうちに殺されてしまうかもしれないので、私に殺人未遂の犯人の特定を依頼されました」

「じゃあ、君は探偵なのか?」

 父の問い掛けに、「そうとも呼ばれます」と木高は答える。

「どうして」

 次に口を開いたのは兄だ。

「どうして俺に相談してくれなかったんだ、恭子」

 兄は悲しげな顔を私に向けている。

「兄さんは……」

 告白するのには躊躇いがあったが、直に明らかになってしまうだろうと思い、「兄さんは、頼り甲斐がなかった」

 兄は絶句したようだった。胸が痛い。

 木高が話を再開する。

「恭子さんは三度、命を狙われました。一度目は暴走バイクに突っ込まれそうになり、二度目は牛乳に毒を入れられ、三度目はボウガンで狙われました。一度目は事件性がないように思えますが、恭子さんの意向で第一の事件としました。二度目は確実に恭子さんを狙っています。恭子さんが気紛れに、飼い猫に牛乳を与えなければ、恭子さんは死んでいました。三度目のボウガンと狙うという事も、明らかに命を狙っています」

 聞いていて、わが身の事ながらぞくりと毛が逆立つ。

「ボウガンでも襲われていたのか……」

 兄の呟きが聞こえた。

 木高は続ける。

「私も恭子さんも、その犯人はこの中にいると思います」

 場に戦慄が走る。各々が過去を見合わせるのを、私はじっと見ていた。

「根拠としては、まずは第二の事件の牛乳。スーパーで買ってきた紙パックのものなので、外部の人間が毒を混入したとは考えにくいです。また、第三の事件で使われたボウガンは確かに京一さんの所有していたもので、それは倉庫に保管されていました。加えて、そこの鍵は内部の人間しか手に入れられません」

「どうして矢がお父――京一さんのだって分かるんですか?」

 菊池が尋ねた。

「ボウガンの矢には、恭子さんと恵一さんが幼い頃に付けた記があったのです」

 兄は覚えが無いらしく、首を傾げる。

兄さんの莫迦。

「以上より、私はここにいる京一さん、結奈さん、恵一さん、菊池さんに的を絞って、調査をしました」

「調査とは何なんだ?」

 兄が苛立たしげに訊く。

「この家の人間関係についてです」

 チラリ、チラリと視線が交差する。四人から私にも視線が注がれた。

「まずは家長の京一さん」

 父に視線が注がれる。父は少々照れくさそうだ。

「京一さんは結奈さんの事を愛しています。それは昨夜話していて、分かりました。しかし、新妻に愛情を注ぐあまり、実子への注意が乏しいです。恵一さんはしっかりしていなくて困ると言い、恭子さんについては最後に一度、様子と私との関係を尋ねただけでした。また、菊池さんへはいい印象を抱いていないようでした」

 菊池はショックがあったようで、視線を床に落とす。兄は何も反応せず、結奈は想いに応えるように、隣に座る父の腕を掴んだ。父は……嬉しそうで……。

私は、ただそれに苛立った。

「続いて、奥様である結奈さん」

 結奈は艶めかしく居住まいを正す。

気に食わない。

「結奈さんは、この家の誰も愛していません。最も気に入っているとすれば、恵一さんでしょう」

 父が急に立ち上がった。視線が結奈と兄とをうろうろする。

「……どうしてそんな冗談を言うんだね、木高君。さすがに趣味が悪い」

 言いながらも、木高の言葉を真に受けているようにしか見えない。

「冗談ではありません。結奈さんから直接聞いたのです」

「あんたっ!」

 結奈が立ち上がり、一瞬で我に返った。自分のしでかした間違いを察したのか、顔が蒼い。

「本当なのか? 結奈」

 結奈は黙ってしまう。瞳に怒りが宿り、それを無言で木高に向ける。白状をしたようなものだった。

 父は結奈から、名前が挙がった兄に目を移した。

「恵一、お前、義理とはいえ母親と、関係を持ったのか!?」

「お、おれ、俺は知らない!」

 兄は千切れんばかりに首を振る。

「そうよ、恵一さんとは何もないわ!」

 結奈の参戦は火に油を注いだだけだった。

「お前は黙ってろ! 私の事を愛していないんだろう!?」

「愛しているわよ!」

「では、さっきの態度は何だったんだ!?」

「それは……」

 結奈が言葉に詰まったところで、木高が口を開いた。

「続いて恵一さん。恵一さんはただ、恭子さんを愛しています」

「え――」

 シンと、場が静まり返った。

 兄さんが、私の事を、愛している。

「木高さん、それって、兄妹として、ですよね?」

 思った返事は、返ってこなかった。

「いいえ。恵一さんは、一人の女性として、恭子さんを愛しています」

 何も言えなくなって兄を見ると、兄は顔を真っ赤にして、無言でいた。

 やめて。そんな顔をしないで。そんな顔をしちゃ、木高の言ってる事を、まるで、肯定してるよう。

「兄さん……嘘でしょう? 嘘だと言って」

「恭子……そんな事、言わないでくれ」

 兄は、恵一は、苦しそうに笑った。

「ごめんな、恭子。兄さんは、本当に、お前の事が好きなんだ。愛しているんだ」

 兄は泣き笑いの表情をする。

 兄はいつでもこうだった。私が我が儘を言うと、困ったように泣き笑いの表情をする。私はその顔を見るのが苦手で、兄さんを泣かせたくなくて、いつも我が儘を取り下げる。すると、兄さんは笑ってくれるから。大好きな笑顔を見せてくれるから。

 だから、そんな顔をしないでよ。私も兄さんが大好きよ。けど、それ兄妹として。どうしてだろうね、兄さんの想いはどうしてか分からないけれど、嬉しい。けれど

「こんなのはおかしい!」

 その言葉を発したのは、菊池だった。菊池は兄の肩を掴み、揺さぶる。

「恵一、君は何を考えているんだ! 君等は実の兄妹なんだろう!? 君の行動は、恭子さんを困らせているに過ぎない!」

「うるさい!」

 兄は菊池をはねのけた。

「デカい態度をとるんじゃない。もうお前の脅しに屈さなくてもいいだ」

 今度は、兄が菊池の肩を掴んだ。

「妹に手を出すな」

 そういう兄は、いつもより素敵に見えた。

同時に、胸の高鳴りを感じたのは……気のせいかしら。

「最後に菊池さん。彼も恵一さんと同様に、恭子さんを愛しています」

 木高が言うが、誰も聞いちゃいなかったでしょう。

「では、犯人特定に移ります」

 木高の目線の位置が初めて変わった。それは私達の向こうを見ている。自然と、私達は目で追った。

 そこにあったのは、扉。

 キィッと開く扉。その先にいたのは――理乃だった。

 私達は悲鳴を上げずにいられなかった。

 泥で汚れた服、あらぬ方向に曲がった手足、血液で濡れた顔――といっても、鼻や目は潰れているし、皮が剥がれて肉が剥き出しになっていて、顔であっただろう、というのが正解に思える――、不自然に窪んだ頭部。

私は動けなかった。皆も、そう。信じられないような顔をして、理乃を見ている。やはり、顔は蒼ざめている。

「本日午前零時過ぎ」

 木高は話し出す。

「理乃はある人物の許へ行き、殺されました」

 殺された? 殺された――死んだ――じゃあ、目の前の理乃は?

「どういう事だ!」

 怒鳴ったのは父だった。恐怖を貼り付けた顔で、

「私は、確かに、そいつを殺した筈だ!」

 え?

 父に視線が集まる。

「父さん?」

 兄が放心したような顔で言う。

「父さん――一体、何を言っているんだ?」

 結奈がふらりとふらつき、ソファに収まった。

 父はうわ言のように「違う、私は確かに殺した。確かにこの手で殺し、ベランダから落とした。私は確かに」

「やめてよ……やめて……」

 そう言うのがやっとだった。

「どうして、そんな惨い事を」

 まだショックが軽いのだろう菊池が尋ねるが、父は答えない――というよりは、聞こえていない?

「理乃は」

 木高が言った。

「最初から生きていません」

 私は言葉が理解出来なかった。あまりに混乱して、聞き取れても、意味が読み取れない。

 理乃が口を歪めて――笑ったのかしら?――木高に駆け寄った。

「理乃は人間ではありません」

 木高はチラリと妹を見た。

「理乃はロボットです」

「ああ――」

 嘆息を漏らしたのは父だ。

「だから、殺しても動いているのか」

 父は安心したように笑ったのだった。

 父は落ち着きを取り戻した後でも、理乃を殺した事は否定しなかった。

 私達は何も尋ねる気力がなかったので、まだ精神が参っていない菊池が尋ねる。

「どうして木高の妹を殺したんですか?」

「言われたからだ」

 父は淡々としていた。

「恭子の命を狙ったのは、私だと。それで、激昂して、思わず」

 言葉に遅れて、意味が流れ込んでくる。

 嫌。言わないで。嫌よ――

「まさか、あんな年端の行かない娘に真実を突きつけられるとは」

 私は、そこで卒倒した。


 気付くと、私はベッドに寝ていた。傍らには、兄、木高、そして理乃。理乃は血だらけでもなければ、不自然な手足もしていない。

 あれは、夢――?

 理乃をじっと見つめる私に気付いたのか、兄が「理乃さんは、木高さんが修復したんだよ。見違えるように綺麗だろ?」

 理乃が笑う。

「きょーちゃん、私は大丈夫だよ! くー君が直してくれたから!」

「そう……よかった」

 それは本心だった。実の兄妹ではなかったようだけれど、木高は理乃を直した。つまり、愛情があるって事でしょう?

 兄が木高に目配せした。木高が私を見る。

「先程、京一さんが全てを自白しました。恭子さんを襲った暴走バイクは金で雇った不良少年だったそうです。牛乳パックにはインターネット経由で手に入れた毒物を混入して、心臓麻痺に見せかけようとしたそうです。ボウガンは、自分で撃ったそうです」

「どうして、父は私を殺そうとしたんでしょう?」

 自分でも驚くほど冷静だった。

「理由はいろいろありました。貴方が恵一さんを誑かしたから、亡くなった母親に依存して結奈さんを認めなかったから。しかし、それらの動機に至った根源が一番大きいものでしょう。貴方が京一さんの実子ではなかったから」

 言葉が詰まった。

 大きく息を吐き出し、尋ねる。

「私は、父さんの子ではなかったんですか……」

「亡くなった母親とその不倫相手との子だと」

「そう……」

 だから、父は母をよく思っていなかった。だから、結奈さんという若い女性に逃げた。

 ああ、可哀想な父さん。けれど、不思議と同情の気持ちはそんなに浮かんでこない。それは、私が実子ではないから?

 私は笑顔を作って、兄に言う。

「残念だったわね、兄さん。異父兄妹でも血は繋がってるわ」

 兄はポカンとしたが、すぐに笑い返してくれた。

「そうだな、実に残念だ」

 気になっている事を木高に尋ねる。

「木高さん、父はどうなるんでしょうか」

「貴方が事件として告発するならば、彼は罰せられるでしょう」

「そう。じゃあ、私が何も言わなければ、この事件はなかった事になるのね」

「それで、いいのか?」

 兄が尋ねてきた。

「ええ」

 もう、疲れた。これ以上この事件に関わると、自分が壊れてしまいそうな予感がした。知らなくてもいい事実がじゃんじゃん出てきて、私を破壊するの。

 この事件は、この事件に関係した事、全てを忘れてしまいたい。だから

「ねえ、兄さん。私はこの家で出るわ」

「そうか」

 兄はただ一言で答えた。兄には考えが伝わったらしい。

 父さんと、兄さんと、結奈と、菊池と、そして亡くなった母さんと決別する為に。私は一人になるべきなのよ。

「会社は俺が継ぐから、恭子は自由にすればいい」

 兄の顔は、今までで一番――この表現は大袈裟でなく――頼もしく見えた。

「ところで、木高さん、依頼料の事ですが」

「要りません」

 木高はいつもの淡々とした口調で言った。

「所長の一存です。恭子さんから料金を取らなくてもよいと。しかし、一つだけ条件が」

「何でしょう?」

「決して、理乃の事を口外しないでください」

 企業秘密、といったところかしら。

「それだけですか?」

「はい」

「分かりました、絶対誰にも言いません」

「ありがとうございます」

 木高は立ち上がる。理乃も続き、木高の手を握った。

「我々は、これで失礼します」

「あっ、玄関まで送っていきますよ」

 玄関まで、兄と見送りに行った。父達とはすれ違いもしなかった。

「じゃあね! きょーちゃん!」

 理乃は姿が見えなくなるまで手を振っていたが、木高は一度も振り返らなかった。

「あれでロボットなんだよな、あの女の子」

「信じられない?」

「そりゃあそうさ。あんなに感情豊かなロボットがいるとは思えない。けど、木高さんがあの子を修理するのを見たから、ロボットなんだろうな」

「まったく、おかしなものね。私は木高さんの方がロボットに思えるわ」

「俺もだよ」

 そこで、ふと事務所に出されていた看板を思い出した。

『霧原研究所』

 ロボットの研究をするところだったわけね。

「さあ、兄さん」

 私は兄を見た。

「荷造り、手伝ってくれる?」



   ***



 木高達が事務所に戻ると、ぶかぶかな白衣を着た少年がソファで寝そべっていた。

「あっ! たっ君!」

 理乃が少年に抱きつく。

「ああ、理乃。おかえり」

 少年は苦笑いをしながら起き上がり、理乃の額に口付けた。理乃の目がゆっくりと閉じ、動かなくなった。額への口付けは、理乃のスイッチだった。

 理乃をソファの傍らに置き、少年は木高へ歩み寄る。

「遅かったね、ソラキ」

『ソラキ』とは木高のファースト・ネームだ。『空来』と書く。また、理乃が『くー君』と呼んでいたのは『空』を音読みしたものだ。

「所長はまだアメリカに滞在していた予定ではなかったのですか」

「何を言っているんだい」

 少年が背伸びをして木高の頬に触る。

「大切な大切なソラキを見ず知らずの屋敷にやってしまっていたんだ。心配で堪らなくて、帰ってきてしまったよ」

 少年はクスリと笑う。

 少年は霧原工といった。中学生くらいの外見に反して、実際は十八歳で、ロボット工学の分野で博士号を取得している。いわゆる天才だ。

「依頼は無事解決しました」

 木高の言葉に霧原はうんざりしたような顔をし、「知ってるよ。全部聞いてた」

 霧原は耳に付けられたイヤホンを指差す。

 木高のシャツの襟に高性能の盗聴器が付けられていて、西園寺家での出来事は全て霧原に筒抜けだったのだ。また、木高の右耳にはピアス型のイヤホンが付けられていて、そこから霧原からの指示を聞いていた。

「さぁ、ソラキ、こっちへ」

 手を引いてソファに連れ、木高を座らせると、霧原は彼の胸に顔を埋めた。

「ああ、僕のソラキ。怪我はなかったかい?」

「私は何もありません。理乃が破壊されましたが、外見だけは修復しました」

「彼女の事は訊いてないよ」

 顔を上げた霧原の表情は、恋人に他の異性の話をされた乙女さながらだった。

 再び、木高の胸に顔を押し付ける。

「ソラキ、僕は疲れたよ。聞いておくれよ。あいつらと来たら、僕の言う事をさっぱり理解してくれないんだ。果てには『タクミは天才だから』って逃げるんだ。嫌になるよ。僕は天才なんかじゃない」

「所長は天才でなくとも、素晴らしい方です」

「ふふん」

 霧原は顔を上げ、嬉しそうに笑う。

「ソラキに言われるのなら、どんな罵倒でも嬉しいよ。ソラキの言葉なら、何でも」

 が、霧原は顔を曇らせた。

「ソラキ、あの結奈という女の部屋に入った時、何をされていたんだ?」

「結奈さんは私の手を彼女の胸に突っ込ませました」

 木高は事実を率直に報告した。

「ふぅん、色仕掛けってわけ。――ときめいた?」

「いえ」

「だよね」

 霧原は木高の胸を指でなぞる。

「ソラキには感情がないからね」

 そこがじれったくって燃えるんだけどね、と霧原は呟いた。

「ソラキ、疲れたろう? ゆっくり、休みなよ」

 ふわりと微笑み、霧原は木高の唇に口付けた。木高の瞳がゆっくり閉じる。

 木高空来も、理乃と同じく、機巧であったのだ。

 霧原は木高をぎゅっと抱き締め、目を閉じた。

「まったく、感情を持つロボットはたくさん作れたというのに、どうして僕は君に惹かれてしまうんだろうね。感情もない、表情もない、僕の言う事なら何でも聞く、ただのロボットなのに」

 ぶつぶつ文句を言っていた霧原も、次第に眠りに落ちていった。


 霧原研究所。

 ここに生きている人間は、霧原工所長、ただ一人である。


〈終〉

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