放っておく
新宮に誘われ訪れた墓場にて、肝試しでも行っているのか、複数人の男女が騒いでいる現場に遭遇した。場所が場所であるというのに飲めや歌えの大騒ぎ、挙句の果てには花火を打ち上げたりして気分が盛り上がった彼らに絡まれるのも面倒なので、遠巻きに様子を窺いながら、目的の場所である新宮の両親の墓へと足を進めた。
その帰り道、男女の姿は消えていて、辺りを見回してみれば、彼らが持ってきたのであろう懐中電灯や鞄などが残されているだけだった。何かトラブルでもあったのだろうか、それともただ単に忘れて帰ったのだろうかと考えていると新宮が「見てごらん」と手招いていた。
彼女の足元には大きな水溜りができており、よくよく見ればその中では小さな人間が溺れていて、皆一様にこちらへ助けを求めているようだったが、あいにく私には彼らの声が聞こえなかった。
「おや、雨だね」
見上げれば、曇った夜空からはぽつりぽつりと雨粒が落ちてきていた。小さな彼らが気にかかったが、傘も何も持ってきておらず濡れるのも嫌だったので、私と新宮は墓場から立ち去ることにした。放っておいていいのかい、と悪戯な笑みを浮かべる新宮であったが彼女もまた、小さな彼らを助ける気などないようだった。それもそのはず、雨さえ降ってしまえば元の通りに戻るのだ。多少身体は冷えるだろうが、仕方がない。彼らが墓場で騒いでいたのが悪いのだ。それに、私や新宮に何かできることがあるわけでもない。
強くなってきた雨の中を二人、駆けて行く。
明日もまた、雨が降るそうだ。




